2014年6月24日
UN Photo/Sylvain Liechti
武力紛争から文民を救う必要性は数千年前から認識されており、この規範の起源は 初期の宗教的な文章に見ることができる。ただし、文民の保護(POC)が明確に普遍化されたのは20世紀後半になってからで、画期的な1949年の戦時における文民の保護に関するジュネーブ条約(第4条)で成文化された。
POCはその後、法的には発展してきたが、実践ではそうとは言えず、国連平和維持軍の活動中にルワンダおよびボスニアで大虐殺が起きたことで変化の必要性が明らかになった。POCが必要であることは、現在、広く認識されている。適用される状況の範囲と、それを実現するための運用能力および準備は拡大を続けており、多くの国連平和維持活動にはPOCのマンデートが与えられている。
しかし、国連平和維持軍はどのようにして文民を保護するのか。国連事務局内部監査部(OIOS)による最近の報告書 が、POSマンデートをもつ現在の10の国連平和維持活動のうち8つを評価することによって、その答えを示している。(まだ短期間であるために評価できないMINUSCA (国連中央アフリカ共和国多角的統合安定化ミッション)およびMINUSMA(国連マリ多角的統合安定化ミッション)の2つのミッションは除外された。)
POCは、国連の機構全体がどれだけよく機能しているか、あるいは機能していないかの、非常にはっきりした指標となってきたため、この報告書は重要である。この報告書作成のために国連大学は、平和維持活動によるPOCマンデートの報告方法にどのようにアプローチして検討するかに関する学術的背景をOIOSに提供するとともに、 質問票を作成して結果を分析する方法についても方法論的な助言を行った。
平和維持活動を通した文民保護の失敗および課題は、2009年に国連平和維持活動局(DPKO)および国連人道問題調整事務所によって委託された包括的報告書で取り上げられた。この報告書は、安全保障理事会のマンデートから国連のミッションプランニングまでの活動の「連鎖」と、平和維持活動の現地での活動への展開を調査している。そして、文民を保護するための平和維持ミッションの能力を弱体化させる非常に大きな欠陥を見つけ、POCを支援する事象の連鎖が切れていると報告した。
それからの5年間で多くのことが改善されてきた。 政策ガイドが発行され、構造が明確化され、保護行為者間の集団パートナーシップが構築された。活動の一部は結果を出し、平和維持軍の活動範囲にある場所の文民に対する攻撃を防止し、抑制しているようにみえる。
しかし、これらの改善にもかかわらず、積極的に介入する能力と意思の欠如によって数多くの文民が致命的な危険にさらされた。多くの紛争では、平和維持軍が近くにいる場合でも、文民の犠牲者の数は継続的に増加している。昨年の報告書で、OIOSはこれについて以下の理由をあげた。
政策としてのPOCと実践されるPOCとの差は広がってきており、国連の平和維持活動を危険にさらす可能性がある。この差を縮めるために、OIOSは新しい報告書で次のように推奨した。
DPKOおよびフィールド支援局(DFS)(平和維持活動の現場ミッションおよび政治的現場ミッションに献身的支援を提供する)はこれらの推奨事項を受け入れたが、最初の項目については保留を表明したのみで、指揮統制の問題はまれであると述べるとともに、指示に従わない場合に対処する既存の手続きがあることを指摘した。
最近発表されたこのOIOS報告書は、POCの有効性に直接関わる要因を特定している点で、革新的である。たとえば、軍派遣国の役割については、これまで国連の文書で白黒がはっきりした明確な言葉で表現されたことは一度もなかった。もし問題解決策の一部が国連事務局とその他の国連機関にあるとするならば、残りの解決策は加盟国にある。
軍派遣国がその派遣軍に対し、文民が致命的危険に直面した場合は必要とされるあらゆる手段を用いるようにと指示しない限り、POCは実現しない。そのような指示は、国連事務総長またはほかの誰でもなく、加盟国の指揮の範囲内にあるものだ。
武力の行使はまさに非常に異論の多い問題であるから、これについて(POCに関するより幅広い議論の中で)緊急かつ包括的な議論を行い、合意を成立させることが不可欠である。幸い、国連安全保障理事会の常任理事国である5カ国は、そのような議論に加わる意欲があることを示唆している。