オンラインイベント「今こそ知りたい、気象と災害」を開催

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  • 2020年10月16日     東京

    国連大学は9月24日(木)、気象庁気象研究所の雲研究者である荒木健太郎氏と、国連大学の沖大幹上級副学長を迎えたオンライントークイベント「今こそ知りたい、気象と災害:空と雲の”気持ち”から考えてみよう」を主催しました。当日は約170名の方にご参加いただき、身近だけど意外と知らない雲や気象について知ることで日々の防災意識につなげていく大切さを、雲研究と水研究の第一線で活躍するお二人にお話しいただきました。

    異常気象と気象災害について

    集中豪雨や洪水などの異常気象が日本でも世界でも頻発している点について、荒木氏は、「異常気象とは過去に経験した現象から大きく外れた現象で、人が一生の間にまれにしか経験しない現象」と説明。沖副学長は、気温と海面水温の上昇などが強い雨をもたらしており、ここ数年は日本でも毎年のように水害が起き、損害保険の支払いも増えていると指摘。さらに、「格差が広がっている社会では、同じような異常気象であっても相対的に脆弱な場所に住む人たちの被害がより深刻になる」と話しました。

    日本の気象災害の特徴

    災害大国と言われる日本について、沖副学長と荒木氏はともに、先進国で台風のような激しい気象現象が起きるのは日本以外ほとんどないとコメント。荒木氏によると、日本は地理的に特殊で、南には暖流がある一方で冬は大陸から寒気が入り込んで日本海側に大雪を降らせ、中緯度にあるために台風やさまざまな災害も起こりやすいとされています。

    災害への備えについて

    沖副学長は、「気象庁などによる予報や警報の精度の向上と、それに基づく水防団や自治体などによる災害対策によって、減災につながっている面がある」と評価しました。予報業務にも携わっていた荒木氏は、地形や梅雨前線が要因になっている広範囲の豪雨はある程度予測可能である一方、急激に雨雲が発達する局地的大雨についての予測の難しさについて触れ、今後アメダスが湿度や気圧も測れるようになれば予測の精度が上がるかもしれないと話しました。

    個人の備えとしては、まず住んでいる地域の安全性を知り、家族構成などを考慮したリスクを想定した上で、気象情報に注意して早めに避難する大事さを両氏ともに指摘。荒木氏は「最近では、特別警報級の現象が見込まれるような時は臨時の記者会見を開くなど、気象庁も情報発信の工夫をしています。その上で、気象の専門家による情報発信だけでなく、一般向けに分かりやすく説明する『サイエンスコミュニケーション』も重要になる」と述べました。さらに、大雨と台風への備えのチェックリストを紹介し、「気象庁が臨時会見をやっている時は、かなり危険な状況が予想されていると覚えておいてください」と強調しました。

    映画「天気の子」について

    2019年に公開された映画「天気の子」の監修を務めた荒木氏は、雲だけでなく天気図の描写や気象庁の記者会見の模様なども、絵コンテに対して実際の写真を使いながら監修し、できるだけ気象学との整合性を図ったと話しました。「エンターテインメント作品の中でサイエンス要素のバランスを取る難しさがあったが、新海監督は気象の知識を豊富にお持ちだったのでそのバランスがうまく出せたのではないか」と振り返りました。

    最後に荒木氏は、「注意が必要な雲も、美しい景色を見せてくれる雲も、日々の中で楽しみながら気象情報を使っていくうちに、いざという時に正しい情報収集や行動ができるようになるといい」と語りました。沖副学長は、自分たちだけではなく、災害の影響をより受けやすい人や地域も含めて世界全体で災害に強くなる必要性を強調。「そのためには、気候変動を遅らせるための緩和策、気候変動の悪影響を最小限に抑える適応策、そして雨や台風の知識を持ちながら余裕を持って行動していくことが大切になる」と締めくくりました。

    当日の録画動画はこちらからご覧いただけます。