世界開発目標はどの程度有効か?

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  • 2015年11月18日

    アダム・シルマイ

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    この記事は、国連大学の「17日間で17の目標」シリーズの1つであり、国連の持続可能な開発サミットに対して補足する形でのリサーチおよび論評を特集しています。

    本シリーズも後半にさしかかるこのあたりで、一歩下がって、とくに目標9に焦点を合わせながら全体像を眺めてみましょう。

    目標9: レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る

    活気あるオンライン討論と、協議の膨大なプロセスを経て、世界の指導者たちは、新たな一連のポスト2015年世界開発目標を採択するために、一堂に会しました。この目標は、2015年に向けた開発のターゲットを定めたミレニアム開発目標(MDGs)に代わるものとなります。

    世界開発目標が本当に有効かどうかということについては、議論の余地があります。これらの目標に批判的な人たちは、これは「宣言による開発」という国際的な伝統を象徴するものであり、ポリティカル・コレクトネスの観点において無意味な行使とみなしています。大きな批判の1つは、MDGsが理論的根拠に欠けていたというものです。MDGsは、明確な優先順位も、目標達成方法についての理論もなく、ただターゲットの一覧を示しているにすぎないというものです。

    したがって(私を含む)この目標に批判的な人々は、MDGs達成のカギは貧しい国々における経済成長と生産力の急速な拡大にあると主張しました。しかし、MDGsには生産力についての言及はほとんどなく、2009年のスティグリッツ、フィトゥシ、センの報告書がもたらした悪影響により、経済成長はますます疑いの対象となりました。

    開発目標を支持する人たちは、MDGsは明確に定義された一連のターゲットに政策立案者、政治家、および、より広範な一般市民の注目を集めることに成功したと主張します。すべてのターゲットが達成されたわけではありませんが、貧困削減、死亡率の低下、エイズとの闘い、教育へのアクセスの拡大といった分野で大きな進展が見られました。

    これに対して、批判的な人たちは、達成された改善はMDGsとはあまり関係がなく、アジアの経済戦略成功の副産物だと反論しています。つまり、世界の貧困率の低下は、他の何よりも、中国とインドの成長によるものだというのです。

    私は批判的な人たちの意見の多くに賛成ですが、MDGsは全体としてこの15年間にプラスの役割を果たしたと考えています。経済成長は自動的に望ましい社会的結果を生むわけではありません。MDGsは社会政策の推進を促し、それらの社会政策が資源の使われ方や配分方法に影響を及ぼしました。MDGsは、社会経済的なパフォーマンスを監視するための枠組みを提供し、開発のための資源の動員に役立ちました。

    SDGsとMDGs の比較

    新しい持続可能な開発目標(SDGs)は、MDGsと比べてどうでしょうか?まず、両者には多くの継続性が見られます。MDGsの目標のほとんどすべて(例えば、さらなる貧困削減や、栄養改善、健康、ジェンダーの平等など)は、新しい目標にも含まれています。MDGsの18個のターゲットの多くが、SDGsでは独立した目標となっています。

    第二に、MDGsの8つの目標、18個のターゲット、48個の指標が、SDGsでは17個の目標と169個もの関連するターゲットからなる、大きすぎて扱いにくいリストへと膨らんでしましました。これは明らかにマイナスの変化です。MDGsの強みの1つは、明確な目標がかなり短いリストにまとめられていたことです。優先順位を定めずに何もかもを含めてしまうことは、機能停止を招きます。

    第三に、地球温暖化の問題を踏まえて持続可能性が重視されているのはきわめて正当なことです。SDGsの17個の目標のうち、10個が持続可能性について言及し、4個が専ら持続可能性に焦点を絞っています(持続可能な消費、気候変動への取り組み、海洋の持続可能な利用、持続可能な生態系)。

    第四に、MDGsが理論的根拠に欠けているという批判に対して、SDGsは対処しています。SDGsの目標のうちの2つ、すなわち目標8(成長と生産的な雇用)と目標9(レジリエントなインフラ、包摂的で持続可能な産業化、およびイノベーション)は、経済成長と開発の達成方法に明確に関連しています。これは歓迎すべき進展ですが、これらの2つの目標は本当の意味での目標ではなく、目標を達成するための「手段」です。

    目標9の視点から

    こうした問題のいくつかを、「レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」ことを目指す目標9についての議論を通じて、検討してみましょう。

    まず言いたいのは、私は産業化について言及することに賛成だということです。かつて経済発展の成功は産業化と緊密に結びついており、現在の状況においても産業化は依然として重要だと私は確信しています。

    しかし産業化の役割については、現在賛否両論があるということも指摘しておくべきでしょう。サービス業中心の先進国経済だけでなく、低所得の新興国経済においても、成長の原動力としてのサービス業部門の重要性が高まっていると主張する文献が数多くあります。

    「産業化」をターゲットに定める一方で、世界的な「脱産業化」のプロセスも進んでいます。アフリカの一部の最貧国は、時期尚早な脱産業化のプロセスに入っており、これを逆転させることは容易ではありません。

    さらに、ある国に適した産業化戦略が他の国にも適しているとは限りません。過去15年間に学んだ重要な教訓の1つは、画一的な解決策は避けるべきだということです。

    最後に、包摂的かつ持続可能な産業化(ISID)という概念は、「宣言による開発」の好例です。産業の発展が、(雇用創出によって)包摂的で、可能な限り環境的に持続可能なものでなければならないという考えに反対する人はいないでしょうが、実際には常にそうだとは限りません。

    産業の成長は、汚染、排出、気候変動の面で大きな悪影響をもたらします。また、生産の資本集約的性質が雇用創出量を制限するため、製造業部門の成長によってすべての雇用問題が解決するわけではないということもわかっています。

    ISIDは、間もなく発表される「UNIDO Industrial Development Report (国際連合工業開発機関(UNIDO)産業発展報告書)」(2016年)のテーマです。この報告書は一方では、包摂的かつ持続可能な産業化の興味深い事例を紹介します。これらの事例は、将来の政策策定のためのインスピレーションの源となり得ます。

    しかしこの報告書はその一方で、産業の成長と環境、または産業の成長と包摂性の潜在的なトレードオフについても論じています。

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