「Integrating the SDGs with Business発行記念シンポジウム」を開催

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  • 2019年7月24日

    シンポジウムで講演する沖大幹上級副学長 (Photo: Christophersen/UNU)

    気候変動、貧困、ジェンダー不平等、プラスチックごみ。私たちが直面している喫緊の地球規模の課題を解決するために、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」およびその中核となる「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連で採択されたのは2015年9月。SDGs達成のためには、先進国と開発途上国、政府、民間企業や個人を問わず、全世界が取り組む必要があります。

    そこで、国連大学は企業がどのようにSDGsに戦略的に取り組むことができるかという点に着目し、2019年7月3日に「Integrating the SDGs with Business 発行記念シンポジウム」を開催しました。

    本シンポジウムでは、2017年10月に国連大学本部で立ち上げた「SDG企業戦略フォーラム」参加企業*が、一年半の対話を通じてSDGsに取り組む上での課題や疑問などを話し合った成果を「Integrating the SDGs with Business」という冊子にまとめ、公表しました。また、参加企業の事例紹介および有識者による講演やパネルディスカッションを行い、持続可能な社会構築に向けて、企業がどのように取り組むべきか議論しました。

    東京都渋谷区に本部を置く国連大学のウ・タント国際会議場で行われたシンポジウムには、学生、社会人、企業経営者、専門家など、300名を超える方にご参加いただきました。SDG企業戦略フォーラムの座長を務める国連大学の沖大幹上級副学長は、出席者の年齢層が若い学生からシニア層まで幅広かったという点について、「SDGsに関心が高いということと、企業の利益追及とSDGsのような根本的な社会正義とがどうやって折り合うのか、皆さんご関心があったのだと思います」と、シンポジウムを振返りました。

    SDGsという言葉は最近よく耳にする方も多いのではないでしょうか。国レベルでは、2016年に首相官邸において内閣総理大臣を本部長とするSDGs推進本部の設置等、SDGs達成に向けた動きがあり、報道でも取り上げられる機会が増えてきました。また、2020年に開催を控える東京オリンピック・パラリンピックでも、持続可能な社会の実現の重要性を唱えています。

    一方で、2016年10月に国連大学の上級副学長および国連事務次長補に就任した沖氏は、当初より企業のSDGsへの取り組み強化に関心があり、TMI法律事務所の北島隆次弁護士とともに日本の企業20社に声をかけSDG企業戦略フォーラムを立ち上げました。

    沖上級副学長は企業とSDGsの関係について、「企業の利益追求はもちろん大事で、それがないと企業の持続可能性はありません。ところが、企業の持続可能性は社会の持続可能性に支えられていることも明らかです。自らの利益を追求するにしても結局社会が豊かになり、もっとモノやサービスを買ってくれない限りは自分たちのビジネスもうまくいかないということが最近より鮮明になったのではないでしょうか」と述べました。

    フォーラムは、月に一回各社CSRやサステイナビリティ関連と事業関連という異なる部署から2名以上の出席のもと、政府関係者や企業経営者、NGO職員など、SDGsおよびESG(環境・社会・ガバナンス)に関するキーパーソンをゲストとしてお呼びし、勉強会を行ってきました。その中で、各社はそれぞれの経営方針や商品、サービスを具体的にどのようにSDGsと関連づけるのかを考え出し、冊子「Integrating the SDGs with Business」や自社のホームページにて公表しました。

    沖上級副学長は、フォーラムで積み重ねてきた知識・経験を日本中の企業と共有することによって、各企業のビジネスや取り組みがどのようにSDGsやアジェンダ2030と結びつくのかを明らかにするきっかけとなることへの期待を次のように述べました。

    「各企業が得意なビジネスを通じてみんなを幸せにすることができ、みんなが喜ぶモノやサービスを届けて持続可能な社会の構築に貢献するのが理想的です。それと同時に、ジェンダーの不平等や理不尽な格差の容認、児童労働などマイナスな活動はできないような社会にし、環境や人権を踏みにじって作られたモノはサプライチェーンに乗らない社会にしていくのが大事だと思います」

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    *冊子制作に協力いただいた参加企業(五十音順):AGC株式会社、イオン株式会社、オムロン株式会社、オリックス株式会社、花王株式会社、サントリーホールディングス株式会社、JXTGホールディングス、清水建設株式会社、大和証券グループ本社、凸版印刷株式会社、トヨタ自動車株式会社、日本たばこ産業株式会社、株式会社日立製作所、富士フィルム株式会社、丸紅株式会社、株式会社三菱ケミカルホールディングス、三菱商事株式会社、ライオン株式会社、株式会社リクルートホールディングス

    問合せ・連絡先 sdgforum@unu.edu