学習を通じた変革

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  • 2015年11月2日

    ツィナイダ・ファデーヴァ

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    Photo: UN Photo/Kibae Park

    この記事は、国連大学の「17日間で17の目標」シリーズの1つであり、国連の持続可能な開発サミットに対して補足する形でのリサーチおよび論評を特集しています。

    目標4: すべての人々に包摂的かつ公平な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を推進する

    「2014年7月に……提案された持続可能な開発目標(SDGs)に教育に関する単独の目標が含まれることになった時、世界の教育界はこぞって安堵のため息をついた」。教育を人権として、また持続可能な開発の促進要因として位置付けるための闘いを振り返り、UN Chronicleはこのように述べています。教育に関する単独のSDGsが策定されたことは、競合する開発ニーズの間における教育の重要性を裏付けるものです。

    SDGsの目標4は、「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を推進する」ことを政府に求めます。この包括的な目標のもとに定められた具体的なターゲットは、教育界における数十年間の進展を反映しています。教育は、より良い生活を生み出し、健康を改善し、ジェンダー格差を削減し、生活のあらゆる領域におけるイノベーション(環境保護を促し自然資源の消費を削減する方法など)を促進する可能性を持つということが証明されたのです。

    万人のための教育の運動と、持続可能な開発のための教育の10年は、教育システムの全体的な変革に向けた行動を考案し、検証し、拡大する機会を国連加盟国や利害関係者に与えました。またこれらの運動は、持続可能な開発をめぐる課題に取り組むための補完的な戦略も提供しました。

    持続可能な開発のための教育(ESD)、環境教育、さらにはより最近の地球市民教育など、現在進められているイニシアチブは、直面する社会・経済・環境問題に対処できるよう、すべての学習者のエンパワーメントを図るものです。とくにESDは、複雑な課題や予想される妥協点に対処する学習者の能力、すなわち、パートナーシップを構築し、代替的見解を評価し、解決策を策定する能力の育成を目指します。

    現在の雇用市場では、「ソフトな」または「コンピテンシーベースの」資質が採用過程で見逃されがちです。雇用主は、自らの研究分野を極めた人は複雑な状況への対応策を編み出すことにも長けていると単純に思い込んでしまうのです。SDGsを達成するためには、これを変える必要があります。

    SDGsの目標4は、教育へのアクセスだけでなく、期待される成果についても扱っています。この目標は、すべての人々がどこでも人生のどの時期においてもアクセスできる教育を明確に目指しています。またこの目標は、学習成果の質にも、また「包摂的かつ公平」な方法でプロセスを実施する教育システムの能力にも、幅広く取り組みます。さらに、教育機関と教育者が持続可能な開発に向けた変化の主体となるよう、学習者のエンパワーメントを促すアプローチを実施することを、この目標は求めています。

    目標4は、すべての学習者の需要と願望を満たすことを目指しているという点で意欲的な目標です。しかし私たちは、この目標が「2030年までの尊厳への道」をともに目指す他のSDGsとの関連性の中に存在するものだということに留意しなければなりません。 SDGsは全体として、持続可能な開発の推進要因(グリーン経済、工業化、イノベーション)と、既存の課題(気候変動、貧困と栄養不良、生物多様性の損失)の緩和の両方を網羅しており、教育が提供すべきものは何かということを明示しています。

    目標4を持続可能な開発により強く結びつけるためには、学習成果やスキルを持続可能な開発にどのように合致させるか、開発途上国や後発開発途上国の奨学金の支給要件を持続可能な開発やグリーン経済とどのようにリンクさせるか、そして、開発途上国の有資格教員の訓練を強化しつつ、持続可能な開発の必要性に言及するにはどうすればいいかということを考える必要があります。

    基本的なサービスが提供されていない社会、あるいは人々が環境問題や社会問題に無関心な社会では、コミュニティについて学ぶことが、しばしば利害関係者を下から動かし、教育機関に対して行動を起こすよう働きかけることに繋がります。つまり教育は、普及しているプロセスに対して異議を申し立て、最終的にそのプロセスを変えるための主要な推進力となるのです。しかしこれは、教育が、人々、歴史、文化、社会的関係、そして彼らを取り巻く経済状況の現実と共振する場合にのみ可能となります。

    その一例が、2005年に設立された持続可能な開発のための教育に関する地域拠点(RCE)という世界的な動きです。 RCEは、公式および/または非公式の教育セクターと政府、企業、市民社会とを団結させる地域的なパートナーシップとして機能します。その目的は、地方の持続可能性の課題に対する実際的な解決策を考案し、個人や組織がそれを(個人的に、また協力して)実施できるようエンパワーメントを行うことです。変化に対して、また学習・研究プロジェクトや地域と世界の政策プロセスへの貢献を通じた共同関与の歴史に対して彼らが共有するコミットメントは、地方ごとに統合された学習システムが持続可能な開発に貢献するということを実証しています。

    今日の複雑で動きの速い世界においては、教育がもはや一方通行のプロセスでないということは明らかです。個人やコミュニティは、喫緊の問題に対処するために、互いに、また外部の知識保有者と関与しあわなければなりません。

    ESDなどのイニシアチブから得られた経験は、教育が変化を導くということを私たちに告げています。社会問題の解決策を探す時には、科学的で実用的なアプローチのみならず、これらの解決策がもたらす影響を評価することによって、(いわゆる権威の忠告に盲目的に従うのではなく)目の前の問題の歴史について熟考する必要があります。持続可能性に関する活動に人々、セクター、コミュニティを関与させるには、(外部の)アドバイスに頼り切るのではなく、疑問視することで起こる変化を通じて行った方が、より建設的なものとなります。意識的な学習、知識の習得、および共創が不可欠なのです。

    つまり教育は、目標4のみに限定されるものではなく、17の持続可能な開発目標のそれぞれを前進させる重要な要素なのです。