沖上級副学長、気候変動対策における科学技術の役割について、基調講演で語る

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  • 2020年11月24日

    国連大学の沖大幹上級副学長は10月26日、奈良先端科学技術大学主催のシンポジウム「人生100年時代のサイエンス」で基調講演を行いました。

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による経済活動の停滞で、2020年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量が前年比7~8%減少したと紹介し、国際エネルギー機関(IEA)によるとこの数字は2009年のリーマンショック後の減少の6倍以上であると述べました。

    2015年に第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることを目標としています。そのためには、今から毎年温室効果ガスの排出を7%から8%削減し、2050年には実質ゼロにする必要があります。

    しかし、COVID-19下で起きたように人やモノの移動を中断し、運送業や観光業に影響を与えるかたちで削減するのは持続可能ではないと沖上級副学長は指摘しました。

    「移動したり電気を使ったりしても温室効果ガスの排出が格段に少ない電力システムをつくっていかないと、パリ協定の目標は達成できません。今の私たちの快適な生活を維持しつつ地球を守るためには、科学技術が欠かせません」と述べました。

    沖上級副学長はさらに、COVID-19の感染拡大により世界中の経済活動および社会生活が大きく揺るがされる中、国連が2015年に採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその中核を成す17の持続可能な開発目標(SDGs)の達成が瀬戸際にあると指摘。グリーンニューディール(環境・エネルギー分野に集中的に投資し、新たな雇用や経済再生を生み出す政策)のような大規模な投資や、開発途上国におけるICT(情報通信技術)の向上の必要性について言及しました。

    「新たな日常に適応し、社会の仕組みを変えてこそ持続可能になれると思います。そして、自分の国だけがよければいいということではなく、世界全体が強靭になる必要があります」

    シンポジウムの後半では、聖徳宗総本山法隆寺の古谷正覚師、株式会社カネカの佐藤俊輔氏、奈良先端科学技術大学の高木博史教授および網代広治教授が加わり、パネルディスカッションが行われ、科学技術の役割やそれをどう発達させるかついて幅広く議論されました。