国連デー学長メッセージ「今こそ再活性化を図り、対応力ある国連を」

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  • 2017年10月24日     東京

     

    2017年10月24日の国連デーに寄せて、デイビッド・マローン国連大学学長のメッセージです。  (英語から翻訳・一部編集)

    今こそ再活性化を図り、対応力ある国連を

    記念日というのは、いつも過去を振り返る機会となります。しかし、19451024日に国際連合が発足したことを祝う国連デーの今日は、過去から得た教訓と活動成果を振り返るだけの日にしてはいけません。72年前とは大きく様変わりした世界情勢に対応していくために、再び活性化しつつある国連のこれからについても考えるべきです。

    世界は今、気候変動、紛争やテロに起因する移民問題、急速な都市化、不平等の拡大など、さまざまな問題に直面しています。世界の変化の速さは、そこに生じる、複雑に絡み合う諸問題と同様に、これまでに経験したことのないものです。国連の平和と持続可能な開発への対応やコミットメントも、迅速であると同時に広範囲に及ぶものでなければなりません。

    国連がこれまで支援してきた取り組みは、目覚ましい成果をあげています。1990年以降、極度の貧困に苦しむ人々の数は半分以下まで減少し、妊産婦の死亡率は45%減、そして20億を超える人々が改善された衛生施設(トイレ)を利用できるようになりました。

    しかし、世界的な問題の規模の大きさと根本的な解決の難しさ、そして国連の対応力が不足しているという認識によって、こうした成果が覆い隠されてしまうことが多いのです。

    シリアで起きているような解決困難な紛争によって、緊急の人道支援が必要な状況や極度の貧困で苦しむ事態が長期化し、世界中で7億人がその被害を受けています。そして、外交努力は行き詰まり、予算を消耗するだけで、国連の取り組みに対する信頼を失いかねない状況となっています。

    しかし、今年1月に就任したアントニオ・グテーレス国連事務総長のもとで、国連の構造改革は進み始めています。グテーレス国連事務総長は、手続きよりも行動に、マニュアルよりも人に重点を置き、官僚主義を排し、説明責任が明確で柔軟な対応がとれるよう、人が中心の取り組みを推進しています。

    国連活性化の取り組みの1つに、徹底したジェンダー格差解消へのコミットメントがあります。国連の今後の発展のためには、国連組織のすべての地位において、より多くの女性を起用することが不可欠です。私は国連大学学長としてこの取り組みを歓迎するだけでなく、国連大学において、この組織改革を率先して行っていきます。公正、均等な雇用機会と待遇の確保に取り組むだけでなく、研究、教育、能力開発、コミュニケーションなどの活動に、男女共同参画の視点を取り入れ、国連大学におけるジェンダーの平等を推進していきます。

    ジェンダーの平等は人類の絶え間ない進歩の基盤です。また、貧困をなくし、地球を守り、誰一人取り残さない繁栄を実現するための枠組みとして2年前に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と「17の持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に取り組むうえで、加盟国の大きな力となります。

    2030年までにSDGsを達成するには、さらに協調、連携して取り組みを加速させる必要があります。この2年間の進展は遅すぎるものでした。SDGs達成に向けた取り組みの大きな障害となっているのが、信頼できるデータの入手の問題です。信頼できるデータを確保できれば、国連やそのパートナー、政府、地域コミュニティが、弱い立場に置かれている人々に対して最も効果的な解決策を見出しやすくなります。

    こうした障害を乗り越えるべく活動しているのが国連大学です。SDGsのすべてのテーマを網羅する世界的研究ネットワークを備える国連大学は、国連の様々な機関の開発・平和維持への取り組みが健全な方針に基づいたものになるよう、極めて重要な情報や知見を提供しています。

    国連大学の活動は、財政面だけでなく、大学本部を東京に置くことを快く受け入れていただくなど、日本政府からの継続した支援なしでは不可能でしょう。60年以上にわたり、日本は誠実なる国連加盟国であり、この30年間は世界第2位の資金拠出国です。これまでのリーダーシップ、また、国連とその平和維持活動、人道的支援、グローバル・ガバナンスにおける尽力に対し、日本に深く感謝いたします。日本の貢献は、今後急激に変化するであろう国際社会の要望に応える上で、他の加盟国にとってモデルとなるものです。

    何よりも重要なこととして、国連は現在推し進めている構造改革を実行し、加盟国のニーズに迅速に対応する力をつけなければなりません。そして、世界の発展を推し進めていくべきなのです。

     

    英文のメッセージは、10月24日発行のジャパンタイムズに掲載されています。