夢を追う女性たち:家事労働を超えた可能性

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  • 2015年4月20日

    メガ・アムリタ

    数週間前、香港で働くフィリピン出身の家事労働者、シザ・クルス・バカニ氏が、栄誉ある2015 Human Rights Fellowship(2015年ヒューマン・ライツ・フェローシップ)を受賞した。このフェローシップは、Magnum Foundation(マグナム財団)が「共感、関与、好ましい社会変革を促す自由なドキュメンタリー写真を支持」して授与する奨学金であり、これによってバカニ氏には、ニューヨーク大学で写真技術の集中講義を受講し、母国で「人権の向上を目的として、効果的に視覚に訴えかける物語を生み出す方法を探求する」機会が与えられることになる。

    香港のとある一家のもとで9年間働いてきたバカニ氏は、余暇の時間を利用して 通りを散策し、香港の通りとドキュメンタリー写真の虜になった。この若い移民女性のレンズを通して、香港の街の人々の日常生活を、胸に迫る力強い写真の中に見ることができる。また、バカニ氏は自身のカメラを使って、虐待を受けた家事労働者のためのシェルターで、女性の撮影も行っている。彼女の写真によって、香港の街とそこに暮らす多様な住民についての新しい見方が開かれた。そしてまた、彼女のエピソードは、これまでとは異なった視点で移民女性と家事労働者を見る機会を与えてくれる。

    バカニ氏がフェローシップを受賞したという話がメディアの注目を集めたのは、そのエピソードが、世界各地で家事労働者が受ける虐待について聞かれる一般的な内容、すなわち、家事労働者の基本的人権に対する尊重の欠如や彼女たちが経験する搾取とは、著しい対照をなしているからである。それが語るのは、移民女性に関するこれまでとは違うストーリー、つまり、変革とエンパワーメントである。バカニ氏といえば芸術家であり、情熱とカメラを持った若い女性である。移民家事労働者でもあるが、彼女はその枠に収まらない。彼女は海外での自身の労働生活の枠を超えて関心を広げ、先入観を破ることができた移民女性なのである。そうした移民女性に対する先入観は、単純かつ侮蔑的な形でステレオタイプ化するため、彼女たちの可能性を抑制しかねない。

    移住が女性にもたらした変革の可能性と、それによって得られた創造と自由のための機会は、移民女性に関するエピソードの聞き慣れない一面である。しかし、どちらの面もエピソードの一部である。世界の多くの国では、住み込みで働く移民家事労働者は移動を制限されており、週に一度の休日も与えられていないことが多い。労働法による保護が不十分であるため、雇用主自らが、雇用する家事労働者の生活条件と労働条件を自由に決定できる場合がほとんどである。こうした制約があるために、それらがなければ利用できたであろう数多くの機会が、多くの移民女性にとって手の届かないものになっていることが多々ある。

    家事労働を職業として認識させようという取り組みが、この議論の中核である。歴史的そして文化的に、この種の労働は世界的に過小評価され、十分に理解されてこなかった。家事労働者のための協会や権利擁護団体、国際社会が、家事労働に対する認識を変え、この領域で起こっている甚大な人権侵害に関心を集め、家事労働者の生活条件と労働条件を改善しようと取り組んでいる。暴力を終わらせ、家事労働者の権利を尊重し、ディーセント・ワーク(働きがいのあるきちんとした仕事)を促進することは、彼女たちが多様な夢を追求するための自由と時間を持つために不可欠である。

    積年の運動が、家事労働者の権利の推進において画期的な出来事へとつながった。家事労働者条約が国際労働機関によって2011年に採択、2013年に発効されたのである。この条約は締約国(現在のところきわめて少数)に対して法的拘束力を持つものであり、待ち望まれていた国際的な規範的枠組みを提供して、「世界の約5,300万人に及ぶ家事労働者の労働者としての権利と社会権を拡大する」ものである。これは家事労働の国際的な認識において重要な一歩であったが、とりわけ家事労働が軽んじられている地域では、現場で取り組むべき課題が山積している。

    私は長年、さまざまな都市の家事労働者を対象に実地研究を行う中で、搾取の状況を社会の底辺から変えようとする草の根の取り組みに数多く出会った。その1つの例として、シンガポールでのDay Off Campaign(デイ・オフ・キャンペーン)がある。これは、国際組織と非政府組織の間での調査とアドボカシーの取り組みを通じた運動で、移民家事労働者に対する休暇を法律で義務づけることに成功した。別の例にインドのNational Domestic Workers Movement(全国家事労働者運動)があり、これは州政府および中央政府レベルで家事労働者の保護を強化する政策措置と法的措置を求めてロビー活動を行う草の根組織である。こうした取り組みは世界的に行われている。香港では、家事労働者は労働条件の改善を求め、公共の場での抗議行動によって声を上げている。レバノンでは、家事労働者の組合が最近設立された。米国では、演劇が家事労働者の自己表現の場になっている。

    労働運動や団体でのアドボカシー活動に参加していない場合でも、移民女性は自らを高めるため、自主的にさまざまな創造的、精神的、教育的プロジェクトに従事し、文化的背景の異なる人々と人間関係を育み、移住の旅を実りあるものにするための新しい経験と機会を模索している。この点で、家事労働者が休暇を取り、余暇を過ごす権利を保障すること、彼女たちが公共の場と技能を活用できるよう支援すること、ならびに教育講座が、政策措置として不可欠である。彼女たちのエピソードから、家事労働者は多様なアイデンティティと願望を有しており、自らの人生と、自らが所属し、その一翼を担うより広い社会において変化をもたらす主体であり、また、そうなる大きな可能性を有しているということがわかる。重要なのは、この好ましい変化のプロセスにおける彼女たちの働きを認めることであり、そうすることによって、バカニ氏の例のようなエピソードがより一般的なものになるだろう。

    今年、国連大学グローバリゼーション・文化・モビリティ研究所(UNU-GCM)は、Female Agency, Mobility and Socio-Cultural Change(女性の行為主体性、移動性、および社会文化的変化)に関する研究プログラムの一環として、一連の政策報告書を発表し、移動のさまざまな状況下で、女性が移住によってどのような経験をするのかを考察することにしている。また、UNU-GCMが調整を行う国連大学移住ネットワークには、ジェンダーと移住に関する世界の専門知識が集結している。ポスト2015年開発アジェンダを具体化するための現在の国際努力と、女性の権利の向上を目指す「北京行動綱領」の採択20周年を迎えること、UN WomenによるHeForSheキャンペーンなどの、ジェンダー平等を求める努力において連帯を促し、尊厳と機会均等を確保するための普遍的プロジェクトを推進しようとする最近の取り組みを考えると、これは時宜を得た議論である。