開発途上国とミレニアム開発目標(MDGs) における地熱エネルギー

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  • 2013年11月8日

    マルフリドゥル・オマルスドッティル and イングバル・B・フリドレイフソン

    Geothermal energy

    ヘトリスヘイジ地熱発電所(アイスランド) UN Photo/Eskinder Debebe

    国連が2012年をすべての人のための持続可能エネルギーの国際年に定めたことに加え、国連事務総長が「すべての人のための持続可能エネルギー」イニシアティブを始動させたことは、間違いなく昨年のエネルギー目標の達成への期待を高めた。国際エネルギー機関(IEA)によると、2012年は「2030年までに普遍的なエネルギー利用を達成するための新しい焦点、新しい取り組み、新しい行動」を実際に目のあたりにすることになった年だ。

    しかし、そうした進展や新たな焦点にもかかわらず、今日まだ130万人もの人々が近代的なエネルギー源の利用をできずにいる 。さらにこの倍の数の人々が、料理をする際に木材や石炭、動物の排泄物などに頼っており、有害な煙を吸入している。生活水準を向上させ、ミレニアム開発目標(MDGs)を達成し、また同時に持続可能な環境を確保するための鍵となるもののひとつは、クリーンなエネルギーを広く入手可能にすることと、さらに重要なこととして、そのエネルギーが買える値段であることだ。

    これは世界エネルギー会議(WEC)による、エネルギーの持続可能性への取り組みを支援する枠組み作りを反映したものであり、三つの核心的な特徴、すなわちエネルギー安全保障、社会的な公正、そして環境への影響の軽減に基づいている。

    地熱エネルギーはクリーンで再生可能なエネルギー源だ。地熱エネルギーの利用が記録されている国の70%近くが、開発途上国または過渡期にある国々である。こうした国々において、生活水準の向上を目的とし、将来的に地熱エネルギーを利用する見込みは非常に高い。

    しかし地熱エネルギーには、先行する巨額の投資が必要である。したがって、ミレニアム開発目標の達成や、世界的にある貧困状態の改善のためにも、開発途上国における地熱エネルギーのような再生可能エネルギー技術のキャパシティ・ビルディング強化に一層の努力が求められる。現在の主な再生可能エネルギー源(水、バイオマス、風、地熱、太陽光と風力)を開発するための技術は成熟してきているものの、その経験は主に先進工業国に限られたものとなってしまっている。

    世界のエネルギー資源

    今後数年間、先進国の人口が世界の総人口に占める割合が減っていく一方で、南半球では急激な人口増加が見込まれている。その結果、最新の予測で提示されているのは 、2040年までの開発途上地域のエネルギー需要は65パーセント上昇(2010年との比較)するというもので、これは先進国の需要予測の2倍にあたる。

    将来的な世界のエネルギー需要を見積もるにあたって、ミレニアム開発目標を支援するためにはどのエネルギーサービス(供給方法)がもっとも適しているのかを確立することが必要不可欠であり、また、最も実践的かつ妥当な方法で人類の発展を推進し、気候変動と闘うためにも、異なる形態のエネルギーがこうしたサービスを提供する際に果たすことができる役割について考察することが不可欠である。

    来世紀の経済開発は、地理的資源にとらわれることが少なくなる一方で、環境への配慮や資金調達、技術的な制約を一層余儀なくされるであろうことを考慮することも重要である。石油やガスは引き続き重要なエネルギー資源となるだろうが、再生可能エネルギーが台頭している。IEAは世界エネルギー展望2012の中で、「水力発電の安定した増加と急速な風力および太陽光発電の普及により、再生可能エネルギーは世界のエネルギー混合の中で独立した位置を築いた」と言及している。IEA の予測では、2035年までに再生可能エネルギーは発電量全体のほぼ3分の1を占めることになるとされている。

    世界の主な年間消費エネルギーが現在約510エクサジュールであるという事実をふまえて、再生可能エネルギーの技術的潜在力(コストと関係なくどれほどのエネルギーが生産可能であるか)は、表1に示したように、将来的に世界の需要に見合う十分な生産量を供給できるということに疑問をはさむ余地はない。

    表1: 再生可能エネルギー源の技術的潜在力(年間生産量)の範囲

    資源 EJ/年
    水力発電 50–52
    バイオマス 50–500
    太陽光発電 1,575–49,837
    風力発電 85–580
    地熱発電 128–1421
    合計 1,888–52,390

    資料: IPCC (2011年)

    注: EJ = エクサジュール

    しかし問題は、技術的潜在力のうちどれだけの部分が実際に経済的、環境的、社会的側面において利用可能なのか?ということである。この点ではおそらく、エネルギー資源によりばらつきが出るだろう。

