チンチージャ大統領、コスタリカの経験について語る

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  • 2011年12月16日     東京

    コスタリカ共和国のラウラ・チンチージャ大統領は東京の国連大学本部で、満員の聴衆を前に第19回ウ・タント記念講演を行いました。チンチージャ大統領はコスタリカの持続可能な未来についての展望と、同国が世界の持続可能な発展の指針となることができればという希望を表明しました。環境保護と非軍事化への取り組みは、近年コスタリカの国内政策の特徴です。大統領はまた、国民は国の最も重要な資産であると述べ、同国が人間開発に重点的に取り組んでいることも強調しました。コスタリカにとって、環境保護と人間開発は切り離して考えることはできません。

    戦争と自然資源の開発は、今なお人類が直面している最も深刻な脅威です。大統領は、こうした脅威を軽減するためにコスタリカが行ってきたこれまでの取り組みと、今後の計画を示しました。注目すべきものとしては、憲法により自国の軍隊を廃止したことと、2021年までにカーボンニュートラルな国になると宣言したことがあげられます。2011年12月1日、コスタリカは軍隊廃止63周年を祝いました。非軍事化により、軍事費は、保健、教育、公衆衛生の部門に再配分され、同国の発展ならびに平和の実現のために使われています。

    現在、コスタリカのエネルギーの95パーセントが、再生可能エネルギー源に由来しており、2021年までには100パーセントまで増やすよう計画されています。もちろんこれは同国の努力なくしては不可能です。エネルギー生産の新たな手法は、コスタリカが保護に努める自然環境に、悪影響を及ぼさないよう開発しなければなりません。温室効果ガスの排出を削減しつつ、森林を増やす取り組みが行われており、それがコスタリカの豊かな生物多様性を保護および保全することへと繋がっています。

    大統領は、コスタリカと日本との長く実り多い外交関係を強調し、平和と自然環境に対する両国の姿勢に関して、価値観が共通していることに触れました。また、2011年3月11日の東日本における地震と津波による被害に対し、大統領は、日本国民の強靭な精神と回復力をもってすれば、今回の自然災害から必ず復興することができると述べました。

    将来に目を向け、チンチージャ大統領は、コスタリカが持続可能な環境開発と人間開発のために指針を示していきたいという希望を表明し、私たちの地球とそこに住むものに対して、世界的な責任を果たさなければならないと強調しました。そして地球市民として、私たちは共に未来と向き合う必要があるとし、「この惑星に乗客は一人もいません。私たちはみな乗組員なのです」と述べました。

    大統領は、米州開発銀行(IDB)アジア事務所の上田善久氏の司会により、聴衆との質疑応答を行いました。質疑とコメントは、中南米において女性指導者が増えていること、麻薬取引の影響、コスタリカの「地球幸福度指数」がとくに高いことなどに及びました。大統領は、家族の強い絆、社会福祉の利用機会、環境および人間開発への投資、これらすべてが、コスタリカ国民の幸福に大きく貢献していると説明しました。中南米地域は男女平等に関しては著しい進展を遂げたものの、麻薬取引は深刻な課題となっています。これに関連して、大統領は、コスタリカの政治的腐敗を断ち切る取り組みが、報道の中立性と教育への投資を促進していることをあげました。

    講演後、チンチージャ大統領は、国連大学の大学院生と研究員、ならびに日本在住の多数のコスタリカ国民の歓迎を受けました。このような場は、国連大学の学生と若い研究者たちにとって、堅苦しくない雰囲気で大統領と話をする貴重な機会となりました。