2012年2月22日 東京
2月9日(木)、国連大学本部(渋谷区)にて、東アフリカ共同体(EAC)事務局長であるリチャード・セジベラ博士が公開講演を行いました。国連大学が外務省および早稲田大学と共同で開催したこの講演でセジベラ博士は、社会および経済の発展を促すツールとしての地域統合に焦点を置きました。
セジベラ博士は原稿にない所見として、「われわれ[アフリカ諸国]は立ち上がりつつあるが、いまだ世界経済の辺縁部に置かれている」と述べました。そしてその主要な問題は、アフリカ大陸が54の別々の市場に分かれていること、その各々が小規模すぎて、投資を引きつけたり持続可能な開発を構築したりできないことだと述べました。これらの限界を乗り越えるためには集団行動が必要だと強調し、EACの取り組みを引き合いに出して、統合の哲学によって国々が持続可能な成長の達成に着手できることを示しました。
1900年代はじめにさかのぼる怒涛の歴史を経て、東アフリカ共同体はさまざまな形で具体化し、また姿を消していました。しかし1996年に、協力の再活性化の陣頭指揮をとるべく三国常任委員会と事務局が設けられると、2000年7月までには東アフリカ共同体設立協定が批准されました。現在では4段階の統合が開始されており、まず関税同盟と共同市場を実現したあと、通貨統合、最終的に政治的な連邦化を目指しています。
現在までの統合の影響について、セジベラ博士は同盟国間の敵対心と疑念が消えたことをあげ、「『調和』の精神」――および統合された手続き、法律、規制――によって東アフリカはアフリカにおける優良な投資機会となったと付け加えました。貿易拡大に目を向けると、EAC内の貿易高は2005年から2010年までの間に22億6,400万米ドルから33億3,800万米ドルへと、47%の成長を遂げています。さらに「世界貿易政策レビュー」では、アフリカの最高の統合例としてつねにこの地域が選ばれています。かつて世界有数の不安定な地域であった東アフリカは、今では「立ち上がるアフリカ大陸の先駆者」とみなされていると、セジベラ博士は結論付けました。
将来の課題については、統合の利益を公平に分配する枠組みを見つけることが、今最も重要であるとしました。そして、「利益を分かち合う能力なしに、最も余裕のない国々が統合のコストを積み上げていくのでは、無益である」と警告しています。
講演の後、早稲田大学の片岡教授の司会で、セジベラ博士が質疑応答に加わりました。討議には、EU通貨統合から学ぶ教訓、ケニアにおける国連環境計画のプラスの影響、政治的統合の限界など、幅広い問題が取りあげられました。東アフリカは多くを抱え込みすぎていないか、急ぎすぎていないかという問いに対して、セジベラ博士は「地域統合は大胆な構想ではあるが、それは意図的なものだ」とし、今対処しなければならない問題が目の前にあるのに、50年かけて統合の話し合いをするのでは何の役にも立たないと述べました。
セジベラ博士の講演原稿(英語)は、右にあるサイドバーからダウンロードすることができます。