「SDGs & Me」イベント開催

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  • 2019年10月23日

    エシカルブランド「スルシィ」の関谷里美氏、国連大学前SDGsイベントにて (Photo: ITO/UNU)

    2015年9月に国連のサミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、「貧困や飢餓をなくす」「ジェンダー平等を実現する」「海や陸の豊かさを守る」など、どれも一見とても大きな目標です。そこで、国や組織だけでなく個人としてどのように関わることができるのかを知り、SDGsをより身近に感じてもらうために、オンラインメディアMashing Up が主催(後援:国連大学)したイベント「みんなとわたしにちょっといいもの。街角のソーシャルグッド展 – SDGs &Me 」が9月21日・22日に、青山ファーマーズマーケット内で行われました。

    週末多くの人で賑わう、国連大学前で開催されるファーマーズマーケット。この日、ところ狭しと並ぶ有機野菜や果物の先では、色鮮やかなアフリカンプリントのバッグやベトナムの貧困地区で育った女性たちが製作したジュエリー、グアテマラのマヤ女性たちによって作られた手織物と刺繍などが並びました。

    その中央に商品を並べていたのがスルシィ(Sulci)というかごバッグのブランド。フィリピン・セブ島の女性たちがラフィア糸という天然素材を使って、バッグや帽子、コサージュ、人形などを一つ一つ編んで作っています。

    スルシィ とは古いビサヤ語でハンドメイドを意味すると説明するのは、発案から起業まですべてを一人で手がけた代表取締役の関谷里美氏。たまたま10年前に旅行で訪れたセブ島で、手作りのお土産があまりにも安い値段で売られていたことで作り手の女性たちの待遇が心配になったのがきっかけでした。

    美術系大学出身の関谷氏は、現地に通い詰め、約2年かけて30名ほどの女性たちに自ら編み方を教え込み、2012年に正式にスルシィ を立ち上げました。近年では、服役中の女性にもトレーニングを行い、出所後の就職先としても受け入れています。

    「フィリピンでは、女性が働きたくても本当に仕事がないのです。高校を出ても仕事がなく、大学を卒業しても限られています。そこで、女性の雇用創出になるかもしれないと思って始めました」

    こうした取り組みは、規模は小さくても、SDGsの目標1である「貧困をなくそう」、目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」、そして目標8の「働きがいも経済成長も」といった複数の目標につながるものです。またその商品を購入する人が増えたり、その問題について調べてもらったり、「SDG&Me」の輪がさらに広がっていくことにもつながります。

    屋内の会場では2日間にわたり、段ボールを再利用した名刺入れづくり、オーガニック米からできたエタノールを使ったアロマスプレーづくりなど、参加型のワークショップも開催されました。

    初日の9月21日には、フードロス 削減事業「ロスゼロ」プロジェクトを立ち上げた文美月氏と農林水産省の職員であり「霞ヶ関ばたけ」という勉強会を運営する松尾真奈氏による、世界と日本のフードロス の現状について学ぶ企画を開催。

    文氏は昨年、アメリカのサンフランシスコでFood RunnersというNPOを視察。Googleなどの企業と提携し、社員用の余った食品をボランティアが回収し、ホームレスのシェルターや慈善団体に届けている様子を紹介しました。

    「アメリカは大量生産、大量消費、大量廃棄。でもその分ドギーバッグという持ち帰りの文化があります。また、寄付文化が根付いていて、(市民が)社会を支えるという気持ちにもなっています」

    国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界では年間13億トンもの食品が捨てられています。

    一方で農林水産省の推計によると、日本では2016年度、まだ食べられるのに捨てられるいわゆるフードロスが643万トンありました。これは、国民一人当たりが毎日お茶碗一杯分(約136g)の食べ物を捨てていることになります。さらに、このうち45%は家庭から出ているのです。

    トークイベントでは、すぐにできる対策として、買い物前の冷蔵庫チェックや賞味期限と消費期限の違いの正しい理解、外食先での食べ残しの出ない注文量、飲み会では食べる時間を設ける、などが挙げられました。

    農林水産省の松尾氏は次のように述べています。「食品ロスの問題に対しては、明日からできることがいろいろあります。生産、流通、加工などそれぞれの段階で努力できることもありますが、(消費者)一人一人の力も大きいので、ぜひ今日から、明日から、取り組んでいただけることがあればと思います」

    自然環境や労働環境に配慮した商品を購入する、食品廃棄に気をつける、ジェンダーや貧困など興味があるトピックについて調べてみるなど、私たち一人一人が今日からできることはたくさんあります。SDGsの各目標の詳細と、国連大学の取り組みもぜひご覧ください:国連大学と知るSDGs ー Sustainable Development Explorer