    地熱の恩恵

    発電所が24時間あたりに発電可能な時間(すなわちキャパシティ・ファクター)には、再生可能エネルギーの資源によって非常に幅がある。このキャパシティ・ファクターは、地熱エネルギーが72%、バイオエネルギーが55%、水力発電が44%、風力発電が23%、太陽光発電は13%となっている。

    地熱はそのキャパシティ・ファクターが群を抜いて高く、天候に左右されないことだけではなく、本来そのエネルギーの貯蔵能力にも優れ、「通常の」使用時間の需要および、(猛暑日に集中的に冷房が使用される場合など)追加ニーズが発生する「ピーク時の需要」に応えるべく継続的に発電をすることが可能である。

    地熱発電計画では、地熱井掘削、発電所の建設、送電線(および/または)絶縁パイプラインなどの必要性から、一般的に高額な先行投資が発生する。しかし、運営コストは比較的低いものとなる。

    地熱資源は約90カ国で確認されており、そのうち79カ国では一定量の地熱エネルギーの使用が示されている。24カ国では地熱資源による発電が行われており、そのうち9カ国では国内の電力の5~26%を地熱発電から賄っている。

    これまで、地熱エネルギーの潜在的な可能性というものは わずかなものとして低く見積もられていたため、直接的な利用方法(地下の熱源のヒートポンプから空間の暖房および温水)と発電との両面で地熱エネルギーの使用を促進するにあたって、膨大な余地があった。表2では、地熱発電と地熱の直接利用での世界上位16カ国を示している。

    表2:地熱エネルギーを産出・使用している上位16カ国

    2010年の地熱による発電 2009年の地熱エネルギーの直接利用
    GWh/year GWh/year
    United States 16,603 China 20,932
    Philippines 10,311 United States 15,710
    Indonesia 9,600 Sweden 12,585
    Mexico 7,047 Turkey 10,247
    Italy 5,520 Japan 7,139
    Iceland 4,597 Norway 7,001
    Japan 3,064 France 3,592
    Kenya 1,430 Germany 3,546
    El Salvador 1,422 Netherlands 2,972
    Costa Rica 1,131 Italy 2,762
    Turkey 490 Hungary 2,713
    Papua New Guinea 450 New Zealand 2,654
    Russia 441 Canada 2,465
    Nicaragua 310 Finland 2,325
    Guatemala 289 Switzerland 2,143

    資料: Data on electricity from Bertani (2010) and on direct use from Lund et al. (2010).

    注: GWh/year = ギガワットアワー/年

    世界銀行は世界の経済を分類し、以下のグループに分けた。低所得国(LIC)、ロウワーミドル所得国(LMC)、アッパーミドル所得国(UMC)、そして高所得国(OECD加盟国および非加盟国)である。表3では、各グループ毎に地熱資源を有する国の数を示し、また発電や直接(暖房や冷房)に地熱利用をしている世界の上位16カ国とそれぞれ比較した。

    表2と表3を比較すると、地熱による発電が異なる経済カテゴリーの国々の間で比較的均一に分布していることは明らかに見てとれる。これは、地熱の直接利用の上位16カ国がOECDの高所得国14カ国に1アッパーミドル所得国(トルコ)と1低所得国(中国)であるのとは対照的であり、それどころか中国は直接利用のリストのトップである。

    表3:2010年に各経済カテゴリー内で地熱による発電と直接利用をしている国の数

    地熱利用をしている上位16カ国
    経済カテゴリー* 国の数 発電 直接利用
    OECD加盟 高所得国 29 5 14
    OECD非加盟 高所得国 3
    アッパーミドル所得国 22 4 1
    ロウアーミドル所得国 21 6
    低所得国 4 1 1

    *世界銀行の定義による。

    こうしたカテゴリー分類により、開発途上国の能力開発イニシアチブにおいてどの領域に多くの開発余地があるのかが示される。

    直接利用

    ここ10年ほど(地熱の)直接利用の中で主に伸びているのは、地中の熱源を利用したヒートポンプ(GHPs)だ。その理由のひとつには、地中熱ヒートポンプが世界のどこでも地下水や地中と連動する温度を利用した冷暖房ができるということがある。

    開発途上国にとってこの部門は、世界の多くの地域で最も潜在的な可能性を秘めた空間と温水暖房の開発としてエネルギー予算の重要な部分を占める(先進工業国では、主要エネルギー消費量全体の35から40パーセントが建物に使われている)。しかし、この部門の潜在的な可能性は、ほとんどまだ未開発である。中国を除く開発途上国の多くはまだ、GHPsに対してほとんど興味を示していないのが現状なのである。

    地熱の直接利用は、多くの開発途上国および開発の過渡期にある国々で、洗濯や入浴などの生活用水としての用途、温室栽培や魚の養殖など、人間の生活の質を向上させるために非常に重要なものである。加えて、地熱利用の可能な場所は往々にして観光業で相当な収入を得ている。地熱の直接利用は、冷暖房が必要な人口過密な地域では、化石燃料産業に取って代わることさえできるのだ。暖房と温水暖房は世界の多くの地域でエネルギー予算の大きな部分を占めているため、この潜在的な可能性は非常に大きいものなのである。

