移住問題の重要性

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  • 2014年2月24日

    メガ・アムリタ

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    Photo: UN Photo/Martine Perret

    人の移動は世界の歴史に見られる永続的な特徴である。しかし、現在ほどそれが意味を持つ時代はなかった。国連経済社会局(UNDESA)が発表した最近の統計によると、世界には2億3200万人の国際移住者が存在し、移住は現代の最も重要で差し迫った世界的問題の1つである。

    UNDESAによると、国際移住者の定義とは、出生国以外に暮らす人である。移住の起因はしばしば、よりよい暮らしや新しい機会の追求である。実際に、仕事や教育や新たな希望を求めて国境を渡る移住者の人数を見れば、世界的、地域社会的、経済的な不平等の現状が最も強烈に伝わってくる。

    しかし移住した多くの人々は必ずしも自ら移住を選んだわけではない。市民活動や政治活動や宗教への迫害と紛争の結果、強制移住はかつてないほど広く行われている。2012年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、世界に1040万人の難民が存在すると 推計した。さらに、環境的変化強制移住および移動の重要な関係や無国籍者の体験を理解する必要性が増している。

    国境を越えることは重大なリスクを伴い、目的地までたどり着けない移住者は多い。その状況は、近年起こった数々の移住者を巻き込んだ悲劇に歴然と表れている。国境越えの手助けがますます利益を生むようになるにつれ、移住者を危険にさらし、利益を得る斡旋ネットワークが横行し、国境の検問や警備には民間の移住管理機関が利用されることが増えた。そうした風潮に懸念が高まっている。この状況を受けて私たちは、今日の世界ではどのように移住が管理されているのか、また現状に対する国家の責任について今すぐ熟考すべきである。

    課題に取り組む

    社会がさらに多様化するにつれ、機会だけではなく課題も生じる。社会経済や文化や宗教に関連する個人のバックグラウンドを根拠とする差別の体験は、今でも日常茶飯事である。優先課題は異文化間の対話のための手段と、移住者が暮らす社会における経済的、社会的、文化的生活への移住者の包括を促進することだろう。また、女性移住者が著しく増加している点にも注目すべきだ。今や女性が国際移住者の48%を占めており、移住者の包括促進策では、世界中の女性移住者が直面する特定の体験に対して適切な取り組みを行わなければならない。

    国際社会がこうした課題に取り組む上で主要な方法がある。2013年10月に開かれた国際的な人の移動と開発に関する国連ハイレベル対話では、移住は国際開発の議題の中核として認められた。「Making Migration Work(移住を成功させる)」というテーマを掲げ、世界の開発と貧困緩和に移住がどのように影響するかを中心に討議は進んだ。また、個人、世帯、社会、国にとって移住がどのように有益となり得るかについても考察された。しかし移住をすべての人にとって有効なものにするためには、移住者が体験するあらゆる形態の搾取と差別を廃絶し、基本的人権の擁護を確実に行うためのさらなる取り組みが不可欠である。

    送金と知識移転を通して移住者が経済開発に果たす役割は認知されている。その一方で、市民社会における最近の議論では、人間開発という観点で移住を理解することが強調されている。国、政策決定者、研究者、市民社会団体の相乗効果が勢いを増す中、移住の人間的側面を忘れず、移住者自身を議論の中心に据えることは極めて重要である。

    こうした差し迫った問題に取り組むために、国連大学(UNU)の諸研究所は共同で移住研究ネットワークを立ち上げた。このネットワークには、さまざまな学際的分野から移住研究の専門家たちが参加し、地域的および世界的規模で移住の複雑性を調査する。現在の研究テーマには、移住者の健康、社会的および文化的生活への移住者の包括および除外、国に残された者への移住の影響、人間の安全保障、移住と開発、無国籍者や強制移住者といった脆弱な集団の体験などが含まれる。

    このネットワークの目的は、UNUのさまざまな研究所が移住に関連した研究に共同して取り組み、共有することである。UNUに特徴的な利点は、研究結果が政策決定者や市民社会団体にも広く共有される点である。UNU移住研究ネットワークのウェブサイトは、移住を研究や政策議題の中心に据える同ネットワークの活動の重要な第一歩となるだろう。