水は世界を変える

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  • 2015年11月5日

    ザファル・アディール

    The Global Goals

    この記事は、国連大学の「17日間で17の目標」シリーズの1つであり、国連の持続可能な開発サミットに対して補足する形でのリサーチおよび論評を特集しています。

    目標6: すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する

    世界の指導者たちは、2030年までに達成すべき重要な目標の概要を示すとともに、それらの目標を順調に達成するための手段とアプローチをも提供する歴史的な開発モデルをニューヨークで採択しようとしています。

    これほどまでに意欲的かつ複雑な作業は、これまで実行に移されたことがないのはもちろん、構想されたことさえありません。重要なのは、このいわゆる「2030開発アジェンダ」(およびこれに含まれる持続可能な開発目標(SDGs))が、人、地球、繁栄、平和、パートナーシップにあらためて焦点を合わせているという点です。古くからあるこれらの概念が再結合して、社会と環境と経済の発展を同時進行で達成することを目指す新たなDNAが生まれます。そうすることによってこのアジェンダは、尊厳の欠如、不平等の拡大、健康や福祉への脅威、自然資源の枯渇、環境悪化、気候変動など、この時代の最大の課題を克服することを目指します。

    SDGsの各目標の詳細を一読すると、水が生態的安定性、経済発展、および人間の健康と福祉の基盤をなすものだということがよくわかります。水は本来、社会的発展と経済的発展の横断的な側面です。水関連の問題を適切に管理しなければ、他のSDGsは達成不可能だと言ってもさしつかえないでしょう。

    SDGs目標6には、安全な水と十分な衛生へのアクセス、水質、水の効率的利用、生態系の保護、国境を越えた協力、および統合的な水資源管理などの問題に取り組む8つのターゲットが含まれています。前回の目標設定作業と比べると、今回の目標とターゲットの策定は、相互に関連するすべての課題に包括的に取り組むことを目指しています。このアプローチにより、不平等の問題に真っ向から立ち向かい、能力育成とコミュニティ強化の方法を導きます。

    しかし、水についての話は目標6だけにとどまりません。他にも、具体的かつ数量的な水関連のターゲットが含まれているSDGsや、目標達成のためには適切な水管理が不可欠なSDGsがいくつかあります。前者には、健康に関する目標(目標3)、都市に関する目標(目標11)、消費と生産に関する目標(目標12)、海洋資源に関する目標(目標14)、および陸上生態系に関する目標(目標15)が含まれます。後者については、水はほとんどすべてのSDGsの成功を支える要素だと言われています。このように、水は2030開発アジェンダ全体の達成の基盤となっているのです。

    さらに、SDGsの策定過程において十分に注目されなかった水の側面や特質にも焦点を合わせる必要があります。これらの機会損失の中で最も重要なのが、資源効率を最適化するための、SDGs(および対応する部門)の相互結合という概念です。

    例えば、健康関連の目標(目標3)は妊産婦の死亡の削減と5歳未満児の予防可能な死の終焉を目指していますが、水や衛生施設や衛生状態がこれら両方のターゲットを達成するための重要な要素だということは明確に認識されていません。同様に、目標7は近代的エネルギーを普遍的に提供し、再生可能資源の割合を増やすことの必要性を正しく認識してはいますが、水力発電が再生可能エネルギーの方程式の重要な要素であり、また今後も重要な要素であり続けるということをはっきりと認めていません。SDGsのターゲットを統合的に策定していたならば、水部門とエネルギー部門との懸け橋を築くことができたはずです。

    目標6とその他の水関連のターゲットを順調に達成するためには、以下のような深刻な疑問に早急に答える必要があります。これらの水関連の目標やターゲットを達成するための能力が全くない国を、いかに最善の方法で助けるか?緑の気候基金とほぼ同じように機能して、能力育成の取り組みを支援する、大規模なグローバル基金を構想することは可能でしょうか?各国政府やその企画部門は、中期的に資源をどのように再配分するのでしょうか?私たちは、現在のみならず、少なくとも今後15年間の水関連の課題を体系的に分析するための適切な手段を有しているでしょうか?先進国は、普遍性の概念を真摯にとらえ、自らの水関連の政策や投資を再構築するでしょうか?

    国連大学は、研究パートナーとの協力のもと、これらの基本的な問題に取り組むための基礎的調査を実施することができるでしょう。過去の国連大学の報告者でも、水関連のSDGsの実施に関するこうした問題に取り組んでいますが(「Water in the World We Want(私たちが望む世界における水)」および「Catalyzing Water for Sustainable Development and Growth(持続可能な開発と成長の触媒としての水) 」)、まだ多くの課題が残されています。

    私たちは、国連システムが国際社会との協力のもと、SDGsの枠組みの実施に向けて国連加盟国を支援するために果たすことのできる役割について、徹底的に考える必要があります。とくに、水関連の目標の支援を担う単一の国連組織または機関はありません。そのため、UN-Waterが30余りの組織の相互連携を強化するという任務を負っているものの、内在的な非効率性が存在します。国連加盟国が国連システムの構成要素を一新し、目的に合ったメカニズムへと作り変えて、制度的・能力的なギャップを埋めることを真剣に検討すべきだという意見もあるでしょう。

    不完全で機会損失も存在するとはいえ、SDGsの枠組みは全地球を再構築するまたとないチャンスを提供しています。このチャンスをつかむのをためらっている場合ではありません。

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