2030年までに貧困に終止符を打つことは可能か?

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  • 2015年10月28日

    リチャード・ブラーム

    The Global Goals

    この記事は、国連大学の「17日間で17の目標」シリーズの1つであり、国連の持続可能な開発サミットに対して補足する形でのリサーチおよび論評を特集しています。

    目標1: あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

    ミレニアムサミットから15年となる9月25日、世界の指導者たちは新しい一連の世界的な開発ターゲット「持続可能な開発目標(SDGs)」を 決めるため、再び一堂に会しました。

    SDGsの最も重要な目標である目標1は、2030年までに「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つこと」です。ミレニアム開発目標の、「2015年までに極度の貧困状態で暮らす人の割合を1990年の水準の半分にする」という目標は、期限より5年早い2010年に達成されたため、政策立案者たちは歴史的な機運を感じることでしょう。これまでの目標はあまりに低く設定され、新しい目標はあまりに意欲的すぎると、私たちは考えています。

    2030年までに極度の貧困に終止符を打つためには、これまでよりも高い経済成長とともに、(とくにサハラ以南のアフリカの)貧しい人々に偏って恩恵をもたらす成長の拡大が求められます。そこで一歩下がって、「極度の貧困とは何を意味するのか?」ということを問い直してみましょう。

    世界銀行によると、極度の貧困者とは、2005年購買力平価(PPP)換算の国際ドルで、1日1.25ドル(またはひと月約38ドル)未満で暮らす人のことです。このしきい値(基準値)が実はどれだけ低いのかを理解するためには、このPPP換算は非常に重要です。PPPは、各国の実質生活費の違いを調整するものです。1国際ドルは世界中のどの国でもおおよそ同じ生活水準となり、米国における1米ドルの購買力におおよそ匹敵します。

    ひと月38ドルでの生活を想像することができますか?ひと月60ドル(1日約2ドル)ではどうでしょうか?これは明らかに、生存するのに必要最低限のものを得ることさえできないレベルです。国連と(世界の貧困の追跡について責任を負う)世界銀行はどちらも、境界をこれほど低く設定したことについて批判されています。そうした批判に対する返答としてよく耳にするのは、このような形態の極度の貧困に最初に取り組む必要があるというものです。しかし、「貧困の終焉」を宣言できるかどうかは境界線をどこに引くかによって決まるということは明らかです。

    この20年間にわたって、1日1.25ドルの境界線に基づく貧困の削減は、少なくとも相対的には急速に進みました。開発途上国における極度の貧困率は、1年につき約1ポイント低下しました。1990年には、開発途上国における「貧しい」人々の割合は約43%でしたが、この割合は2010年までに約20%に減少しました。しかしこれらの数字には、2つの重要な落とし穴があります。

    1つめは、極度の貧困率の世界的な低下の大部分を中国とインドが占めているということです。2つめは、人口が急増したため、「貧困者の数」そのものの減少ははるかに小さいということです。現在世界には、まだ約10億人の極度の貧困者が存在するのです。

    中国とインドの前進を無視すると、残りの開発途上国では、1990年から2010年までの間に貧困から脱却した人の数はわずか1億5,000万人程度です。実際には、サハラ以南のアフリカの貧困者数は1990年から1億2,000万人「増えて」いるのです。

    それでは、貧困の終焉は近いのでしょうか?過去の傾向を単純に2030年に当てはめるならば、その可能性は「ほぼゼロ」といって差し支えないでしょう。同様に、開発途上国全体の1人当たりの消費が年間約4.5%増加すれば、 新たなターゲットは達成可能です

    しかしいくつかの理由により、そうなる見込みはほとんどありません。現在、世界の貧困の多くはサハラ以南のアフリカと南アジアに集中しています。2000年以降のサハラ以南のアフリカの消費は、1980年代や1990年代よりも急速に増加していますが、他の開発途上国に比べると依然として劣っています。開発途上国全体の1人当たりの消費は、2000年から2010年までの間に年間約4.5%増加しましたが、サハラ以南のアフリカでは、年間約2.4%しか増加していません(脆弱な国にますます貧困が集中したため)。現在のペースの貧困削減を続けるためには、一部の国々がかつてないほどの成長を達成する必要があります。しかしそうした国々は、これまで長期にわたって急速な成長を続けてこられたわけではなく、次の危機が訪れればその成長分は失われてしまいます。

    それでは、目標1に関してどのようなことが予測できるでしょうか。最近のUNU-MERITの報告書によると、非常に楽観的な成長予測のもとでも、2030年には開発途上国の人口の約8~9%が依然として貧困状態にあるということです。

    図1は、シミュレーションに基づく3つの成長シナリオです。黒い線は中心的な成長シナリオで、グレーの線は楽観的な成長シナリオと悲観的な成長シナリオです。点線は、分布変化の程度を表しています。どのシナリオでも貧困削減のペースが下がっていることがわかります。

    図1.成長と再分布のシナリオ

    (縦軸)1日1.25ドルの貧困率(%)

    (グラフの中、左から)測定値 予測値 線形傾向

    目標1には、ここで議論できること以外にもさまざまな側面があります。国連と国際社会は、貧困削減に関連して、社会的保護へのアクセスの拡大や経済的資源への平等なアクセスの確保など、多くのことを求めています。

    非常に意欲的な目標を設定するのは悪いことではありませんが、これらの目標を達成するためには開発努力をサハラ以南のアフリカに大々的に集中させる必要があるということに政策立案者が気づき、大きな幸運に恵まれるよう、私たちは願うばかりです。貧しい人々にとくに恩恵をもたらす力強い成長なくしては、アフリカ亜大陸に暮らす多くの人々が取り残されることになるでしょう。

    良い面を見れば、その他の開発途上国では極度の貧困が大幅に減少するでしょう。しかし15年後に、10億人以上の人が依然として1日2ドル未満で暮らしているのです。ですから、いかなる合理的な評価尺度で見ても、2030年に貧困に終止符を打つことはできませんが、それまでに飛躍的な前進を遂げる可能性はあるのです。

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    当記事は、UNU-MERIT のウェブサイトに掲載された記事を少し短く修正したものです。

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