2012年9月4日
この解説ではUNU-ISPの研究者、クリストファー・ホブソンが、2つの独立調査委員会により先日発表された2011年3月11日の福島原発危機に関する調査結果を検討し、東京電力(および日本の電力産業)が適切な教訓を学んだか否かということについて考察します。
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日本を襲った「三重災害」(地震、津波、原発危機)から1年半近くが経過したが、今もなおこの国は復興過程で直面する大きな課題に立ち向かおうと悪戦苦闘している。
最も困難な課題のいくつかは、歴史上2番目に深刻な原発事故の現場となった福島第一原子力発電所に起因している。事故によってこの地域の一部はおそらく今後何十年も人が住めない場所となるとみられており、何万人もの人々の将来の見通しが立たなくなっている。災害の大きさを考えると、発電所の所有者であり運営者である東京電力(TEPCO)の有責性に注目が集まるのは無理もないだろう。
先日調査結果を提出した2つの独立調査委員会は、事故のかなりの責任が東京電力にあるという点で意見が一致している。
2012年7月に国会に提出された「国会東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」の報告書(黒川レポート)は次のような結論を下している。
「3月11日より前に予防措置を講じる機会は何度もあったにもかかわらず、東京電力がこれらの措置を講じなかったために今回の事故は発生した……。彼らは意図的に安全対策の整備を先送りしたか、あるいは公共の安全のためではなく自己の組織に都合の良い判断を行ったのである。」
また、調査により、危機発生時(およびその後)の東京電力の行動が極めて不適切であったことも明らかになった。
「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」が政府に提出した報告書(畑村レポート)は、東京電力のお粗末な危機対応の原因となった一連の重要な欠陥を明らかにしている。
「この事故によって、組織的な危機管理能力の不足、緊急時対応において障害となる階層的な組織構造、シビアアクシデントを想定した教育と訓練の不十分さなど、数多くの問題が東京電力にあるということがわかった……。」
金融危機の発生に自ら加担したにもかかわらず危機後に救済を受けた銀行と同じく、東京電力も「破たんさせるにはあまりに大きすぎる」欠陥組織の新たな例となったようである。同社は総額1兆円(128億ドル)に及ぶ巨額の公的資金の注入を受けただけでなく、家庭向け電気料金を8.46パーセント値上げして国民にさらなる負担を強いようとしている。それでも、推定1,000億ドル超とされる今回の災害の総費用を賄うには程遠い。
福島そして日本に消えることのない傷を残した災害で中心的役割を果たしたにもかかわらず、東京電力がこの災害から十分に学んだということを示す証拠はほとんどない。東京電力の社内調査において巨大津波の「予測不可能性」が強調されているのも驚くに当たらない。