「2011年国連デー」 国連大学学長メッセージ

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  • 2011年10月24日     東京

    コンラッド・オスターヴァルダー国連大学学長による「2011年国連デー」メッセージ(10月24日発行のジャパンタイムズ紙に、若干編集されて掲載)。

    1945年10月24日の国際連合設立を記念して、私たちは毎年国連デーを祝います。国連デーは、私たちが個人として集団として、国連の存在によって、また世界中の平和を維持し、国家間の友好関係を進展させ、生活水準の向上と人権の推進によりすべての人の生活を改善しようというその取り組みによって、いかに恩恵を受けているかを省みる日です。

    国連の能力の全容がとりわけはっきりと示されるのは危機が発生した時です。国連といえば多くの人は、国連総会や安全保障理事会が開催され、事務総長室があるニューヨークのビルを思い浮かべるでしょう。しかし実際には、国連は6つの主要機関、15の専門機関、広範囲に及ぶプログラム、基金、委員会、およびその他の構成組織からなる複雑な地球規模のシステムです。

    自然災害や人道的な大惨事─例えば2004年のインド洋津波、2010年のハイチ地震、アフリカの角で続く食糧危機、そしてもっと身近なところでは3月11日の東日本大震災とその後の津波など─が発生するたびに、国連システムは救済援助活動を支援・補完するため直ちに行動を起こします。

    保健、衛生、栄養、避難所、教育、経済復興などどのような懸念事項に対しても、国連システムはいつでも支援を行えるよう態勢を整えています。少しだけ例を あげてみましょう。国連災害評価調整(UNDAC)チームが被災地に派遣され、現地の緊急対応活動を支援し、送られてくる国際援助物資・サービスの管理について助言を行います。世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)は、緊急用食料を提供し、被災者への食料配給を支援することができます。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、要請に応じて、住む場所を失った人々のための避難所や施設を設営・維持管理することができ、世界保健機関(WHO)は、病気による被害を防ぐことができます。

    国連児童基金(UNICEF)は、災害の影響を被った子どもたちに、援助と教育の両方を提供します。国連開発計画(UNDP)は、被災後の復旧プロセスが 安定的でしっかりとした基盤に基づいたものとなるよう支援します。国連人道問題調整事務所(OCHA)は、国連システムの人道・災害救援活動を監督・促進し、機関間常設委員会(IASC)は、国連システム内外の人道援助機関による支援の調整を中心となって行います。

    国連システムが活動を行うのは、災害後の局面だけではありません。国連は、天災と人災の双方について防災・減災に取り組んでいます。例えば、紛争を回避または解決するための外交努力、危険にさらされている人々に災害発生の可能性を警告する早期警報システムの設置支援、気候変動(自然災害の頻度と強度を高める可能性がある)の脅威への対策などです。

    3月11日に日本で発生した大災害とその後の復興活動についての国連の配慮は、8月初めに潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が津波と地震の被害を受けた地域を訪問したことによってあらためて示されました。事務総長は、「国連は福島県、とくに福島の被災者のために一致団結する」ということを示すために現地に赴いたと言明しました。

    私は国連事務次長(および日本に駐在する最上位の国連職員)として、国連の公式代表団に参加して事務総長に同行し、現地の生徒たちや避難所で暮らす方々、自治体職員の皆さんとお会いしました。大惨事が起こったあの日から5カ月が経過した現在も数百人が暮らしている避難所を訪問した際、私は非常に心を動かされました。そこに暮らしているのは、家ばかりでなく多くの場合は仕事も失った方々、あるいは家族や友達をなくした方々でした。私は事務総長同様、大災害を乗り越えてこられた方々の勇気と忍耐に感銘を受けました。

    日本に駐在する国連機関は今年、「東日本大震災からの復興、そして新生~東北から世界へ」というテーマのもと、国連デーを祝って仙台で会合を開きます。東北大学で開催されるこのイベントは、国際的なレベルで今後の防災・救援の取り組みに貢献することを願って、日本の被災地における経験を国連の他の災害救援活動における経験と比較することを目的としています。

    参加者たちは自らの経験を共有し、多角的な視点から防災・復興活動を検証します。災害救援活動に協力した民間企業、非政府組織、日本労働組合総連合会、地方自治体、学術界、および日本駐在の国連機関の代表者が、これらの活動におけるパートナーシップの重要性について議論します。また国連機関とボランティア組織が、出席者のための情報リソースと展示を準備します。

    この国連デーは、防災・救援活動における国連の取り組みとその成果をあらためて認識し、困っている人々を助けるために国連が果たすより広範な役割について熟考するのにまさしくふさわしい日ではないでしょうか。