陸と海を結ぶ日本の復興

News
  • 2011年8月11日     東京

    3月11日に3つの災害が日本を襲ってから5カ月が経過した今、長期的な復興に向けて日本は海から陸地へと目を向け、山と森と海の結びつきを模索すべきである。これが、2011年8月5日金曜日に東京の国連大学本部で開催された「東日本大震災復興支援シンポジウム」の主要メッセージです。

    シンポジウムでは、陸と海との独特な結びつきを受け入れ、人間と自然との関係のバランスを取り戻すことにより、被災したコミュニティを再建する方法が検討されました。

    「コミュニティを再建するために非常に長い道のりを歩まれている東北の方々の強さと美しさを見て、日々頭の下がる思いです」と、本シンポジウムの司会進行を務めた国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニットの、あん・まくどなるど所長は述べました。

    国連大学の武内和彦副学長は、基調演説の中で、いかに里山・里海の慣習が復興の取り組みに大きく貢献しうるかを説明しました。自然と調和のとれた形で復興を進め、森と川と海の結び付きを考慮することによって、安全・安心なコミュニティを再建することができる、と述べました。

    回復力のあるコミュニティの構築

    持続可能な社会を構築するという課題に取り組むためには、社会システムの強化、新技術の利用、地域の回復力の確立、人間と自然の理想的関係の見直しが必要となります。

    「破壊から再生が生まれ、

    荒廃から復興が生まれる」

    講演者は、多くのコミュニティの結び付きが災害によって破壊されたことを指摘しました。既存の社会的つながりや親族・近隣のつながりが往々にして遮断されている中で、仮設住宅措置によりこの社会的「断絶」がさらに悪化する可能性があります。したがって、さまざまな利害関係者がかかわる参加型のコミュニティ関与が、復興プロセスにおいては不可欠です。

    伝統を受け入れ、テクノロジーを利用する

    岩手県の農家で多田自然農場代表取締役舎長の多田克彦氏は、有機農業から学んだ教訓と復興の課題との類似点について言及しました。どちらも「破壊から再生が生まれ、荒廃から復興が生まれる」という理念を実証していると多田氏は言います。

    また、「トラック約500台分の野菜が返品されたのを見てショックを受けました」と述べ、事故のあった福島第一原子力発電所の周辺地域やその周囲の農作物の汚染に関する懸念について言及しました。

    日本は現在「歴史的な岐路」に立っており、「心配していることははっきりと口に出すべきだということに、日本人は初めて気づいたのです」と、多田氏は言います。

    イタリアのジェラート作りの技術を習得した話や、収穫したダイコンで新型のそばを作った話など、興味深い農業の体験談をまじえながら、多田氏は復興への力強い教訓を自然から学ぶことができるということを示しました。

    「私たちは未来にむけて復興しなければならない。社会の豊かさと多様性を維持しつつ、また私たちの過去、私たちの価値観、私たちの伝統を保ちつつ、復興を進めなければならない」

    地元や世界の経験から学んだ教訓

    海洋生物多様性イニシアティブコーディネーター、パトリシオ・ベルナール氏は、チリと日本の津波経験における類似点を探りました。はっきりとはわからない場合もありますが、地球の地殻運動によって日本とチリは密接に結びついています。

    地球物理学者たちはより緊密に連携して、地殻運動のモニタリングのためのより安価な技術の開発・試験を進めるべきだと、ベルナール氏は強調しました。しかし、復興の取り組みにおいては地元の人々を中心に据える必要があります。なぜなら「海岸に住み、直接影響を受けるのは彼らである」からです。

    ベルナール氏は、地元や世界の経験を共有してそこから学ぶこと、また知識を広く伝達することの必要性を強調しました。そして、「生産性の向上が、生物多様性の保護にとってつねに最良であるとは限らない。(中略)私たちは未来にむけて復興しなければならない。社会の豊かさと多様性を維持しつつ、また私たちの過去、私たちの価値観、私たちの伝統を保ちつつ、復興を進めなければならない」と述べました。

    国連大学と復興

    武内副学長によれば、国連大学には日本の復興において果たすべき独自の役割があります。「国際社会の多くの人々は、まだ状況を完全に理解していない」と武内副学長は言います。

    国連大学は、議論において独自の視点を提供し、「再生可能なコミュニティの発展のための促進役」となることができます。国連大学は、世界の人々に情報を伝えるうえで、また貴重な世界の知識を地元のコミュニティに伝達するうえで、「果たすべき非常に重要な役割」を担っています。

    本シンポジウムは、国連大学高等研究所(UNU-IAS)とSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局、および新たに設立されたサステナブル・オーシャンズ・イニシアティブ(SOI)により共同開催されました。詳細はUNU-IASのウェブサイトをご覧ください。