潘基文国連事務総長と安倍首相が国連の新しい方向を議論

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  • 2015年3月31日     東京

    Secretary-General Ban Ki-moon

    All photos: C Christophersen/UNU

    2015年3月16日、国連大学は外務省と協力して国連創設70周年を記念するシンポジウム「岐路に立つ国連:改革と刷新の年に向けて」を開催し、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長と安倍晋三首相が出席しました。

    世界中で数々のサミットが開催される1年を迎えるにあたり、国連はほぼすべての活動領域について政策と実務の見直しを進めています。このイベントでは、平和と安全、開発、人道支援といった分野において急速な進化を遂げる一連の課題に対応するために必要となる組織改革および新たな政策イニシアチブを取り上げました。

    事務総長はそのスピーチの中で、今年の活動が潜在能力を十分に生かすものとなるよう、加盟国は統一行動をとる必要があると強い口調で訴えました。2015年に開催される主なサミットの中で事務総長が強調したのは、ポスト2015年開発アジェンダの採択に向けた国連サミット、第3回開発資金国際会議、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(この会議ではようやく全世界に拘束力をもつ気候条約が合意に至るものと期待されています)、そして先ごろ仙台で開催された国連防災世界会議です。

    事務総長は、世界各国の調停者および話し合いの場としての国連の必要性は今後も変わらないことを指摘するとともに、大きく変わりつつある世界の安全保障をめぐる環境への妥当性と有効性を維持するために、組織の改革と補強が必要であると強調しました。また、ジェンダーの平等と若者のエンパワーメントの優先課題を取り上げ、始まったばかりの「人権を最優先に」イニシアチブを紹介しました。このイニシアチブは、人権や人道法の違反に対して早期に警告できる機構を確立していくものです。事務総長はさらに、国連の活動に対する日本の支援に感謝の言葉を述べ、日本と近隣諸国との真の協調への期待を表明しました。

    Prime Minister Abe

    事務総長のスピーチの後、安倍首相は日本が今後も国連に対して大きく貢献する責任を負うことを明言し、日本がイニシアチブを発揮するさまざまな重点領域をあげました。それらの領域には、人間の安全保障という考え方の推進やアジア太平洋地域および世界における開発の促進などがあり、とくに保健と教育に重点を置く考えを示しました。また、人口高齢化に関する日本の対策と、インクルーシブ(包摂的)でレジリエント(強靭)な「プラチナ・ソサエティ」を構築する必要性にも言及しました。

    安倍首相は事務総長に賛同し、国連が直面しているグローバルな課題に立ち向かうための真の国際協調を呼びかけるとともに、国連は今後もグローバルな課題に対応できるように(安全保障理事会の改革を含めた)継続的な改革を必要としていると述べました。この点について、日本は安全保障理事会の常任理事国の役目を引き受ける用意があることも表明しています。

    スピーチの後にパネルディスカッションが開かれ、国連大学政策研究センターのセバスティアン・フォン・アインジーデル所長をモデレーターとして、以下の著名人がパネリストとして参加しました。中山泰秀外務副大臣、マラウイ共和国のジョージ・タパトゥラ・チャポンダ外務・国際協力大臣、国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長、国連人口基金(UNFPA)のババトゥンデ・オショティメイン事務局長、大阪大学の星野俊也副学長。Panel Discussion

    パネルディスカッションでは、増える一方の環境および安全保障の課題に対応し、前途有望な本年の活動で機会を逸することがないよう、国連を「目的にかなった」組織にする方法についての洞察が寄せられました。参加者たちは、正式な開発支援と人道支援の状況および役割の変化について討議し、国連の平和維持構造にどのような改革が可能かを探り、現在の国際的な現実および国家と非国家主体との間で変化を続ける権力の力学を反映して安全保障理事会を改革する必要があることに同意しました。

    発言した全員が、インクルーシブネス(包摂性)と平等をはじめ、レジリエンス(強靭性)を備えるための適切な戦略や、平和なグローバル社会の構築を支援することの重要性を強調しました。討論では、ジェンダー問題と開発成果の測定にも触れました。この点について参加者たちは、各地域と国際的な取り組みを動員し、指揮し、調整するうえで、ミレニアム開発目標(MDGs)や今後の持続可能な開発目標(SDGs)のような世界的な枠組みの有用性を支持しました。