ジンバブエ共和国のモーガン・ツァンギライ首相、民主化について語る

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  • 2012年7月25日     東京

    Morgan Tsvangirai, Prime Minister of Zimbabwe. 写真: C. Christophersen/UNU

    モーガン・ツァンギライ ジンバブエ共和国首相、写真: C. Christophersen/国連大学

    7月20日(金)、国連大学本部にて、ジンバブエ共和国のモーガン・ツァンギライ首相が公開講演を行いました。講演ではアフリカ大陸における民主化プロセスが取りあげられ、国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)のシニア・アカデミック・プログラム・オフィサー、オビジオフォー・アギナム氏が司会進行を務めました。講演には学者、外交官、一般人など多方面から数多くの出席者が参加しました。

    講演の冒頭で首相は、忍耐のいる厳しい政治情勢を直接体験した指導者としての独自の視点から、民主化に向けたアフリカの葛藤の歴史について語りました。欧州列強による植民地時代を振り返り、民族主義運動によって平等と自由の普遍的な基準を求めた戦いが始まった過程について述べ、その結果アフリカ各地へ次々と広がっていった独立の波について触れました。

    続けて、アフリカにおける新政府の中には植民地時代の欧州列強と何ら変わらず「不処罰、腐敗、抑圧」の文化を受け継いでいる国があると指摘して嘆き、植民地時代の民族主義運動の世代が戦ったように、現在、抑圧を強行する政治指導者に対して民主主義を求めた同じような戦いが繰り広げられていると述べました。その結果、アフリカ大陸は多様性の受け入れや異なった意見に対する寛容さを求めて闘わなければならない大陸、人々の基本的権利や自由をないがしろにするのではなく強化するような政治機関の設立に苦悶する大陸となってしまいました。

    首相はまた、多くのアフリカのリーダーは「民主主義や望ましい統治を高らかに求める国民の声に耳を閉ざしている」と指摘し、この状況がアラブの春を引き起こした状況と同様の土壌を醸成しうると警告を鳴らしました。そのような状況を避けるため、首相はアフリカの政治指導者たちがアラブの革命から学ぶべき4つの教訓をあげました。それは(1)国民を大切にする、(2)自分が話すよりも相手の話に耳を傾ける、(3)最良の状態(絶頂期)で退く、そして(4)つねに人々の意思を尊重する、です。

    課題となるのは、アフリカの新しい世代の政治指導者が「抑圧や間違った統治方法をお払い箱にし」、新しい価値を備えた社会を形成していくことです。首相は、その建設的な例として、ルワンダの経済復興、南アフリカやナイジェリアの「目覚ましい」経済発展、南スーダンの新政府誕生に伴う新たな希望、セネガルからザンビアに至るまで複数国における平和的な政権交代をあげました。しかし一方で、今後も支援が必要であると忠告し、ジンバブエにおける自由で公正な選挙への要求を支援するべきだと主張しました。

    講演後、聴講者との質疑応答が行われました。ジンバブエと中国や北朝鮮との関係、セクシュアリティに関する問題、土地改革に関する民主変革運動の見解など、その内容は多岐にわたりました。その中で首相は、透明性と非暴力が引き続き重要であることを強調し、各国の将来の政治指導者や国民が継続して民主化プロセスを改善していくことを強く要請しました。

    講演会は、アギナム氏による「政治指導者や政治家、政策立案者に一様に挑戦を投げかける」数々の質問を行った聴講者への感謝の言葉をもって閉会となりました。