アイスランドのステファンソン大使、日本における地熱エネルギーの利用を提唱

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  • 2013年1月9日     東京

    Stefan Larus Stefansson, Ambassador of Iceland to Japan. Photo: Stephan Schmidt/UNU

    ステファン・ラウルス・ステファンソン駐日アイスランド大使。 Photo: Stephan Schmidt/UNU

    2012年12月5日、東京の国連大学本部でステファン・ラウルス・ステファンソン駐日アイスランド大使が講演を行いました。本講演は、国連大学の学生、フェロー、インターンが、政治、経済、社会問題について政府高官と直接対話する機会を提供する、国連大学の大使講演シリーズの一環として行われたものです。

    ステファンソン大使は、日本における地熱エネルギーの利用についての講演を行い、日本は、アイスランドの85年におよぶ地熱エネルギー分野での実績をモデルとして、その膨大な未開発の地熱エネルギー資源を利用すべきであると提唱しました。大使は2010年11月に行われた日本アイスランド地熱エネルギーフォーラムにも参加しており、国連大学でこの問題について話すのは2度目であることを強調しました。

    大使は、地熱エネルギーを「アイスランド経済の背骨」と表現しました。というのも、アイスランドの一次エネルギーの 66パーセントが地熱資源に由来するからです。これとは対照的に、日本は世界第3位の地熱エネルギー資源保有国であるにもかかわらず、地熱発電所の建設は1999年を最後とし、また、政府からの研究支援はすべて2003年に中止されています。

    大使は、このことについて、国の財源を原子力エネルギーに向けるために行われた日本政府の意図的な意思決定の結果であると説明し、京都議定書合意のホスト国がそうした選択を行ったという皮肉を強調しました。チェルノブイリや福島第一原子力発電所の事故(チェルノブイリのケースでは、放射能は、はるか遠くスウェーデンやノルウェーにまで拡散)を引き合いに出し、大使は、「原子力は国内の政治問題ではありません。何かが起これば、それは国際問題になるのです」と遺憾の意を述べました。また、日本が地熱資源の開発に全力で取り組めば、25基の原子炉の代替にすることができると指摘しました。

    ステファン大使は、豊富な自然の地熱エネルギーの国内開発によってもたらされる多くの利点について説く日本の研究者らの調査結果を紹介しました。日本の雪の多い地域は地熱エネルギー資源を高い割合で保有するものの、住民たちはほとんど暖房に灯油を使っています。一方、アイスランドの住宅の92パーセントは地熱熱水を暖房に利用しており、暖房費は北欧で最も少なくなっています(2011年5月の推計によれば、1世帯当たり平均わずか7780円)。日本が同様の措置を講じれば、二酸化炭素排出量を最小限に抑え、かつ景気対策となる新たな雇用を創出しつつ、家庭の暖房費を大幅に削減することが可能です。

    大使はさらに、アイスランドの地熱タービンのほぼすべてが日本製である事実を強調しました。エネルギーを生み出す手段として地熱資源を利用する国が増えれば、日本はその技術の巨大な輸出市場を持つことができます。

    大使は、地熱エネルギーの潜在的な欠点(とくに考えられる温泉への影響)を含めた問題や国立公園での地熱発電所建設の問題について、聴衆と活発な質疑応答を行いました。ステファンソン大使は、地熱エネルギーと観光産業がどのようにして、さまざまなプロジェクト(例えば、隣接する地熱発電所の副産物として造られた世界的に有名な温泉リゾートであるブルーラグーンなど)と調和しながら機能しているかを指摘しました。

    「地熱エネルギーの可能性は、想像力次第で無限に広がります」と大使は強調し、陸上での水産養殖や温室栽培、ならびに医療や化粧品目的など、地熱エネルギーのその他の用途例を多数あげました。講演の最後に、大使は、未開発の地熱エネルギー資源を保有する各国政府に対し、全世界の人々と地球の未来のために責任を担うよう求めました。