長崎フォーラム 軍縮・不拡散教育の役割を探る

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  • 2012年8月30日     長崎市

    長崎での原爆投下67周年に続く、8月10日、11日に開催されたグローバル・フォーラムでは、核兵器およびその他の大量破壊兵器のない世界への実現と通常兵器の脅威の対処に向けた軍縮・不拡散教育の役割が模索されました。

    今回のグローバル・フォーラムは国連大学、外務省および長崎市が共同で開催し、教育者、外交官、研究者、学生、 NGOの代表者を一堂に集め、軍縮・不拡散に対する人々の意識と知識を向上させる手段としての教育の重要性について意見を交換し、議論しました。

    潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、アンゲラ・ケイン国連軍縮部上級代表が代読したメッセージの中で、「世界中の全ての学校に軍縮と不拡散教育をもたらすきっかけとなる」と本フォーラムへの支持を表明しました。

    ケイン国連軍縮部上級代表ならびにティボル・トート包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会事務局長による基調講演では、次世代の軍縮・不拡散の専門家を育てる軍縮・不拡散教育の必要性が強調されました。アヴナー・コーヘン モントレー国際問題研究所、ジェームズ・マーティン不拡散研究センター上席研究員・教授は、核兵器なき世界を達成するための政策と法の限界を指摘し、教育が若い世代の道徳的責任を養うために必要不可欠であることを強調しました。

    パネルセッションでは、軍縮・不拡散教育の実施における課題に焦点を当て、この分野で活動する第一線の教育者とNGO関係者が、それぞれの活動を紹介し、実践に基づいた見解を述べました。軍縮・不拡散教育のターゲットは若者か社会全体なのか、また知識や理解よりもアドボカシーを重視するべきだという意見もあがるなど、そのあり方に対するさまざまな意見が提示され、活発な議論が行われました。セッションでは、軍縮・不拡散教育には幅広い主体が関わっていること、大量破壊兵器の非人道的な性質についての人々の認識と理解を深めると同時に人々に軍縮と不拡散を支援する行動を促すという共通目標を掲げ活動していることが確認されました。

    フォーラムでは地元被爆者の声も取り上げられました。下平作江非核特使は、長崎での原爆投下の際10歳だった自身の経験を核兵器の脅威とともに雄弁に語り、被爆者の経験を理解し共有することが軍縮・不拡散教育にとって不可欠であることを訴えました。

    フォーラムでは学生も積極的に参加しました。高校生平和大使はその活動を紹介し、核兵器廃絶の重要性を訴えました。発表の部では、中学生、高校生、大学生による不拡散と軍縮に向けたさまざまな活動が紹介され、最後に感動的な歌も紹介されました。

    軍縮・不拡散を促進する活動について発表を行う学生。

    本フォーラムは、さまざまなステークホルダーが軍縮・不拡散教育の見解と経験について意見交換を行い、ベストプラクティスをまとめ、今後の協力に向けてのパートナーシップを構築する機会となりました。参加者は、閉会式で発表された長崎宣言でうたわれている軍縮・不拡散教育の更なる促進と発展を継続していくことを約束しました。会場からのメッセージはTwitterFacebookといったソーシャル・メディアを通して広く世界中の人々に発信されました。

    今回のフォーラムを共催した国連大学と外務省は、これまでも軍縮・不拡散教育の促進・発展に向けて連携を行ってきました。2010年5月には、核不拡散条約の運用検討会議に共同で作業文書を提出し、核拡散の脅威に対する認識や理解を高め、核不拡散条約の規範を強化するための市民社会の参加を促す方策を提言しました。

    国連大学は、研究を通して科学的知識に寄与し、核やその他の兵器の破壊的な威力や拡散の危機に対する理解を深めるべく、活動を行っています。国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)のプロジェクトの成果がThe United Nations and Nuclear Orders(国連と核の秩序)およびSexed Pistols: The Gendered Impacts of Small Arms and Light Weapons(セックスド・ピストルズ:小型武器や軽火器のもつジェンダーに対する影響)として出版されています。

    UNU-ISPの教育プログラムでは、軍縮・不拡散問題に取り組む人材育成も目指しており、修士課程サステイナビリティ・開発・平和学では「国際平和と安全保障」、「現代安全保障問題」のコースを提供しています。