国連大学で、「人間開発報告書2013」日本発表会を開催

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  • 2013年4月11日     東京

    Report Launch

    ハリド・マリク人間開発報告書室長  Photo: D Powell/UNU

    「人間開発報告書2013」(The Rise of the South: Human Progress in a Diverse World(南の台頭――多様な世界における人間開発) )の日本発表会が、 3月26日、国連大学本部(渋谷区)で開催されました。

    弓削昭子国連開発計画(UNDP)駐日事務所代表の開会のあいさつに続き、 ハリド・マリク人間開発報告書室長が、本報告書の主な調査結果を紹介しました。

    40カ国を超える開発途上国を中心とした、本報告書のデータおよび調査結果は、不平等の緩和、教育の拡大、社会的結束の議論への参加機会の拡大、若者間の結びつきの強化など、過去10年にわたる人間開発の向上を示しています。

    南の台頭は、21世紀の世界に抜本的な再編を引き起こし、開発途上国が経済成長の原動力となり、何億もの人々を貧困から引きあげ、さらに新しいグローバルな中間層に押しあげていると「人間開発報告書2013」は述べています。

    発表会では、国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長が、UNDPと日本との協力を称賛し、UNDPの報告書作成を高く評価しました。また、21世紀の世界システムに関する私たちの理解の一新、人間の安全保障、包括的な開発について語りました。

    田中理事長は、西側諸国の長年にわたる支配力は、南における急激な経済成長によって取って代わられたと述べました。南はひとつの統一体ではなく、人間開発の分野において多様で複数の要素を示していると指摘しました。また、包括性の概念を強調し、人間の安全保障と脆弱性により多くの関心を向けるべきであると示しました。JICAのような機関は、「開発協力は、北から南への単なるソフトウェアの移転では達成できない」という前提のもとで協力を促進しているが、お互いを知ることと一緒に解決策を見つけることが必要であると述べました。

    Report Launch

    デイビッド・マローン国連大学学長  Photo: D Powell/UNU

    質疑応答では、デイビッド・マローン国連大学学長が、意欲的な「人間開発報告書2013」を作成したUNDPに感謝の意を示し、とくに、開発に人間の安全保障の要素を組み込んだ日本の努力について触れました。ただし「中間層」という用語が漠然と表わされていること、たとえばインドでは、中間層は3,500万の人々で構成されていると言う人もいれば、3億5,000万人と言う人もいるとし、「中間層」についての解釈を明確にしなければならないと指摘しました。

    それに対し、マリク氏と田中氏の両氏は、中間層とは、さまざまな場所や背景において、さまざまな解釈を持つ「自己概念の用語」であると指摘しました。

    マローン学長はまた、開発という背景では、初等・中等教育のみを重視するよりも高等教育が重要な役割を持つことを強調しました。マリク氏は、教育にはバランスが必要であり、また、両親がつねに自分の子どもたちに対し、より良い将来を望んでいることから、あらゆる教育の流れにおいて、一貫した取組みが必要であると回答しました。

    マリク氏は、所得、教育、保健という人間開発の三つの柱について、開発途上国は加速に拍車をかけており、このことは喜ばしいことであると締めくくりました。

    最初の「人間開発報告書2013」発表会は、2013年3月14日に、ヘレン・クラークUNDP総裁とメキシコ合衆国のエンリケ・ペニャ・ニエト大統領により、メキシコシティで開催されました。エンリケ・ペニャ・ニエト大統領をお迎えして、2013年4月9日に東京の国連大学で、第21回ウ・タント記念講演が開催されました。