日本に根付く協働的資本主義

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  • 2012年12月14日

    ブレンダン・バレット

    Cooperatives

    Photo: Ryo Murakami/UNU

    最近、英国の著名な環境論者の1人、ジョナサン・ポリット氏が「 協働的資本主義」の必要性を訴えた。彼によれば、今日の世界が作動するオペレーティング・システム(基本ソフト)は、私たちが必要なものを提供せず、「持続可能性をまったく実現不可能なゴールにすることが目的」だと論じる。

    このオペレーティング・システムの主な構成要素は「経済成長と短期的利益の両方を最大化するために最低限の規制を受けた自由市場であり、その原動力は競争と増大された生産性」だ。

    ポリット氏は、このオペレーティング・システムを放棄することや微調整することが答えではないと主張する。むしろ私たちに必要なのは「真に持続可能な世界経済のための根本的な最適化」である。今回Our World 2.0ではポリット氏の論点を、オペレーティング・システムの2.0バージョンへの大幅な更新として捉える。

    ポリット氏と フォーラム・フォー・ザ・フューチャー英国協同組合は持続可能な経済を再起動させる方法として、「協調的資本主義」の概念を紹介している。2011年、英国協同組合は「 革命に参加しよう」というキャッチフレーズを掲げたウェブサイトを立ち上げ、世界を変えるインスピレーションを若者に与えようとした。

    こうした活動は世界規模の運動の一部となり、国際連合(UN)は2012年を国際協同組合年に定めた。 国際協同組合年の目標は、貧困の削減、雇用創出、社会統合に対し協同組合が寄与した貴重な貢献について、市民の認知度を高めることだ。さらにUNは2012年に、ビジネスや社会経済的開発を推進する代替的方法として、協同的ビジネス・モデルの長所を強調したいと望んでいる。

    では、協同組合とは何か? それは、組合がサービスを提供する組合員によって経営され統制される企業である。そのため、協同組合で下される決定には通常、営利の追求だけでなく、組合員やそのコミュニティの欲求や利益が考慮される。

    歴史から学ぶ

    協同組合は何世紀もの歴史があり、その 片鱗は1700年代のヨーロッパの史跡にも見られる。現在、協同組合は通常、ある種の投機事業と関連しているが、同様の取り決めは土地の管理や所有に関連した分野でも見られる。例えばメキシコの エヒードのように、コミュニティを基盤とした土地活用システムなどである。

    本稿と共に掲載されているビデオで 国連大学高等研究所のあん・まくどなるど氏が説明しているように、日本には13世紀から続く入会(いりあい)と呼ばれる慣習がある。この慣習では、村人は森を共有管理していた。コンラッド・トットマン氏が1998年の著書『The Green Archipelago(緑の半島)』で記録しているように、村人はこの方法を利用して、村の内外の誰が、森のどの部分を、どのような条件で、どの程度の使用権を持つのかを決定できる。

    トットマン氏によれば、「外部の競合者を排除し、内部の人々への割り当てを規制し、土壌浸食や野火やその他の有害な結果を促進するかもしれない乱用を予防するために、村人たちは明らかに共有管理の効用を認識していた」

    つまり興味深いことには、ポリット氏たちが示唆したように、新たな世界的オペレーティング・システムを更新する際には、歴史からの学習を取り入れるべきであり、過去に長期にわたって有効であった方法を応用すべきなのだ。トットマン氏が提示した1448年の合意書によれば、近江国(現在の滋賀県)の村人は無認可の森林伐採を規制する決定をしている。

    入会地(コミュニティが共有管理する土地)で認識すべきポイントは、実際の所有権は共有されず、複数の世帯が保持していたという点である。原則的に、そうした世帯がお互いに恩恵をもたらす管理の取り決めに合意したのだ。

    日本の「入会」制度では、実際の土地所有権は複数の世帯が保持していたが、それらの世帯がお互いに恩恵をもたらす管理の取り決めに合意した。

    まくどなるど氏は、これが森林協同組合の誕生の先例かもしれないと指摘する。ビデオから分かるように、かが森 林組合の場合、林業従事者数が減少しているため、まだ従事している人々が組合を通じて力を合わすことが理に適っている。そうすれば、従事者たちはリソース と専門技術を集結できるだけでなく、同時に持続可能な管理実務を遂行でき、結果的に 森林管理協議会からFSC認証を受けることができる。

