2012年7月3日 Rio de Janeiro
経済成長の偏重は、将来の世代に深刻な被害をもたらす、資源枯渇への急速かつほぼ不可逆な流れを無視しています。この見解は、このたび発行された報告書によるもので、この中では持続可能性を推進することを目的とした新たな指標が導入されています。
2012年6月17日、国連持続可能な開発会議(リオ+20サミット)において地球環境変化の人間・社会的側面に関する国際研究計画(IHDP)は複数のパートナーと共同で「Inclusive Wealth Report 2012(IWR: 包括的な 豊かさに関する報告書)」を発表しました。
「Inclusive Wealth Report 2012(IWR: 包括的な 豊かさに関する報告書)」では、新たな経済指標である、Inclusive Wealth Index(IWI: 包括的な豊かさの指標)が採用されています。この指標は、国民総生産(GDP)や人間開発指数(HDI)などの従来の短期的な経済発展を基準とせず、長期的な人工資本、人的資本、自然資本を含めた、一国の生産基盤の変動を評価します。全体性を高めたアプローチをとることで、IWIは各国の豊かさと成長の持続可能性に関する実態を、各国政府に提示します。
IWIは20カ国を19年間(1990~2008年)に及ぶ期間について評価しています。評価対象の国を合計すると人口は世界総人口の半数を超え、GDPは世界のGDPのほぼ4分の3に相当します。
評価によれば、GDPは成長しているものの、ブラジル、中国、南アフリカ、米国では、各国の自然資本の基盤(化石燃料、森林、水産資源など再生可能資源と非再生可能資源を組み合わせたもの)が激減しています。評価対象期間中に、人口当たりの天然資源は南アフリカでは33%、ブラジルでは25%、米国では20%、中国では17%減少しています。
経済的生産についての最も一般的な指標であるGDPに関しては、中国、米国、ブラジル、南アメリカの経済は1990年から2008年の間にそれぞれ422%、37%、31%、24%の成長を遂げています。しかし各国のパフォーマンスをIWIで評価すると、中国、ブラジル、米国の経済はそれぞれ45%、18%、13%の成長にとどまり、南アメリカに至っては、1%減少しているのが実態です。
「Inclusive Wealth Report 2012(IWR: 包括的な 豊かさに関する報告書)」は、各国の幸福度(well-being)と持続可能性をモニターするため、今後隔年での発行が予定されている報告書シリーズの第1回目にあたります。本報告書はIHDP(ドイツ、ボンに事務局を置き、国連大学が主催)と国連環境プログラム(UNEP)の共同イニシアティブであり、国連水の10年・能力育成プログラム(UNW-DPC)と自然資本プロジェクトと連携しています。
本報告書についての詳しい情報は、プレスキット(英語)をダウンロードされるか、IHDPウェブサイトのお知らせ(英語)をご覧ください。