FUKUSHIMA グローバル広報事業が正式始動

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  • 2013年8月6日     東京

    2013年7月23日(火)、横浜で開催された「持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム2013」の一環であるパラレルセッションにおいてFUKUSHIMAグローバル広報事業(FGC)が始動しました。

    FGCは、福島第一原発事故が人々に及ぼしている影響を、「人間の安全保障」という観点からとらえようとするものです。国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)は、徹底した調査と情報収集を通じて、人類史上2番目に深刻な原子力事故となった福島原発事故に関する情報照合と情報伝達の重要なプラットフォームとなることを目指しています。

    Photo: E. Kobayashi/UNU

    Photo: E. Kobayashi/UNU

    同プログラムを紹介する基調講演が、UNU-ISPの所長である武内和彦教授により行われました。武内教授は、日本に本部を置く唯一の国連機関である国連大学は「中立的な」研究機関として高く評価されており、そうした意味でUNU-ISPは、福島原発事故に関するこのプロジェクトの実施機関としてふさわしい存在であると説明し、「国連大学が関与することで双方向コミュニケーションが促されると期待されます。すなわち、日本から国際社会に向けて知見と情報が発信されると同時に、福島の現状への対策に応用できる有益な知見を国際社会のなかに見いだし共有することができます」と述べています。

    武内教授は、 FGC の主な活動として次の3つを挙げています。

    1. 情報の収集・整理と研究の実施
    2. 日本と海外の専門家のネットワーク構築と連携の促進
    3. 国際社会との情報伝達と知見共有

    「福島の災害対策に関する政策決定において第一に考慮すべき点として『人間の安全保障』を回復するという視点が必要です」と指摘し、人間の安全保障のアプローチを採用している点でFGCはユニークな試みである、と武内教授は述べました。

    武内教授の基調講演に引き続き、同プログラム事務局の責任者を務める竹本和彦(UNU-IAS シニアフェロー)を議長とするパネルディスカッションが開催されました。

    プログラム・リサーチャーである二村まどか博士(UNU-ISPアカデミック・プログラム・オフィサー)からも発表がありました。二村博士は、人間の安全保障アプローチに基づいて自然災害という状況で生じるさまざまなジェンダー問題に着目し、とくに性暴力や家庭内暴力の増加、男女の財産権、男性、女性またトランスジェンダーの人々それぞれに対する影響といった幅広い問題について解説しました。ジェンダーの視点に着目することで、「どのような社会を誰のために再建すべきか」という議論を復興段階で促すことになる、と博士は指摘しています。

    Photo: E. Kobayashi/UNU

    Photo: E. Kobayashi/UNU

    二村博士に続いて、FGCのハイレベル諮問委員会(HAC)委員でもある堤 敦朗博士(UNU-IIGHリサーチフェロー)から、自然災害後に生じる深刻なメンタルヘルス問題について発表がありました。 日本の「三重災害」後には、抑うつ状態、不安症、悪意ある噂、いじめや差別、また精神的障害を持つ人々に対する支援の欠如といったさまざまな問題が発生していると指摘したうえで、災害リスク対策の政策決定にメンタル面にも配慮する心理社会的視点を取り入れる必要があるのではないか、また災害後の「より良い社会を目指した復興」のためにもそうした問題に対する取組が必要ではないか、と述べています。

    最後に、HAC委員でもある東京大学の田中知教授から、福島の除染作業について発表がありました。原発難民が自宅に戻ろうとしても、必要とされている仕事や各種サービスの提供が難しいことが想定され、また同地域の就労者の多くを農家が占めていることから、土地の耕作や作物と家畜の販売が制限されていることで、農家にとってはとくに厳しい状況であるとの報告がありました。

    FUKUSHIMAグローバル広報事業に関する詳しい情報については、UNU-IASウェブサイトをご覧下さい。