日本の高校生がG7に求める5つのこと

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  • 2023年4月7日     東京

    気候と環境について議論する高校生たち。Photo: UNU / C. Christophersen

    3月25日に170名以上の日本の高校生がオンラインおよび国連大学本部に集まり、Y7サミットのアウトリーチ・イベント、「高校生G7サミット2023」に参加しました。Y7サミットは毎年、G7首脳会合の前に開催され、ユースの視点からG7に助言する役割を担っています。本年のY7サミットは4月9日から13日まで、東京と広島で開催されます。

    高校生G7サミットは国連大学と任意団体G7/G20 Youth Japanが共催し、参加した高校生は5つのテーマに沿って国際課題について議論しました:経済の回復力、デジタルイノベーションとトランスフォーメーション、気候と環境、グローバルヘルスと幸福、平和と安全。イベントの終わりに生徒たちはそれぞれのテーマに関する独自の分析と政策提言を発表しました。以下では、政策提言の5つのポイントをご紹介します。

    1 平等を国際経済の中心に据える

    ウクライナ侵攻や新型コロナウイルスの世界的流行などの危機によって世界経済が大打撃を受け、多くの国にとって経済の回復力を高めることが重要課題となっています。しかしながら、高校生たちが求めたのは単に強靭な経済ではなく、良り公正で公平な経済でした。

    「経済グループでは公平性を意識して政策を考えました」と経済の回復力グループで高校生リーダーを共同で務め、本年のG7サミット開催地である広島出身の稲垣凜々那さんが述べました。高校生たちの政策提言は、外国人労働者の地位やユースのための教育や雇用の機会など、複数の課題に触れましたが、共通するテーマは「公平性」でした。

    例えば、外国人労働者の地位を守り、向上させるために、自治体レベルでより強力な支援を行うことや、外国人労働者に安心できる労働環境を提供するために企業に対し教育やインセンティブを提供すること、外国人と日本人との間の雇用機会の差を埋めるために企業と人事の包括的なマッチング制度を導入することなどを生徒たちは提案しました。

    また、高校生たちは、都市と地方、高所得世帯と低所得世帯の間で生じている若者の教育やインターンシップ機会の差に着目しました。有名大学や学校、研究機関などが地方支部を設けるためのインセンティブを提供することや、教育に関する学生や家庭への負担を減らすために大学や給食の無償化を行うことなどが政策提言に含まれます。

    2 誰ひとり取り残さないデジタル変革

    デジタル革新や変革はより繁栄した持続可能な未来へと導いてくれる多くの可能性を秘めていますが、現在、世代や教育によってITに関する知識や技能に大きな差が生まれています。

    このような大きな障害を乗り越えるために、高校生たちは抜本的な教育改革を提案し、基本的なPCスキルを小学校から学ばせることを提案しました。上の世代に関しては、企業主導の技能教育やリスキリングと、それを後押しするためのインセンティブを政府が企業に提供することが政策提言に盛り込まれました。

    3 環境に優しい行動、製品やサービスを後押し

    近年、地方、国、地域そして世界規模というあらゆるレベルでの啓発活動が功を奏し、環境問題に関する世間の認識は向上しました。しかしながら、認識を行動に移すための道のりは遠いのが現状です。さらに、環境問題の認識向上に伴い、「グリーンウォッシュ」という新たな課題に直面しています。すなわち、実態を伴わないにもかかわらず商品やサービスが環境に優しいと訴える虚偽または誤解を招く広告が出回るという問題です。

    高校生たちは個人や企業を行動に駆り立てるための現実的な解決策を提案しました。個人に関しては、自転車利用を増やすためのインセンティブを提案し、自転車の無料レンタルや無料の駐輪場、自転車利用者への電車・バス運賃の割引などが政策提言に加えられました。企業などの組織に関しては、生徒たちは電力に焦点を当て、前年比で電力使用量を削減できた団体に何らかのボーナスを与える政策を提案しました。生徒たちが着目したのは電力でしたが、同じ発想は水やゴミなど、他の資源や排出物にも応用できます。グリーンウォッシュ問題への対抗として、生徒たちは環境に優しい製品やサービスに関する世界基準を導入し、徹底した報告義務と定期的な監査を取り入れることを提案しました。

    高校生たちに語るチリツィ・マルワラ国連大学学長。「より公正で、インクルーシブで、安定し、平和で持続可能な未来を実現する方法を、私たちが模索していくことが重要です。」Photo: UNU / C. Christophersen

    4 みんながより健康で幸せになるための手助け

    保健医療への不十分なアクセスから、次のパンデミックの脅威、そして拡大する「見えざるパンデミック」と言われるメンタルヘルスの問題に至るまで、グローバルヘルスでは、幅広い問題に直面しています。ここでは、高校生たちは2つの分野に注力しました:開発途上国における医療資源やインフラの不足と、メンタルヘルスへの対応方法の革新。

    前者に関しては、開発途上国の医療資源やインフラの強化において先進国がより大きな役割を担う必要性を高校生たちは強調しました。彼らは、開発途上国出身の若者たちが海外で学び、医療保険分野の教育や研修を受ける機会を拡大することや、先進国の軍隊の土木工学専門官などを活用し、医療施設の基礎となるインフラ整備に必要な技術移転を地元の人々に行うことを提案しました。

    メンテルヘルスに関しては、助けを求めることへのスティグマをなくすことに高校生たちは焦点を当てました。専門家の診察を受けやすくするために、メンタルヘルスを定期検診の項目に加えることが提案されました。血圧の測定や採血と同様に、年に1回、メンタルヘルスの検診を受けるという発想です。

    5 平和で安全な世界のための対話に市民も参加

    過去数年の出来事は、少数の国々の行動によって全世界の平和と安全が脅かされ得るということを如実に表しています。これは新しい現象ではなく、何十年も昔から言われてきたことです。その良い例が核兵器禁止条約でしょう。核兵器禁止条約は2017年に圧倒的な支持を得て国連総会で採択されましたが、核保有国5カ国や核を保有する他の国々のいずれも批准していません。

    高校生たちは紛争や核兵器のない世界を望み、少数の国が多数の声を無視する現状に辟易しています。平和と安全保障に関し、市民がメンバーとして積極的に参加し、意見を取り入れてもらうための新たな国際議論の場を設けることを提案しました。生徒たちはまた、若者の留学やその他国際交流プログラムを拡大するための政府予算拡大を提案しました。

    「留学は個人の教育やキャリアに貢献するものと思いがちです」とイベントに参加した生徒の一人が語りました。「しかし、歴史的には留学は外交と深い結びつきがあります。二国間関係の向上のため、若者たちが外国に派遣され、相手国の言語や文化、考え方を学んだのです。」

    平和と安全について議論する高校生たち。Photo: UNU / C. Christophersen

    イベントに参加した高校生たちは、常識に基づくものや、ユース独特の視点から、実用的で興味深い解決策を提案しました。G7の首脳たちが平和で持続可能な未来を目指すなら、彼らの声は無視できません。

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    高校生たちがまとめた政策提言は、東京で4月9日に開催される公開イベントで正式にY7サミットに引き渡されます。Y7サミットは高校生たちの政策提言を取り入れつつ、サミットの成果文書としてコミュニケを発出し、G7各国首脳に提出します。