アフガニスタン後:国連平和維持活動に戻るか?

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  • 2014年2月26日

    ピーター・ナディン

    1993年初頭、多くの西側諸国(英国、フランス、ノルウェー、オランダ、カナダ、オーストラリアを含む)が積極的に国連平和維持活動に貢献し、ボスニア、ソマリア、カンボジアなど、数多くの地域に部隊を展開していた。だが、1993年10月のモガディシュの戦闘(一般にブラックホーク・ダウン事件として知られている戦闘)の後、西側諸国は平和維持活動から撤退した。国連安全保障理事会も長年にわたり、大規模な展開の許可を控えた。

    だが1990年代の終わりまでには、コソボおよび東ティモールにおける2つの意欲的な暫定政権樹立と多次元型の国連シエラレオネ派遣団(UNAMSIL)によって、国際社会の傾向は再び平和維持活動へと移行していった。コソボと東ティモールのいずれにおいても、西側諸国は国連の指揮下に部隊を置くことを選ばず、北大西洋条約コソボ治安維持部隊およびオーストラリアが率いる東ティモール国際軍のもとに置くことを決定した。シエラレオネ共和国の場合、パリサー作戦として知られる英国による一方的な「水平線越え(over-the-horizon)」ミッション(海岸線からの視程とレーダー射程を超えた位置から開始されたミッション)が、UNAMSILを支援するために実施されたが、それは公式ミッションの一環ではなかった。

    2001年以降、西側諸国の派遣軍はアフガニスタンとイラクの安定および暴動対策の活動に焦点をおいてきた。アフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)のミッションはまだ継続中だが、兵士数が削減され始めており、2014年末までに国際部隊の大部分はこの国から撤退することになっている。このような兵士削減の本格化に伴って、平和維持活動の関係者の多くは次のような疑問を投げかけ始めた。西側諸国の軍隊は国連平和維持活動に戻るだろうか?

    数多くの西側諸国が、栄誉ある平和維持活動の伝統を誇り続けている。たとえばオーストラリアは、2013~14年の国連安全保障理事会理事国への立候補に向けたパンフレットで、「東ティモール、ソロモン諸島、レバノン、スーダン、キプロス、大韓民国をはじめ、世界中の50を超える国連その他多国間の平和と安全のための活動に、65,000人の人材で寄与してきた」と述べた。このような勇ましい記述にもかかわらず、現時点でオーストラリアが国連平和維持活動のミッションに展開している人員は、合計64人である。オーストラリアだけではない。カナダが展開している人員はわずか153人、ドイツは254人、オランダは27人、英国は284人、米国は116人、デンマークは32人、スウェーデンは53人、ノルウェーは71人、ポルトガルは1人となっている。

    貢献には数だけが唯一の方法というわけではない。事実、一部の西側諸国は国連のミッションに専門分野で貢献している。またこれらの国の多くからは、高官がニューヨークの軍事部または国連平和維持活動の現地ミッションに出向している。アドリアン・フォスター少将(英国)、パトリック・カマート少将(オランダ)、ジャン・バイヨー少将(フランス)、マイケル・スミス少将(オーストラリア)はすべて、軍司令官、軍副司令官、または軍事顧問として奉仕し、功績をあげてきた。

    こうした「象徴的貢献」にもかかわらず、国連レバノン暫定軍を除けば、国連ミッションの複雑な状況下に置かれている西側諸国の部隊はほぼ皆無というのが事実である。1990年代半ば以降、西側諸国は短期間で活動範囲の限られた多国籍軍に自国の部隊を派遣する方法を選ぶようになった。欧州連合部隊(EUFOR)のアフリカへの派遣はとくに顕著であり(EUFORアルテミス、EUFORコンゴ民主共和国、EUFORチャド・中央アフリカ共和国)、とくにフランスは国連または地域のミッションと並行して部隊を派遣してきた[セルヴァル作戦(マリ)、リコルヌ作戦(コートジボワール)、サンガリス作戦(中央アフリカ共和国)]。西側諸国には数多くの選択肢があり、事実が示唆する通り、そのほとんどは軍隊の派遣に代替の方法を優先する傾向を強く示し続けている。

    国連平和維持活動にはなぜ西側諸国の軍隊が必要か?

