2013年9月3日
Photo: UN Photo/John Isaac
現在のグローバルな開発アジェンダは、世紀の変わり目(2000年)に設定されたミレニアム開発目標(MDGs)を軸としている。MDGsの達成期限は2015年であり、期限まであと2年を切っている。
MDGsが掲げる期限を定めた8つの目標には、①貧困と飢餓、②教育、③ジェンダー平等と女性の地位向上、④乳幼児死亡率、⑤妊産婦の健康、⑥HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病、⑦環境の持続可能性がある。 最後の1つである開発目標⑧(MDG8)は、他の目標の達成を支援するため、開発のためのグローバルなパートナーシップの推進に重点を置いている。
MDGsの設定以来、確実に進展は見られる。貧困は相対的に見れば半減しており、重要なことに、サハラ以南のアフリカを含め、あらゆる地域で減少している。また世界全体で5歳未満児の死亡率は、生児出生1,000人当たり97人から80人に減少し、サハラ以南のアフリカでは174人から121人に減少している。
普遍的初等教育に関する大きな進展も報告されている。初等および中等教育の就学率は、サハラ以南のアフリカで、1990年の54パーセントから2010年の76パーセントに増加した。そして何よりも、就学に関するジェンダー格差は縮小しつつある。
2015年が近づくにつれて達成感が生じつつあるが、開発の取り組みはまだ道半ばであるということを、ほんの一瞬でさえも、見失ってはいけない。およそ25億の人々は基本的な衛生施設を利用できず、この豊かな世界の中で、9億を超える人々は今なお極度の貧困の中に暮らしている。また、就学率は大幅に向上しているが、子どもたちの多くは、日常生活に必要な読み書き能力に欠け、数学が理解できないまま初等教育を修了している。
また、グローバルな開発コミュニティは、一部のアナリストが「変換型の成長(transformative growth)」と呼ぶもの、つまり、生産性とセクターごとの生産量の構成において根本的な変革が必要であるということに、大いに注目すべきであるということが次第に明らかになりつつある。ここ数年に達成された経済発展は、世界、地域、あるいは国レベルにおいて等しく配分されなかった。また気候変動により引き起こされる課題は、ほんの数年前に考えていたよりもはるかに厄介であるからだ。
国連大学世界開発経済研究所(UNU-WIDER)では、2014年~18年に向けた次の作業プログラムの枠組みを準備している。私たちは、世界は過去数十年で実に多くの点で変化したという事実を認識している。こうした背景のもと、今後、アフリカ、ジェンダー、援助効果という3つの大きな問題にとくに注意して、変化、参加促進、持続可能性に関する研究に重点を置くつもりである。
国家の意思決定者、国際開発機関、研究者という、3つの主要ステークホルダーは、私たちにとってとくに重要である。UNU-WIDERの研究は、主にこの3つのグループによって支持されている。UNU-WIDERの研究は、現在交わされている議論に、世界、地域、国家の開発戦略および政策に関する情報を提供するよう、今後も対応していく。
ポスト2015開発アジェンダ策定の準備は進められている。私たちが直面している課題のひとつは、いかに有意義な方法で一連の問題に対処するかであることは言うまでもない。現在の問題は、2000年頃よりもはるかに広範なものになっている。 開発のためのグローバル・パートナーシップを拡大するために、多数の新たな機会を追求する可能性もある。現行のプロセスは、交渉が行われず、大部分は援助側の独り善がりであったMDGsの策定につながったプロセスよりも、いっそう包括的なものにしなければならない。
「 Realizing the future we want for all(私たちが望む未来の実現に向けて)」 は、ポスト2015開発アジェンダに関する国連システム・タスクチーム(UNTT)が提出した最初の報告書の表題である。本報告書は、一連の重要な調査結果と勧告を提示し、包括的な経済開発、社会的進歩、環境の持続性を確保するために総合的な政策アプローチを求めている。
本報告書はまた、ポスト2015開発アジェンダは、平和と、貧困や恐怖がない世界のために、すべての人々の願望に応えなければならないと明確な言葉で強調している。健全な相互の説明責任の仕組みがなかったことがMDG8の大きな欠点であり、多くの分野で目標が明確に定義されていなかったことは、現在行われている議論で明らかになりつつある。その結果、コミットメントの実現と追加性の範囲を有意義な方法で追跡することが困難であった。私たちは前に進みながらも、これを修正する必要がある。
グローバル化と急速な成長を通じて、途上国全体の比較的多数の国々でさらなる多極化が進んでいる。当然の結果として、開発協力を行う制度的枠組みは、多数の新たなアプローチと、より多くの援助機関(ドナー)と関係機関(アクター)とともに、ますます複雑化している。UNU-WIDERによるReCom研究プログラム(ReCom research programme)のもとで実施された研究で明らかに示されているように、援助機関が援助を行ってきた従来の光景は変わりつつある。
MDG8の利点にもかかわらず、関連の目標は、従来の「援助側‐非援助側」のパラダイムの中にまとめられた部分が大きい。こうしたパラダイムは今では急速にくずれ、形を変えつつある。ポスト2015開発アジェンダは、開発融資には、国内融資と並行して明確に考慮すべき外国直接投資、送金、さまざまな革新的なリソースを含めることを認識する必要がある。
さまざまな機関にわたる新たなパートナーシップの必要性も明らかになりつつある。したがって、グローバルな、透明かつ相互責任を持つパートナーシップは、ポスト2015開発アジェンダの策定においては、間違いなく中心とならなければならない。同時に、援助の役割は相対的に見れば小さくなりつつあるが、それでもやはり、公的移転は多数の最貧国に今なお貢献しているということに留意する必要がある。
また、グローバルな公共財の資金調達をするために国際的な仕組みと規制環境を整える必要性があることも疑いない(たとえば、気候変動や中所得国における貧困への対処の仕方などの問題を含む)。具体的には、気候変動への資金調達と開発協力に関する2トラックアプローチは、根本的に設定し直す必要があることが明らかになった。
UNU-WIDERは、策定中のポスト2015グローバル開発アジェンダに大きく貢献することが可能であり、また本研究所の研究プログラムは、前述のように、変化、参加促進、持続可能性へと焦点を絞り始めるだろうと私は考える。これらは、私が思うには、未来のための開発アジェンダに重要な要素である。
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この記事はUNU-WIDERで発表された記事を編集したものです。