    先進工業国は、エネルギー計画において技術移転と資金援助の両面から、こうした地域のエネルギー目標の達成を支援することができる。あるフレキシブルな市場ベースのメカニズムにクリーン開発メカニズム  (CDM)がある。CDMにより開発途上国は排出削減クレジットを取得する機会を(持続可能なエネルギー計画を通して)得られ、このクレジットを先進工業国に売ることで、京都議定書で同意されている排出削減目標に貢献することになる。

    CDMにより開発途上国には、炭素クレジット市場に貢献しているものものひとつである地熱エネルギーなどの再生可能エネルギーが供給され得る。炭素による財源の可能性により、CDMのもとにいくつかの地熱プロジェクトを終結した。2012年1月時点で、二つの直接利用のプロジェクトの炭素クレジット収益の審査中である。その両方が地熱による直接的な暖房のプロジェクトで、中国と韓国が申請している(UNFCCC、2012年)。

    発電

    地熱地帯を有する国で発電に適しているのは、主に活動性のあるプレート境界もしくは活火山(表2参照)を有する地域に限られる。発電に適した地熱地帯を持つ開発途上国の多くは、主に高額な投資と資金不足からこうした潜在性を利用することができないでいる。利用できたとしても、同じ理由からごくわずかな量に過ぎない。

    図1では、自国の発電量全体のうち地熱が占める割合の多い上位14カ国を示している。地熱発電は、コスタリカ、エル・サルバドール、グアテマラ、ニカラグアでは国全体の発電量の12パーセントを占めており、今後さらに利用できる可能性がある。

    中央アメリカは、地熱エネルギーに適した豊富な手つかずの資源と、水力発電の開発と同様に地熱エネルギーに関する経験も持っているため、広い地域において全体的な温室効果ガス排出削減の国際的な見本となり、ミレニアム開発目標に取り組ませることになるかもしれない。また類似の開発は、アフリカ地溝帯や、その他の高温の地熱資源を豊富に有する国や地域でも見込まれている。

    多くの開発途上国で、地熱資源の開発によって地方の電力供給が賄われ、安全な飲料水が確保でき、学校や医療センターを整備することができるようになった例がある。こうしたプロジェクトはまたミレニアム開発目標の目指すものと一致している。

    図1:自国の発電量に地熱発電が占める割合の多い上位14カ国

    geothermal_countries

    注:国名横の数字は、2010年の年間地熱発電量(GWh)を示している。X軸の数字(グラフ下)は、各国の地熱発電が国内の発電量で占める割合を表している。それぞれの国からの国連大学地熱エネルギー利用技術研修プログラム(UNU-GTP)修了者の数はグラフバーの右側に示されている。

    気候と生活水準に連動

    温室効果ガス排出による地球温暖化は今日、人類が直面する主な懸念事項のひとつである。それは世界でも最貧困にある人々が、インフラ整備の不備や、備えの不足、適応対策の情報源の不足などにより、最もその影響を受けるだろうと言われる未解決の問題である。結果として化石燃料の使用を減らすことは不可欠で、地熱のように持続可能なエネルギー資源の使用が解決の鍵となるのだ。

    今日では、自国の再生可能なエネルギー資源の利用の可能性について真剣に考慮する国がますます増えてきている。例えば、EUの多くの国々や合衆国・カナダなどはすでに地熱の施設を導入している。

    しかし、経済的資源の限られている途上国にとっては、気候変動の影響に対するCO2の排出削減は最優先事項ではないのだ。そのため、先進工業国にとっては、このような分野で開発途上国を援助することで大きく貢献することは不可避になっている。

    再生可能なエネルギー資源の開発において、能力育成と技術移転は鍵になる。先進工業国や先進国の多くでは、再生可能エネルギーの直接利用および発電のために設備開発と運営に豊富な経験を持っている。その分野の新規参加者にも先進国の知識を共有することが重要だ。

    開発途上国における再生可能なエネルギー技術の分野での効果的な能力育成の一例として、国連大学のもとアイスランドで開発された革新的な地熱エネルギーのプロフェッショナルのための研修プログラムがある。

    強固な国際協力と先進工業国のサポートにより、地熱エネルギーは同時に気候変動との闘いと生活水準の向上をさせることにより、開発途上国がミレニアム開発目標を達成するのに大きな役割と担うことができる。地熱エネルギーサービスは、クリーンな資源から得られるため安全で、燃料価格の変動に左右されず、それでいて財政資源を増やしてくれるという、経済開発とミレニアム開発目標の実現をかなえるものなのだ。