新たな研究結果:地球温暖化を1.5°Cで抑えるのが急務

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  • 2019年9月27日     東京

    地球温暖化を2.0°Cではなく、1.5°Cに抑えた場合の環境や健康、経済に対するメリット、リスクレベルや影響を検討した新たな研究論文「地球温暖化を1.5℃にとどめるために今やるべきこと(The Human Imperative of Stabilizing Global Climate Change at 1.5°C)」が「サイエンス」誌で発表されました。本論文は、2018年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による「1.5°Cの地球温暖化に関する特別報告書」の内容についてさらに詳しく述べています 。著者の一人である国連大学の専門家リヤンティ・ジャランテ氏は、IPCC特別報告書と第6次評価報告書の代表執筆者として名を連ねています。

    2017年、地球の平均表面温度(GMST)が産業革命以前の気温を1.0°C上回りました。これによって「地球とその自然体系が根本的に変わってしまった」ことを明記した上で、論文では陸上と海上において熱波がより頻繁に発生し、長期化していること、また気象パターンが変わり激化していることで、自然と人間のシステムにどのような影響があり、生態系や人々の暮らし、経済の相互依存関係にいかに混乱をもたらしているかを指摘しています。

    しかし、GMSTの上昇が数十年のうちに1.5°Cに達すると見られていることから、この差し迫った脅威によって国際社会の関心が、気候安定化に向けた取り組みの実現可能性や、これを達成することによるメリット、また、地球温暖化が2.0°Cに達した場合のリスクや影響などに向いてきています。

    著者たちは、1.5°Cと2.0°Cの温暖化で自然と人間のシステムに及ぶリスクを定量化する科学的アプローチを包括的にレビューした結果、「1.5°Cから2.0°Cへと温暖化が進む場合は、リスクレベルもそれに比例して上昇するか、場合によっては急激に高まる可能性もある」ことを示しています。その中でも喫緊な問題はおそらく、現在の1.0°Cから1.5°Cの移行期で、0.5℃から1.0℃への移行期に見られたものよりもはるかに大きなリスクが生じるという証拠があることでしょう。また、気温とリスクがともに高まる中で、今は健全に見えるかもしれない生態系や生物も、気温の「臨界点」を突然迎え、崩壊してしまうおそれもあります。

    著者たちは、パリ協定成立とIPCC特別報告書の発表以来増えた、論文審査を受けた数多くの科学文献からも明らかな通り、「GMSTの上昇を産業革命以前との比較で1.5°Cに抑えるためのコミットメントと行動を強化することがさらに急務である」と指摘しています。

    この研究の主な結論は、下記のとおりです。

    • 一連のエビデンスにより、気温が5°C上昇すると人間と自然システムの両方に対してさらに大きなリスクを及ぼすことは明らかである。温暖化が2.0°Cに達した場合のリスクは、それよりもはるかに大きい。
    • 2200年までに損害を回避することによる利益は、2050年までのエネルギー部門への投資コストを大幅に上回る可能性がある。
    • 温室効果ガス削減に向けて各国が明らかにしている現状の計画を大幅に拡大するためには、今から2030年までに、緊急かつ革新的な行動を起こすことが必要である。
    • 気候変動に対応するための戦略は、今、そして今後直面することになる気候変動の課題に合わせて拡張可能な規模であり、かつ、実現可能で公正なものとでなければならない。
    • 今後数十年から100年にかけて社会に壊滅的影響を及ぼしかねない状況を回避するため、国連の「気候変動への対応能力にすぐれた開発経路(CRDP: Climate-Resilient Development Pathways)」や「グリーン・ニューディール」(国連環境計画)など、大規模な戦略を採用する必要性が高まっている。

    論文の全文はサイエンス誌のウェブサイトから閲覧可能です。