緒方貞子氏との対談「国家の安全保障から人間の安全保障へ」

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  • 2015年3月20日     東京

    Sadako Ogata

    Photo: C Christophersen/UNU

    国連大学は2015年2月27日、独立行政法人国際協力機構(JICA)の元理事長で、元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏をお招きして、国連大学対談シリーズ「State Security to Human Security(国家の安全保障から人間の安全保障へ)」を開催しました。

    デイビッド・マローン国連大学学長と緒方貞子氏は、外交官、管理者、学者としての緒方氏の積年の経験を織り交ぜながら、幅広い議論を行いました。同氏の職業人として、また個人としての長い経験が対談に深みを与えました。

    イベントの中で、緒方氏は国連でキャリアを積んだ時期のエピソードとして、職業生活の初期、個人としての役割と職業上の役割のバランスを取ろうと苦労したことなどを話してくれました。そして、参加者に「野心を持ってください、でも現実的であることも忘れないでください」と語りかけ、人生の課題を楽しむよう勧めました。マローン学長はこの言葉に共感し、人は野心的になればなるほど、ぶつかる困難が多くなるだろうと述べました。

    対談では日本の難民政策が何度もテーマに上がり、緒方氏は長年の経験に基づき、日本による人道的受け入れの拡大を訴えました。法律的、政治的優先事項を慎重に考慮する必要があるとしながらも、日本政府にはこの分野で国際的なパートナーから経験と安心を学んでほしいと主張しました。

    また、緒方氏は参加者に、地域で他者との個人的なつながりを育み、そうしたつながりを利用して、日本と近隣諸国との関係を強化することを熱心に説きました。政府と個人の両方の活動を通じた地域的な結びつきが、日本の今後の力強い発展と繁栄の鍵であると話しました。

    参加者はイベントの間、さまざまな質問を行い、多くの人が人間の安全保障という概念に立ち戻りました。緒方氏のすぐれた貢献により、この概念が個人の安全を重視するものから、社会・環境・経済に関する要素をも含むものへと発展し、同氏の数々の重要な洞察が、人間の安全保障に関する議論の中に展開されました。このイベントは、緒方氏の率直さとユーモアにより、活気あるものになりました。

    イベント後のレセプションでは、参加者は軽食と飲みものをとりながら、引き続き意見交換を行いました。