土地の価値を再確認する

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  • 2015年12月2日

    ナオミ・スチュワート

    The Global Goals

    この記事は、国連大学の「17日間で17の目標」シリーズの1つであり、国連の持続可能な開発サミットに対して補足する形でのリサーチおよび論評を特集しています。

    目標15: 陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

    地球は、きれいな空気から新鮮な水まで、さまざまな資産を私たちに与えてくれます。私たち人間は大地にしっかりと根差して生きており、健康で持続可能な形で暮らし働くために、土地が提供してくれる複合的な資源やサービスに依存しています。そしてそれは、将来の世代も同じです。

    上述の持続可能な開発目標(SDGs)の目標15は、土地、陸上生態系、および生物多様性の価値をはっきりと確認しています。それではなぜ、地球上の耕地の3分の1もの土地が、劣化や砂漠化の影響を受けているのでしょうか。なぜ、すでに疎外されている14億人もの人々(農村部の貧しい人々)が、不利な条件にある農地や地域で暮らしているのでしょうか。私たちが土地やその資源で何をするのかという決断を下す時に、トレードオフについての理解が欠けているのはどの領域でしょうか。私たちのニーズと、 土地が現在および将来にわたって継続的に提供できるものとのバランスをとるために、私たちの理解をどのように深めればよいのでしょうか。

    ここで大いに役に立つ特有のツールがあります。それは経済学です。土地が提供する価値が伝統的な市場においてまったく説明も計算もされていないことが非常に頻繁にあります。例えば、大地に根を張っている木や植物が1リットルの空気を浄化しているとします。しかしこのことは、作物の栽培や都市化のために開墾する目的で森林地帯の1区画が売却される時には考慮されません。そのきれいな空気が失われることによるコストはどれだけでしょうか。そしてさらに重要なことには、それを保護または回復することによってどれだけの恩恵がもたらされるでしょうか。

    共通の指標を用いて、土地が私たちに提供してくれる財やサービスの「すべて」を測定することによって、土地が経済に与える実際の影響に関する最も正確な近似値が得られます。The Economics of Land Degradation(土地劣化の経済学)(ELD)イニシアチブは、過去数年間にわたって、入手可能な情報を照合・合成することによってこうした疑問に答えようと努めてきました。このイニシアチブは、土地劣化に取り組むためには意識改革が不可欠だという理解のもと、経済的な視点から、持続可能な土地管理の研究や慣行について世界的な評価を行うことを目指しています。

    これは、作物生産性などの伝統的な市場価値だけでなく、きれいな空気や新鮮な飲み水などの非市場価値をも含む、土地の「総体的な」経済価値についての理解を人類に与えるものでなければなりません。またこれは、砂漠化と土地/土壌劣化への取り組み、生物多様性と生態系の保護、および持続可能な森林管理の実現に焦点を合わせたものなど、SDGs目標15の一部のターゲットに取り組むうえでとくに有益となります。

    また、費用便益分析を行い、短期的な利益ではなく最適な長期的利益(社会、経済、環境面の利益など)を目指す持続可能な土地管理方法について最善の決断を下すためのツールを、さまざまなグループ(民間企業、政策/意思決定者、科学界)に提供することも重要です。

    そのために、国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)は、国際的な共同ELDプロジェクトの科学調整機関を務め、科学的な背景や戦略についての指導や監督を行っています。こうした取り組みの結果、間もなく行われるSDGsの批准に向けた事前サポートとして、2015年9月24日にニューヨークの国連本部でELDイニシアチブの報告書「The Value of Land(土地の価値) 」が発表されます。

    この報告書には、私たちが利用できる土地管理のさまざまな未来について本当に理解するための、地域的および世界的な一連の視点やツールが提示されています。示されている研究結果は計りしれないほど大きなものです。土地劣化による生態系サービスの損失は年間6兆3,000億~10兆6,000億ドルほどに上ります。これは世界全体の年間GDPの10~17%にも相当します。しかしこの調査では、持続可能な土地管理慣行によって年間75兆6,000億ドルの利益が得られる可能性があるということも明らかになっています。

    このような経済的洞察によって、経済成長と環境保護とを矛盾させずに済む決定的な選択を下すことが可能になります。これらの両方を達成して大きな報酬と豊かな土地を手に入れることができるということが明らかになっています。目標15を達成するためには、まさにこのような情報とツールが必要なのです。

    また、土地の修復、回復、保護を進めることによって、人類が直面しているもう1つの大きな問題、すなわち気候変動の問題を解決できるかもしれません。土地の劣化と気候変動との間に複雑なフィードバックループがあるということ、また土壌が地球上で2番目に大きな炭素吸収源であるということを踏まえると、浸食の削減によって土壌の中により多くの炭素を蓄えられるようにすることで気候変動への取り組みに大きく貢献できるというのは当然の考えです。

    UNU-INWEH は、30を超えるパートナー機関、ならびに、専門家、実務者、および関係者からなる広範なネットワークと協力して、土地が「現在」どのように評価されているか、また、その持続可能な利用を実現するために土地がどのように評価される「べき」かということについて、合意に基づく理解を確立しようと努めてきました。これは、ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)、欧州委員会、および韓国山林庁から主な資金提供を受け、国連砂漠化対処条約の強力な支援を受けている、真摯な利害に基づく真に世界的な取り組みです。この取り組みは、私たちが今後、私たち自身のために、互いのために、そして地球上の他の生命のために、私たちの土地を守っていかなければならないという認識に基づくものです。

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