2016年11月8日 東京
2016年10月13日、 UNU-IASは、SDGダイアログ・シリーズの一環として、「SDGダイアログ:地域機構と持続可能な開発目標 — 科学と政策、能力形成」を開催しました。このイベントでは、研究者と実務者を交え、持続可能な開発のための2030アジェンダとSDGsを、アジア・太平洋地域における地域や国の優先課題に、どのようにして落とし込むことができるのかについて、議論しました。
UNU-IASポストドクトラルフェローのファライ・カプザルワによる趣旨説明に続き、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)チーフのカティンカ・ウェインバーガー氏による基調講演が行われました。ウェインバーガー氏は、地域に応じた解決策を講じる重要性や、2030アジェンダの主要課題に対処する上で、政策形成に科学者が果たす役割について言及。最後に、例えば学術機関やシンク・タンク等の地域ネットワークの創設、地域レベルでのフォローアップ及びレビュー・プロセスへの学術機関の公的な関与などにより、地域における科学的知識と政策の相互関係を強化することができるのではないか、と示唆しました。
その後のパネル・ディスカッションでは、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授の松岡俊二氏が、現在のSDGsに関する議論と、かつて東アジアでなされた地域レベルの環境政策形成とを結びつけ、未来への価値ある教訓を提案しました。また、東北大学東北アジア研究センター准教授の石井敦氏は、アジアという文脈でSDGsを統合していくことは非常に難しいが、政策立案者やその他の利害関係者が、SDGsに関する研究を共同で進めることはできると指摘。UNESCAPは、この研究課程を支援し、研究成果の正当性を高めることができると述べました。
最後のプレゼンテーションは、Future Earthアジアセンター事務局長、総合地球環境学研究所教授のハイン・マレー氏により行われました。同氏は、SDGsは科学者が関わるべき重要な機会だとしつつも、地域における既存の多様な公的・非公的機構の存在が、対応を難しくすると述べました。
質疑応答および参加者とのディスカッションでは、科学に基づく政策形成を進める上でのUNESCAPの役割、現在のSDGsを改善するための科学者の責任、SDGsのための地域レベルでの指標リストの策定プロセス、学問の自由を維持しつつ、利害関係者の選定や共同形成過程の透明性を確保することの重要性などが挙がりました。
閉会挨拶で、UNU-IASシニアリサーチフェロー、慶應義塾大学教授の蟹江憲史は、アジア・太平洋フォーラムのような地域レベルでの対話の場は重要であり、科学者の非公式なネットワークをどのように公式なネットワークと結びつけるかも含め、地域機構のあり方に関するより多くの研究が必要であると強調しました。
本イベントは、「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN Japan)の共催により、「地球環境パートナーシッププラザ」(GEOC)の協力のもとで行われました。