2025年5月27日 東京
2025年5月16日、国連大学は、ストックホルム国際水研究所(SIWI)および在日スウェーデン大使館とともに、「水:気候変動対策と未来の社会のための実現要因」と題したシンポジウムを共催いたしました。このシンポジウムには、天皇陛下、スウェーデン王国カール16世グスタフ国王陛下のご臨席を賜り、学術会や政府、民間セクターの専門家が一堂に会しました。本イベントでは、気候変動への対応や持続可能な開発の推進における水の重要な役割が強調されるとともに、スウェーデンと日本の戦略的パートナーシップが再確認されました。
冒頭では、国連大学学長兼国連事務次長のチリツィ・マルワラ教授とSIWI所長のトマス・レーベルマルク博士がそれぞれ開会挨拶を行い、統合的な水管理の重要性に触れ、イベントの背景を紹介しました。マルワラ学長は、科学交流の促進にスウェーデンと日本が共にリーダーシップを発揮している点に着目し、「このシンポジウムは、両国と国連の変わらぬ絆、そして現代の複雑な課題に取り組む上で国際協力が不可欠な役割を担っていることを、力強く確認するものです」と述べました。
ヴィクトリア・リー駐日スウェーデン大使は、2024年12月の日・スウェーデン間の戦略的パートナーシップ協定の締結や、イノベーション、持続可能性、気候変動対策における価値観の共有に触れ、両国間の協力関係の深化を強調しました。リー大使は、長年にわたる科学分野での協力の伝統を振り返り、「日本とスウェーデンの両国において、水管理が科学研究の重要な焦点となってきたことは偶然ではありません」と述べました。
また水問題の専門家がそれぞれ以下のテーマで基調講演を行いました:
さらに、スウェーデンで最も影響力のある水学者の一人である故・マリン・ファルケンマーク 元SIWI教授の遺志を称え、「水の叡智」と題したビデオ上映では、彼女の生涯をかけた水研究への献身がもたらした深い影響について振り返りました。
続けて、国交省水管理・国土保全局・水資源部長 / 内閣官房水循環政策本部事務局長の斎藤博之氏は、気候変動への回復力と生物多様性の保全の両面で淡水の生態系が重要であることを認識し、国連決議で採択されたばかりの「世界湖沼の日(8月27日)」の制定を正式に発表しました。
その後、スウェーデンと日本の気候変動対策が取り上げられました。
スウェーデンのメーカー、アルファ・ラバル社のトム・エリクソン グローバルCEOは、同社がカーボン・ニュートラ ルをどのように取り入れ、水の持続可能性を製造プロセスに組み込んできたかを紹介しました。エリクソンCEOは、持続可能な産業慣行の商業的実現可能性と、イノベーションを推進するための大企業と新興企業の協力の重要性を強調しました。
サントリーホールディングスの瀬田玄通サステナビリティ経営推進本部長は、同社の水管理について説明し、企業の責任が事業運営にとどまらず、環境教育や生態系保全にまで及ぶ例として、水資源を保護するために森林生態系を保護する「ナチュラル・ウォーター・サンクチュアリ」プログラムや、水教育プログラム「水育(Mizuiku)」(全世界で25万人以上が参加)などの取り組みを紹介しました。
シンポジウムの中心となるパネルディスカッションでは、レーベルマルクSIWI所長がモデレーターを務め、パネリストとして、マリン・インゲマルソン博士、沖 大幹 教授、福士 謙介教授、トム・エリクソン氏、瀬田玄通氏、そして国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)のカーヴェ・マダーニ所長が登壇し、水をベースとした気候変動への解決策について活発な議論が行われました。議論のテーマとして、統合的アプローチ、水ガバナンス、持続可能性、社会正義の関連性、「バーチャルウォーター」と地域コミュニティの保護、産業の持続可能性のための政策の安定性、ビジネスモデルへのウォーター・スチュワードシップの組み込みなどが挙げられました。
レーベルマルク博士は、レジリエントで水の安全な未来のために、持続的な対話と国際協力が重要であることを再確認し、水の「国家や学術分野やアクターや世代間をつなぐもの」と表現しました。