2025年5月2日 ヘルシンキ
国連経済社会局(UN DESA)が、国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)とともに『世界社会情勢報告 2025』を発表しました。
「世界社会情勢報告」はUN DESA(国連経済社会局)が毎年発行する社会開発に関する報告書であり、世界的な関心を集める社会的潮流と主要な開発課題の相互関係を分析するものです。2025年版では、UNU-WIDERが初めて共同執筆者として参加しました。
【概要】
本報告書は、世界各地で深刻化する不確実性、格差、不信感の広がりを明らかにしています。保健・教育・テクノロジー分野の進歩にもかかわらず、世界の約40%の人々が「50年前より生活が悪化した」と感じており、これは社会の根本的な結束の崩壊を示しています。
特に信頼の欠如が顕著で、政府への信頼は世界の半数以上で失われ、他者への信頼も30%未満にとどまってます。この「信頼の赤字」は世代を追うごとに深まり、社会的分断と対立を深刻化させています。さらに、世界人口の約60%が失業に対する不安を感じており、65%が格差の拡大する国で暮らしています。こうした不平等は、しばしば人種・カースト・出自・家庭環境など、個人の力では変えられない要因に根ざしています。これらに加え、気候変動や武力紛争といった複合的な危機が、社会的進歩の成果を危機にさらしています。
報告書の発表イベントで、UNU-WIDER副所長であり報告書共著者のパトリシア・ジュスティノ氏は次のように述べています。
「これらの互いに重なり合って広がる『不確実性』や『格差』、『不信感』は、単なる数字上の話ではありません。社会に深い負担を与え、人と人とのつながりや地域のまとまりを弱めています。政府や他者への信頼が薄まることで、人々の協力は難しくなり、市民が社会に関わる意欲も低下し、社会の分断は広がっていくのです。こうした事態は、私たちの身近なところで日々起こっています。『自分たち vs 他者」という意識が強まり、偽情報の拡散や極端な政治的見解への支持が増えているのです。この危険な負の連鎖が不可逆的なものとなる前に、緊急かつ協調的な対応が求められています」
報告書では、こうした傾向に対応するため、また誰一人取り残されることのないようにするために、「公正」「全ての人のための経済安全保障」「連帯」という3つの原則に基づく、新たな国際的な政策合意が不可欠であると提言しています。
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報告書全文(英語)はこちらからご覧いただけます。
UNU-WIDERによる詳細なプレスリリース(英語)はこちらからご覧いただけます。
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【世界社会報告書について】
『世界社会情勢報告(World Social Report)』は、UN DESA(国連経済社会局)による社会開発に関する旗艦報告書です。毎年発行され、国際的および国内的な視点から、世界的な関心を集める社会的潮流と主要な開発課題の相互関係を分析します。
2025年版では、UNU-WIDERが初めて共同執筆者として参加し、格差と信頼の低下がもたらす社会的影響について、新たな研究成果を提示しています。