    FSC認証の目的は、認証された製品が「最高の社会的および環境的恩恵を生み出す」原則と基準を維持することを保証することである。その原則には、法令順守、借地権や利用権や責任の明瞭性、先住民族の権利の尊重、地域の良好なつながり、労働者の権利の尊重、環境 への影響を最小限にとどめ、効果的な管理計画を開発することが含まれる。

    かが森林組合長の有川光造氏によると、同組合は現在192地域の6600人の組合員で構成されている。30人の職員だけに頼るとしたら、森林の効果的な管理はもちろんのこと、FSC認証を受けることも不可能である。しかし192地域の総代に頼ることで、特定の地 区の管理を各地域が受け持つことが可能になる。

    有川氏によると、協同組合として共に活動し、FSC認証を獲得できたことで、利益だけに突き動かされていた状況から、「動植物と共存しながら」森を管理する方法を含む重要な事実に配慮する状況に前進できたという。

    伝統に基づく新たなオペレーティング・システム

    まくどなるど氏が指摘するように、コミュニティに基づいた管理という日本の封建的伝統は、今でも慣習の一部である。同時に有川氏は、若い世代が山や森とのつながりを失ったため、その溝を埋めて森林を管理するには森林協同組合が一歩踏み出す必要があると主張する。しかし英国協同組合がやろうとしているように、かが森林協同組合は「革命に参加し」、世界を変えるインスピレーションを石川県の若者に与えられるかもしれない。

    そうすれば、他の森林協同組合も後に続くかもしれない。2011年4月時点で、日本には678の 森林協同組合がある。さらに農業協同組合は715団体、漁業協同組合は1001団体ある。こうした数字は、国際協同組合年の基盤となる、協同組合の豊かな伝統と豊かな資質を物語っている。

    しかし、日本の協同組合がポリット氏と同じ視点で自らの役割を見ているかどうかは不明だ。恐らく「持続可能な経済を再起動する」ための手段というよりは、伝統の継承者としての認識だろう。

    持続可能な経済へ前進するために、私たちは競争ではなく協働に、もっと重点を置く必要がある。さらにポリット氏は「人類が進化に成功するにあたって、協働は競争より重要でなかったとすれば、少なくとも同等に重要だったと証明する学術研究が多数」あると論じる。それにもかかわらず、私たちのビジネスへのアプローチは協働的な方法ではなく、現在の資本主義の土台である「適者生存」の競争方式に固執している。ポリット氏はまた、「ダーウィン自身が異なる種の間での協働的行動の重要性を雄弁に記している」と論じている。

    さらにポリット氏は言葉の語源に注目して問題の本質に迫る。競争(competition)のラテン語の語源(competare)は「邪魔となるすべての物や人を破壊するという意味」ではない。「共に奮闘する」という意味だ。

    今日、差し迫った世界的問題に対処するには、「共に奮闘する」のか、あるいは非常に高い確率で「共に倒れる」 のか、どちらかの選択肢しかないのは明白である。その選択はかなり厳しい。Our World 2.0は、従来通りのやり方は答えではないと論じたことがある。この考えは、ヴァージンの リチャード・ブランソン会長のような世界のビジネスリーダーたちによって共有されている。

    従来通りのやり方を超えようとするなら、私たちは協働的モデルを参考にできるし、そうすべきだ。幸運なことには、 現在世界中に、 すでに140万もの協同組合が存在する。すなわち、協働的資本主義のための強力な基盤がすでに存在しており、私たちはそこから築き上げていけばいいのだ。 協同組合は、経済的な実現性と、環境的な持続可能性と、社会的責任のすべてに同等に着目したビジネス活動が可能であると教えてくれる。

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    この記事は国連大学の環境ウェブマガジン Our World 2.0に掲載したものです。

    翻訳:髙﨑文子