病理の克服:グローバルヘルスのガバナンス

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  • 2015年10月30日

    オビジオフォー・アギナム

    The Global Goals

    この記事は、国連大学の「17日間で17の目標」シリーズの1つであり、国連の持続可能な開発サミットに対して補足する形でのリサーチおよび論評を特集しています。

    目標3: あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

    国連の他の多くの交渉と同じように、持続可能な開発目標(SDGs)についてのコンセンサスの形成は、神経をすり減らす紆余曲折のあるプロセスでした。国連大学学長であり国連事務次長のデイビッド・マローンの言葉によれば、「2015年9月のサミットでの最終決定に至るまでの持続可能な開発目標をめぐるプロセスは、不安定で(部内者ですら)気をもむものであり、国連における政治的駆け引きの最悪の病理を数多く示す」ものでした。

    SDGsは、国連事務総長によって設立されたハイレベルパネルの報告書の影響を受け、「誰も取り残されることのないようにすること」、「持続可能な開発を中心に据えること」、「雇用とインクルーシブな成長のために経済を変革すること」、「すべての人々のために平和と効果的かつオープンで責任ある制度を構築すること」、および「新しいグローバル・パートナーシップを築くこと」という5つの大きな変革的概念によって推進されます。

    健康の問題は、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進すること」を目指すSDGs目標3を軸として取り組まれます。この目標には、例えば、妊産婦の死亡と新生児の予防可能な死を削減すること、エイズ、結核、マラリア、顧みられない熱帯病の流行に終止符を打つこと、薬物乱用の予防と治療を強化すること、性と生殖の保健サービスへのアクセスを確保すること、およびユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成することなど、13の意欲的かつ具体的なターゲットが含まれています。

    他のSDGsと同様に、目標3は「誰も取り残されることのないようにする」という普遍的なアジェンダによって推進されます。ここで私たちは、消費における非競争性と非排除性という2つのよく知られた基準を軸とする「地球公共財」についての議論へと立ち返ります。地球公共財は、競争することなく誰もが消費でき、誰も排除されることのないよう、十分な量で提供されなければなりません。そして、公共財の恩恵は、国、人(すべての人口集団)、世代(現在および将来の世代)の面でほぼ普遍的にもたらされなければなりません。

    公共財の提供とその財源についてコンセンサスを形成するための議論においては、さまざまな関係者集団の違い、ならびにその利害や官民部門への関与について考慮する必要があります。政府は開発プロセスの推進役ですが、(「営利」と「非営利」の両方の)民間主体が果たす役割もますます大きくなりつつあります。ポスト2015年の時代におけるグローバルヘルスのガバナンスは、すべての人類の健康な生活を確保するための官民パートナーシップの力学に取り組む必要があるのです。

    各国の間に根深い利害関係、構造的な不平等、および文化や「イデオロギー」の違いが存在するなかで、2030年までにこの目標を達成することは可能なのでしょうか?目標3とそのターゲットの実現に向けた最善の資金調達メカニズムとはどのようなものなのでしょうか?私たちの世界は、この目標とターゲットについて楽観視できるほど、十分にレベルの高い「賢明な利己主義」と利他主義によって動機づけられているのでしょうか?

    これらの問題を、より実際的な文脈に当てはめてみましょう。先進国はなぜ、貧しい国々の顧みられない熱帯病(アフリカのマラリアや、南米のシャーガス病など)のコントロールと撲滅に投資しなければならないのでしょうか?顧みられない熱帯病(アフリカ睡眠病、象皮病、マラリア、オンコセルカ症、住血吸虫症、トラコーマなど)のために、より多くの研究開発(R&D)予算を割り当てるよう、民間企業、とくにグローバルな製薬業界を駆り立てるのは誰の役割でしょうか?

    2つの委員会(マクロ経済学と保健に関するWHO委員会と、健康の社会的決定要因に関するWHO委員会)を通じた、これらの問題に対処するための世界保健機関(WHO)による過去の取り組みは、まだ効果的な対応を生み出していません。それでは、部分的なまたは全面的な民営化や商業化によって、保健やその他の必須サービスが商品化された場合に、開発途上国や後発開発途上国のセーフティネットに資金を提供するのは誰の役割でしょうか?これが必然的に官民パートナーシップという形態につながるのであれば、民間企業の透明性と説明責任の面で問題が生じます。

    目標3のターゲットの1つは、「『TRIPS協定と公衆の健康に関するドーハ宣言』……に従って、安価な必須医薬品とワクチンへのアクセス」を提供するというものです。これは、貿易協定が公衆の健康に与える影響という、古くからの疑問を提起します。TRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する)協定は世界貿易機関(WTO)によって施行されるため、このターゲットは、「世界貿易機関のもとで、普遍的でルールに基づいた、オープンかつ非差別的で公平な貿易システムを推進する」ことを目指す(SDGs目標17の)ターゲット17.10に合致していなければなりません。

    国連は、これらのターゲットを効果的に推進できるでしょうか?非国連機関であるWTOが世界貿易政策の規範を定める中心機関である限り、国連とその機関がプラスの健康アウトカムを得るために世界貿易アジェンダに影響を及ぼすことができる可能性は低いでしょう。ノーベル賞を受賞したジョセフ・スティグリッツの言葉を借りれば、貿易はこれまで、自由であったことも公平であったこともありません。1995年にWTOが設立されて以来、国連機関は、「貿易と健康」、「貿易と人権」、「貿易と環境」、「貿易と食品の安全」の問題に関するWTOの前向きな変化の促進において、つねにのけ者にされてきました。

    結局のところSDGsは、17の統合的で不可分かつ相互依存的な目標です。例えば目標3(健康)は、目標2(飢餓の終焉と食料安全保障の達成)なくしては無意味です。また、子どもたちが深刻な病気や飢えのために学校に通えなければ、目標4(包摂的かつ公平で質の高い教育)はあまり意味をなしません。しかし、説明責任のメカニズムが整備されていなければ、世界各国の政府は、(マローン国連大学学長の言葉を借りれば)SDGsの17の目標と169のターゲットを「お好みで選べるオプションメニュー」として扱うことになるでしょう。

    今から15年後の2030年に、私たちはそれまでの歩みを振り返り、収穫、すなわち世界中で何人の人が健康な生活を送っているのかを評価することになるのです!

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