国連大学が女性・平和・安全保障(WPS)に関するシンポジウムを共催

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  • 2025年3月3日     東京

    3月3日に行われたWPSイベントに登壇するバトツェツェグ・バトムンフ モンゴル外務大臣。
    写真:国連大学/ Daniel Powell

    2025年3月3日、国連大学は駐日モンゴル国大使館とともに、シンポジウム「女性・平和・安全保障(WPS):モンゴルにおけるフェミニスト外交政策」を共催しました。

    イベント冒頭、チリツィ・マルワラ国連大学学長(国連事務次長)は、フェミニスト志向の外交政策が「根本的には国際関係に対する伝統的なアプローチを見直すことである」と指摘し、次のように述べました。「こうした政策は、ジェンダーの平等、包摂性、人権を優先し、女性による意思決定プロセスへの完全な参加を妨げる制度的障壁を取り払おうとするものです。フェミニズムの原則を外交政策に取り入れることで、各国は国内においても国際的にも、より公平で公正な社会を作ることができます。」

    3月3日に行われたWPSイベントに登壇するチリツィ・マルワラ国連大学学長。
    写真:国連大学/ Daniel Powell

    さらに、次のように強調しました。「ジェンダー平等を他の開発課題から切り離すことは、もはや許されません。私たちが女性、平和、安全保障(WPS)のアジェンダを支援するために活動することで、アプローチを転換し、ジェンダー平等を単一の目標以上のものとして捉えるまたとない機会が得られます。ジェンダーの平等は人権を守る上での必須条件であり、したがって、ガバナンスとリーダーシップにおける目標であり、かつ指針でなければなりません」

    続けて、生稲晃子 外務大臣政務官は日本のWPSアジェンダに対するコミットメントについて触れ、先日国連大学で開催されたノルウェーと日本政府共催の「女性・平和・安全保障(WPS)フォーカルポイントネットワーク会合」といった取り組みを取り上げました。生稲政務官はまた、日本がWPSアジェンダ支援の一環として、2011年の東日本大震災から学んだ重要な教訓を生かし、災害リスク削減への女性の参画を強化している点についても言及しました。

    3月3日に行われたWPSイベントに登壇する生稲晃子 外務大臣政務官。写真:国連大学/ Daniel Powell

    メルバ・プリーア駐日メキシコ大使も冒頭で挨拶し、女性の在日大使で構成されるグループによる重要な活動を紹介しました。30人近い大使等で構成される同グループは、WPSやジェンダー平等をめぐる問題について、国会議員、地方自治体、市民社会、報道関係者らと対話を重ねるとともに、日本の女性たちのメンターを務め、リーダーシップスキルの向上を支援しています。

    シンポジウムでは、モンゴルのバトツェツェグ・バトムンフ外務大臣が基調講演を行い、モンゴルが国内外でジェンダー平等を擁護してきた長い歴史を振り返りました。

    外相は、モンゴル人女性が全大学生の62%を占めていることや、現在のモンゴル国会の議席のうち、25%を女性が占めていることなど、モンゴル国内の主要な成果について強調しました。しかし、数字だけでは平等は生まれないとの認識も示し、次のように述べました。 「モンゴルは、単に数を増やすだけでなく、女性のリーダーシップが例外的なものではなく、期待されるようになる文化を育てることに尽力しています。」 バトツェツェグ外相はまた、2023年にアジアで初のフェミニスト外交政策に関する会議の開催や、2024年の世界女性フォーラムの開催など、国際舞台でのモンゴルの活動について紹介しました。

    外相は、講演の結びに次のように行動を呼びかけました。「私たちは単に変化について語るだけではなく、変化の立役者になりましょう。次世代の女性リーダーが、意思決定の場に参加するために戦わなくて済むようにしましょう。女性リーダーを念頭に置きながら意思決定の場を作っていくのです」

    基調講演の後、モンゴル外務省のグンテヴスレン・ビャンバスレン政策局長の司会でパネルディスカッションが行われました。パネリストとして、メルバ・プリーア大使、松川るい参議院議員、石井苗子 参議院議員、山口しのぶ国連大学サステイナビリティ高等研究所所長が登壇しました。

     3月3日に行われたWPSイベントにおけるパネルディスカッションの様子。左からメルバ・プリーア駐日メキシコ大使、松川るい参議院議員、石井苗子参議院議員、山口しのぶUNU-IAS所長。写真:国連大学/ Daniel Powell

    パネリストたちは活発なディスカッションを展開し、世界のジェンダー問題の現状から、災害復興における女性リーダーの必要性や、危機の際の教育におけるジェンダーの不均衡に至るまで、オープンで洞察に満ちた意見交換を行いました。

    プリーア大使は、紛争と平和の両方の局面において、女性の権利が侵害され続け、ジェンダーの不平等が続いていることについて語りました。プリーア大使は、1975年にメキシコで開催された第1 回世界女性大会や、最近の取り組みとして2024年にメキシコが主催した第3回フェミニスト外交政策サミットに焦点を当て、女性のエンパワーメントに対するメキシコのコミットメントを紹介しました。

    3月3日に行われたWPSイベントのパネルディスカッションで発言するメルバ・プリーア駐日メキシコ大使。写真:国連大学/ Daniel Powell

    松川議員は、外務省の女性参画推進室の初代室長として国際女性会議(WAW!)の設立を主導した経験を紹介しました。WAW!は、女性のエンパワーメントを含むさまざまな女性問題を議論する場として創設、年次開催され、その後ネットワークへと発展しました。

    石井議員は、東日本大震災の復興期に看護師として支援活動を行った経験を紹介し、災害復興において女性が直面する特有の課題について語り、より多くの女性が日本の保健医療サービスをリードする必要性を強調しました。

    山口所長は、気候変動の影響による移住を例に挙げながら避難生活における教育の継続における男女格差について取り上げ、避難生活中に女性が受講する授業数が男性よりもはるかに少ないという国連大学の研究事例を紹介しました。

    パネルディスカッションの後、会場との質疑応答が行われ、モンゴルの外交政策、危機管理における女性の役割、地域協力、政治や平和構築への女性の参画を促す方法などについて触れられました。

    イベント後、ネットワーキング・レセプションが開催され、モンゴル伝統楽器の馬頭琴の演奏も催されました。写真:国連大学/ Daniel Powell

    イベントの結びとして、山口所長が閉会の辞を述べました。山口所長は、ジェンダー平等は基本的人権であるだけでなく、平和で持続可能な社会の前提条件であることを強調しました。また、このままでは2030年までに持続可能な開発目標5(ジェンダーの平等)を世界が達成することは困難であるという実態を指摘し、この傾向を逆転させるためにアントニオ・グテーレス国連事務総長が挙げた5つの優先事項(女性へのさらなる投資、貧困の撲滅、ジェンダーに対応した融資の実施、グリーン経済とケア社会への移行、フェミニストの変革者の支援)を紹介しました。