2019年10月28日 ボン
欧州委員会が資金提供し、国際連合が後援するプロジェクトでは、電気電子製品を購入する際、電気電子機器廃棄物(e-waste)から回収した再生プラスチックで作られたものを選ぶよう、消費者に対して呼びかけています。メーカーに対しては、製品の設計の見直しによりリサイクル性を向上させるとともに、新製品を開発する際は再生プラスチックの使用を促しています。フィリップスやワールプールをはじめとする複数の企業が他に先駆けて支持を表明。再生プラスチックをより多く使用した製品を開発することにより、製品寿命が尽きた時点でのプラスチックの再利用を容易にしています。
この呼びかけを行っているのは、多国籍コンソーシアムであるPolyCE(循環型経済のための使用済ハイテク再生ポリマー)。ドイツのフラウンホーファーIZM研究所が主導し、大学(国連大学(ボン)、ゲント大学(ベルギー)、ベルリン工科大学、ノーサンプトン大学(英国))、市民社会団体(欧州環境事務局)、およびフィリップスやワールプールを含む多数の企業で構成されています。今後2年間行うキャンペーンは、ベルギー、オランダ、イタリア、ドイツ、オーストリア、スペイン、フィンランド、米国、および英国の9カ国を拠点とする20のパートナーによって立ち上げられました。
北欧閣僚理事会によると、プラスチックは電気電子機器(EEE)の全材料の約20%を占め、その大部分は回収や再利用を前提として設計されていません。PolyCEコンソーシアムによって立ち上げられた本キャンペーンは、消費者やメーカーの関心を高めることにより、再生プラスチックに対する意識を変え、市場での普及を進めることを目的としています。
プロジェクトパートナーであるゲント大学のキム・ラガレ(Kim Ragaret)氏は次のように述べています。「プラスチックは価値ある資源であり、循環性の点で大きな潜在力を持っています。プラスチック自体が問題なのではありません。いわゆるプラスチック問題は、意識や廃棄物管理に関わるものです」
プラスチックは、電話、パソコン、テレビ、掃除機、ヘアドライヤー、その他家電等の電気電子製品におけるさまざまな部品の製造に不可欠です。PolyCEコンソーシアムの専門家は、プラスチック部品の資源回収をより容易にするようなかたちで、各種製品の開発が可能であるといいます。
欧州(EU、ノルウェー、およびスイス)で予想される来年のe-wasteの量は1,200万トン超とされ、そのうち250万トン(23%)がプラスチックと推定されます。
これは40トントラック6万2500台(1)が満載になる重量であり、2000年にe-waste部品として埋め立てられた100万トンのプラスチックの2.5倍に当たります。
PolyCEコンソーシアムが言及したスウェーデンからのレポートでは、耐久財に使われるグレードの高いプラスチックの回収・リサイクル率が、現在全世界で10%にとどまっており、金属およびガラスの場合の平均50%から90%を大幅に下回ると指摘されています。
このプロジェクトでは、質の高い再生プラスチックを含むEEEの製造がメーカーにとって経済的採算性があること、またそうした製品が未使用プラスチックを含む製品と同様に長持ちし、耐久性があることが、多数の実証を通じて示されています。加えて、再生プラスチックを含むEEEを購入することは、環境に対するその他多くの利益をもたらします。
プラスチックのリサイクルによって、廃棄物システムへの負担(欧州では依然としてプラスチック廃棄物の31%が埋立てに使われ、39%が焼却されている)が軽減されるだけでなく、1トンのリサイクルごとに、新しいプラスチックの生産で排出されるCO2が最大3トン削減されます。
PolyCEプロジェクトで実施された最近の消費者調査では、再生プラスチックを含むテクノロジー製品を買ったことがあるかどうかについて、回答者の半数が分からないと回答。買ったことがあると答えた回答者は25%でしたが、そのうち86%は品質、見た目、または性能に違いを感じていませんでした。
EEEに含まれる再生プラスチック部品の健康・環境上のメリットについて知らされた回答者のうち95%が、そうした製品をぜひ買いたいと答えました。この調査によると、消費者は循環型経済に沿った行動を取ることに高い意欲を見せているものの、実際の関与の度合いは残念ながら依然として非常に低調です。ここではコミュニケーションが鍵となります。
国連大学のe-waste専門家であるルーディガー・キュール氏は次のように述べています。「持続可能な循環型経済および製造システムに対して、消費者は絶対的に重要な役割を担っています。まず、古い電気電子製品を修理することにより買い換えを遅らせることができます。さらに、それらの製品を処分する際には適切にリサイクルすべきです。地球、そして私たち自身の健康のために、ごみ(リフューズ)を資源(リソース)に変えるのです。最後に、消費者は再生プラスチックで作られた製品を選ぶべきです。個人の購買力を駆使して、廃棄物の発生を防ぐとともに再利用材料で開発された製品を支持することが重要です」
一方、メーカー側では、設計を改良して製品のプラスチック部品の回収・リサイクルをより容易にし、再生プラスチックを自社製品に使用し、そうした特徴を消費者に宣伝する必要があります。
キュール氏はさらに、「よりよい設計を行うだけで、環境および財務上かなりの節約を達成することができます。タブレット型コンピューターやスマートフォン等の一部の製品において、製造コストおよび環境への影響の大部分は、製品設計の段階でなされた意思決定の結果起きています」と述べました。
「循環型経済の実現は、最終的に、製品デザイナー、メーカー、材料リサイクル業者、および消費者の間の共同の取り組みとなります」
2年間の啓発キャンペーンの一環として公開される短い動画では、消費者と専門家の双方が登場し、未使用プラスチックよりも再生プラスチックを選ぶことのメリットを明らかにしています。最初に公開される動画の予告編は、YouTubeで視聴できます。
このイニシアチブの成功は、国連の持続可能な開発目標の一部、とりわけ目標12(つくる責任つかう責任)、目標11(住み続けられるまちづくりを)、および目標13(気候変動に具体的な対策を)と関連しています。
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全世界
欧州(EU、ノルウェー、スイス)
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PolyCE(循環型経済のための使用済ハイテク再生ポリマー)は、欧州委員会が資金提供する「ホライズン2020」プロジェクトの1つであり、とくにEEEセクターにおいて、循環型経済の実現に向けたハードルを乗り越える解決策を見いだすために尽力しています。プロジェクトの成果として、消費者にとってのインセンティブを明らかにするとともに、立法者に対する政策提言、およびプラスチックのリサイクル業者向けの技術的ガイドラインの提示を予定しており、EEE廃棄物に含まれるプラスチックから循環型経済の発展を支えることを目指しています。
PolyCEは20の専門家団体から成るコンソーシアムであり、プラスチックを含むe-wasteの削減、循環型経済の促進、未来志向の知識移転基盤の構築という課題に取り組んでいます。PolyCEは、新しい電気製品において未使用プラスチックの使用を削減し再生プラスチックの使用を拡大させることで、以下を行います。
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パートナー一覧を含むPolyCEプロジェクトに関する情報はこちら
ウェブサイト: https://www.polyce-project.eu/
ブログ: https://medium.com/@PolyCE_EU