国連大学、現代の外交についてのパネルディスカッションを開催

, ,

News
  • 2013年5月7日     東京

    以下に述べるパネルディスカッション開催後に収録されたビデオ(英語のみ)では、デイビッド・マローン国連大学学長、ホルヘ・エイネ博士ならびに沼田貞昭博士が現代の外交の形における挑戦と機会に関する考えを繰り返し述べています。

    • • •

    外交は終焉を迎えているのでしょうか。2013年5月2日(木)、デイビッド・マローン国連大学学長は、ホルへ・エイネ博士(バルシリー・スクール・オブ・インターナショナル・アフェアーズ(在オンタリオ州ウォータールー)のCIGI教授)と沼田貞昭博士(元駐パキスタンおよび駐カナダ特命全権大使)を迎え、多数の日本の外交官代表者を含む聴衆を前に、この問題をはじめとした重要な問題について議論を行いました。

    Oxford Handbook of Modern Diplomacy(現代の外交についてのオックスフォード・ハンドブック)(アンドリュー・クーパー氏、ラメシュ・タクール元国連大学上級副学長、パネリストのホルへ・エイネ氏の共著)の出版に伴い、国際関係の学者らは新たにすぐれた手引書を得ることになり、イベントのパネリストと聴衆は、今日の外交における喫緊の問題を議論するまたとない機会を持つことになりました。

    パネリストらは、本イベントの挑発的な表題(The End of Diplomacy?(外交の終焉?))は、ある種の外交が終焉を迎えつつある可能性を強調していると述べました。マローン学長は、今日の外交は30年前よりも「はるかに多様化」しているからこそ良いのだと主張しました。限られた人だけで行われる紳士クラブのような外交の時代は過去のものとなり、その日、聴衆として訪れていた各国大使の中には若い人や女性が見られるなど、その顔ぶれはまさに今日の外交関係者の多様化を物語るものでした。同様に、経済問題は二の次で、若手職員が担当していたというような時代も終わりました。今や経済以上に重視される問題はほとんどなく、現代の外交官は縮小の一途をたどる経済的資源と自らの全責務とのバランスを取らなければならなりません。

    エイネ博士は、検討するべき問題の中心は、外交が閉鎖的な「クラブ」型からオープンな「ネットワーク」型の外交に移行しているかどうかであると述べ、この見解は活発な議論を巻き起こしました。沼田大使は、日本は当初、G-20のような大規模なネットワークの構築についていかに懐疑的であったかを強調しました。しかし、統一見解を持つグループを構築するというこのやり方が普及したため、日本がネットワーク型の外交を保つことに利点があると主張しました。

    Jorge Heine

    ホルへ・エイネ博士 Photo: C Christophersen/UNU

    沼田大使は日本外交団のある同僚の話に触れ、かつてその同僚が、大使の役割というのは庭師が草花に水やりを欠かさないのと同じように、関係性に気を配ることなのだと話していたことを紹介しました。沼田大使はまた、外交では利害関係者が多数存在するため、外交官はつねにプレッシャーの下にあり、効果的かつ明確に意思疎通を図る能力が極めて重要であると論じました。

    マローン学長は、外交の形も多様であるが、その目的も国によってさまざまであると主張しました。各国政府は協力と費用分担について戦略的な選択を行い、ハードパワーとソフトパワーのバランスを見極める必要があります。これらすべての側面は流動的ですが、一呼吸おいて耳を傾けることが重要な目的に違いありません。「外交官は好奇心を持ち、他者を理解することに関心を持たなければなりません」とマローン学長は述べました。

    本国にいる会計担当と現場の外交官の間でバランスを取るのは難しいことに疑いはないものの、エイネ博士は、世界経済の流れが加速したことにより外交官の任務がいっそう重要なものになったことに対し、各国の外務省はこのことを十分に理解できていないという見解を主張しました。同じようにマローン学長は、とくに今日のような困難な時代には、政治家は他国の政治家と関わるより、国内の有権者との対話に時間を割いていると強調しました。

    沼田大使は、問題の一部には、開かれた外交は、即座に満足のいく成果を上げられるものでも、政治家にとって支援を決定しやすい定量化できる結果をもたらすものでもないと述べました。今や外交は、以前に比べさまざまな関係者を巻き込んでおり、中央銀行をはじめとした金融機関が互いに議論を交わし、新興諸国がこれまでにない存在感を見せ始めています。マローン学長は、先進国は外交の場において、大きくなりつつある新興国の存在にまだ十分に対応していないと指摘しました。同じ文脈で、沼田大使は、好奇心とともに、文化および科学資本のようなソフトパワーの強みを正真正銘のソフトパワーに変換させることが重要であると改めて強調しました。

    パネルディスカッションは活発な議論から質疑応答に移りました。G20のような大規模なネットワークへの動きが、単に「クラブ」が拡大したものなのか、それとも真の「ネットワーク」を示しているのかという問題に対して、エイネ博士は、どちらの型も機能しているが、二国間レベルにおいてはネットワーク型の外交が主要なものになってきたと主張しました。マローン学長は、古い欧州中心または欧米の方法論はもはや全く機能していないと述べました。

    同様に、現代のような24時間365日休むことのないグローバルなマスコミ報道の時代において、外交官には一番にかつ迅速に動くこと以外に選択の余地がないことを沼田大使は指摘しました。おそらく外交官らは、大使館の外電よりも早く、外交の領域の外で情報を得る立場に身を置いていると思われますが、最善を尽くし、できるだけ迅速に問題に取り組むことを恐れてはなりません。入手した情報を活用し、誤りがある場合は誠実に対応し、そして何よりも意思疎通を図ることが重要です。

    好奇心、コミュニケーション、そして今日の外交的状況を的確に捉えることが成功の鍵であるとパネリスト全員が強調しました。