ファーマーズマーケットと共に、トークイベント「美味しく食べて、海を守ろう!」を開催しました

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  • 2018年6月30日     東京


    国連大学と国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニットは6月30日(土)、Farmer’s Market@UNU(ファーマーズマーケット)とのコラボレーションイベント「美味しく食べて、海を守ろう!」を開催しました。

    国連大学の研究を通じて、食や農漁業について学びを深める企画として始めたファーマーズマーケットとのコラボイベントは、今回で2回目です。第1回目の「里山」に続き、2回目の今回は「里海」を主なトピックとしました。

    国連大学サステイナビリティ高等研究所イヴォーン・ユー研究員がスピーカーを務め、人と自然の相互作用により生物多様性を維持し高める「里海」の概念や石川県能登半島の里海事例を説明しながら、持続可能な漁業や海の保全につながる魚介類の食べ方について紹介しました。

    イヴォーン研究員はまず、日本人に馴染みのある寿司を例に説明を始めました。「『江戸前寿司』は本来、コハダやアジなど目の前の海、つまり沿岸の海で獲った地魚がネタの中心でした。その名の通り、目の前の海である江戸湾で取れた魚介が主役の料理だったのです。しかし今では、マグロやサーモンなど、遠洋漁業で漁獲した魚や輸入した魚が江戸前寿司の定番ネタになっています。このように、魚の消費スタイルは、伝統的なものと大きくかけ離れてしまいました」と話しました。

    その上で、イヴォーン研究員は、こうした食習慣を見直すためにも日本の伝統的な「里海」という概念に注目してほしいと述べました。「里海とは、人と海の相互作用によって沿岸部の生物多様性を守り、育む概念のこと。能登半島や瀬戸内海などで地元の漁師さんたちが伝統的に行っている漁法は、魚を取り過ぎないようたくさんの工夫がされています。また、元々日本の沿岸は、世界でも稀に見るほど多種多様な海洋生物が生息する地域。特定の魚ばかりではなく、貝や海藻などもまんべんなく食べる沿岸部の人々の暮らしは、特定の魚種ばかりが減ってしまうのを防ぐ効果もあるのです」と述べ、日本の伝統的な暮らしから海を守るヒントが得られると強調しました。

    さらに、里海の豊かさを消費者の立場から守り支えるための取り組みとして、「魚を購入する際、産地だけでなく、どのように漁獲されたのかという点にも着目してほしい」と語り、持続可能性に配慮した方法で漁獲されたことを示す認証マークが付いた商品を選ぶなど、心がけてほしいと呼びかけました。日本では認証マークはまだ普及の途上ですが、イヴォーン研究員は「こうした制度を活用すれば、美味しく魚介類を食べながら海を守る活動に私たちも貢献できるのです」と訴えました。

    最後に、「この夏に海へ行く人も多いと思います。その際はぜひ海の清掃活動に参加したり、漁港を訪ねてみることをお勧めします。消費者の顔が見えることは、漁師の喜びや、やる気にもつながるはずです」と提案しました。

    参加者からは「同じ魚でも、地域によって食べ方や食べる部位が異なると学びました。ぜひ試したいです」、「『魚介類を食べよう』と言われても実践は難しいですが、食べ方の工夫について具体的に聞け、参考になりました」、「『里海』の概念の発信に貢献していきたい」などの声が寄せられました。