国連大学の歴史は1969年、当時のウ・タント国連事務総長がその年の年次総会で、「真に国際的な性格を有し、国連憲章が定める平和と進歩のための諸目的に合致した国際連合大学の設立」を提案したことに始まりました。国連総会はこのような大学の実現可能性について専門調査を行うことを承認し、そのための専門家委員会を任命しました。
委員会は1972年9月に国連経済社会理事会に報告書を提出し、その年の12月に国連総会は国連大学の設立を認め、国際的な大学の設立が正式に認められたのです。その後、設立委員会が大学憲章と決議案を提出し、1973年12月に国連総会に採択されました。
国連大学は人類の生存、開発、福祉など、国連とその加盟国が関心を寄せる、緊急性の高い地球規模の諸問題の解決に取り組むため、共同研究、教育、能力育成、政策提言を通じて寄与しています。国連大学のあらゆる活動における包括的なテーマは「サステイナビリティ」であり、今日の諸問題への取り組みにおいても、将来を担う世代のニーズを危険にさらすことなく、現在の世代のニーズに応えようとしています。
国連大学は、国連機関であると同時に、ハイレベルの研究教育機関でもあるというユニークな性質を持つため、国連の役割と活動にふさわしい知識の進歩をはかり、その知識を適切な原則、政策、戦略、および行動計画の作成に適用することに直接貢献することができます。また国連大学憲章によってその知的独立性が保障されており、国連大学は客観的かつ誠実に貢献することが可能であるため、現在および将来の世界の主要な諸問題について、意思決定者、学者、そして自身の学生たちにも、柔軟で新鮮な視点を示すことができます。
国連大学の活動は、相互に関連し依存し合う5つの研究テーマに分けられます。①平和、安全保障、人権、②人間および社会・経済の開発とグッド・ガバナンス(正しい統治)、③グローバルヘルス、人口、持続可能な生活、④地球変動と持続可能な開発、⑤科学、技術、イノベーション、社会。
国連大学は、世界レベルの研究、政策調査、教育、および能力育成を行う機関として、持続可能な人類の生存、開発および福祉の問題に世界的なリーダーシップを発揮したいと願っています。国連大学はとくに(1)開発途上国および経済移行国やその国民に影響を与える問題に焦点を絞った先進的研究や教育のニーズの高まりと、(2)これらの国々の自立的な人材育成や社会開発能力の強化に対する支援の重要性に着目しています。
国連大学設立構想が発表されると日本政府は各国に先んじて大学本部の東京誘致を国連に呼びかけるとともに、大学基金への1億ドルの拠出、首都圏に 本部施設ならびに研究所・研修センター施設の提供の意向を表明しました。これは、国連と国連大学に対する日本政府・国民の強い支持を示すものでした。これを受けて、国連は国連大学本部の東京設置を決め、1975年9月、都内に暫定的本部施設を開設し、事業を行ってきました。現在の恒久本部施設は東京都のご厚意により提供(無償貸与)された土地に日本政府の予算で建設されたもので、1992年6月に完成しました。
国連大学は、各国の分担金を財源とする国連の通常予算の配分は受けておりません。各国の政府、財団、企業、個人などからの任意の拠出(寄付)が資金源です。拠出金には大学基金への拠出と、経常経費あるいは特定の活動費への拠出があります。
現在の国連大学の2カ年(2010-2011年)予算は1億8百万米ドルです。2010年には、21カ国の政府およびその他100以上の拠出者からの大学基金および経常経費への拠出は約3,690万米ドルに達しました。これらの直接的な拠出以外にも、国連大学はさまざまな間接的な支援も受けています。費用の共同負担や研究所の研究活動に直接支払われる活動費がそれにあたります。
国連大学の学生は、国連大学大学院課程プログラムに在籍する大学院生に加え、国連大学が提供する研修機会を通じて高等教育を受けている、あるいは国連大学スタッフと協力して活動することにより自身のスキルや知識を発展させている、大学院在籍中または博士課程修了後の学者や研究者、市民団体関係者、政策立案者、およびその他の専門家により構成されています。
国連大学の教授陣は、国連大学システムの学術職員や研究職員(およびより広範な国際ネットワークに属し、大学と協同関係にある学者や専門家)です。
国連大学は従来、研究機関やシンクタンクとしての役割を中心に活動を行ってきましたが、2009年の国連総会において、大学院課程プログラムの導入に向けた国連大学の取り組みが承認され、国連大学独自の修士号および博士号の授与が可能となりました。2010年、国連大学はこれらの学位の認定プロセスを定式化し、最初の国連大学修士課程プログラムを東京で発足しました(2010年秋)。提携大学との「ダブル・ディグリー(二重学位)」または「ジョイント・ディグリー(共同学位)」のいずれかが授与される博士課程プログラムおよび大学院課程プログラムについては、定式化の作業が現在進められています。
国連大学は独自の出版部門をもち、学術書を出版しています。これとは別に国連大学ネットワーク内の研究所やプログラムで進行中の研究報告書、ポリシー、リサーチおよびテクニカル・ブリーフ、ディスカッションやワーキングペーパーが他の出版社を通じて出版されております。
このウェブサイトやCD-ROMでご覧いただける国連大学の学術出版物やその他の印刷物を順次増やしていく予定です。
世界各地で展開される国連大学の研究プロジェクトに参加する研究者は通常、各自の所属大学や研究機関に在籍のままプロジェクトに参加します。2010年、国連大学スタッフの出身国は約75カ国にも及びます。
国連大学は世界中で会議やセミナー、諮問委員会などを開いて、その時点での課題にすみやかに対応しています。会議や出版物で取り上げるのは、紛争解決、平和とガバナンス、開発経済、科学技術、環境など、重要な課題ばかりです。
研究活動の成果やそこから得られた知見は、国連が開催する各種会議の場で参加する各国の政策立案者やオピニオンリーダーに伝えるようにしています。 主なものとして、国連環境開発会議(リオデジャネイロ、1992年)、世界社会開発サミット(コペンハーゲン、1995年)、第4回世界女性会議(北京、1995年)、高等教育世界会議(パリ、1998年)、一連の気候変動枠組条約、生物多様性条約の締約国会議などがあります。