    西側諸国が国連ミッションに軍隊と物資を展開するべき理由には以下の4つがある。第一に、国連平和維持活動は、国連を象徴するものでなければならない。国連は193の加盟国で構成された組織であり、加盟国のうちの119カ国は国連平和維持活動のミッションに少なくとも一人の制服要員を派遣して貢献している。現在、最も多くの要員で貢献している上位3カ国は、バングラデシュ、パキスタン、インドの東南アジア諸国である。これらの国は合計24,090人の要員(警察官および軍人)を派遣しており、その数は世界の国連平和維持部隊総数(98,311人)のほぼ30パーセントを占めている。さらに、上位10カ国(53,847人)はすべて開発途上国で、それらの国だけで全体の半数以上を派遣している。それに対して西側諸国から派遣されている要員は5,298人のみで、平和維持部隊総数の5パーセントにすぎない。

    第二に、西側諸国の軍隊の派遣により、西側政府に特定の活動に対する「直接的利害」が生まれる。それは、安全保障理事会で単純に「イエス」に投票したり、平和維持活動の予算を通して資金提供したりするより、重いものになる。

    第三に、象徴的意味合いが高まり平和維持活動を強化することで、政治的影響力がさらに大きいものになるだろう。ジャン=マリ・ゲエノ前国連平和維持活動担当事務次長は、 次のように述べている。「トラブルメーカーたちは(残念ながら、その数は非常に多いのだが)国連旗を見て、さらに国旗を見る。2つの旗の組み合わせこそが、最高の政治的メッセージを送ることになる。彼らが世界中の幅広い国々を代表するその組み合わせを見るとき、国際社会全体が気にかけているというメッセージが明確に伝わるので、われわれの政治的影響力が大幅に強まる。問題を追及しなければならないときに、それが必要になる。」

    第四に、西側諸国の軍隊は要望の高い戦力化実現要因(force enablers)と適した戦力(niche capabilities)を提供することができる。兵站支援(重航空機)、諜報、野戦病院、攻撃および多用途ヘリコプターなど、要望の高い戦力化実現要因の提供があれば、平和維持部隊は機動性を高めると同時に、抑止力も拡大することができる。

    平和維持活動に戻ることを支持する議論は、西側諸国が国連平和維持活動を支配することを支持する議論ではない。それでは、一部の国の新植民地主義への願望を行動に移すことを許してしまう可能性がある。そうではなく、国連平和維持活動はバランスのとれた、より幅広い加盟国を象徴する活動であるべきである。

    西側諸国にとっての利点は何か?

    部隊、物資、最適能力の提供は、西側諸国の軍隊にも恩恵をもたらす。第一に、アフガニスタン後、ほとんどの西側諸国の軍隊にとって海外での活動機会は限られたものになる。各国は平和維持活動を通して、重要な海外での活動経験を得られる。兵士、論理学者、専門家がそのスキルを複雑なミッションの状況に適用する機会を得る一方で、国連は高度な訓練を受けた要員の恩恵を受けることができる。

    第二に、世界的な金融危機とその後の西側諸国政府による緊縮傾向で、国防軍は厳しい予算不足に直面するようになった。現在の状況では、国防のトップは今後の資金調達を確実なものとするために、派遣を平和維持活動の一環と考えることを余儀なくされる可能性がある—「使うか失うか」の予算の例である。

    国際治安支援部隊(ISAF)の部隊の顔ぶれは毎日変わる可能性はあるものの、最新のISAF Key Facts and Figures(ISAFの主要な情報:2013年12月1日付)では、カナダ(620)、ドイツ(3,084)、イタリア(2,822)、オーストラリア(1,043)、英国(7,953)を含む84,271人の部隊が報告されている。国連関係者の多くは、少なくともISAFの部隊と戦力の一部が平和維持活動に移行されることを願っている。この移行が実現しないことがあっても、他の選択肢が残されている。ポール・ウィリアムズ氏とアレックス・ベラミ―氏が、編集を担当した Providing Peacekeepers(平和維持部隊の提供)」の結論で示唆したように、西側諸国の政府は有益なパートナーシップを通して、まだきわめて重要な役割を果たすことができる。

    全体として、国連平和維持活動と西側諸国政府は、互いの利益になる合意に参加することが推奨される。それによって国際的平和と安全の要求に応えるとともに、国連は世界中の15のミッションにおける平和維持の課題に取り組み続けることができる。