2011年9月19日 東京
国連の活動やグローバルな課題について考える国連広報センター(UNIC)主催の「いっしょに国連セミナー」が9月5日に開催されました。18回目の今回は、国連大学副学長武内和彦がゲストスピーカーとして招かれました。武内所長は、新しいサイエンスとしての「サステイナビリティ学」を、気候変動対策や生物多様性の確保といった地球規模課題に活用していくために、世界的に広がりつつある連携の動きを紹介し、国際機関の関係者や学生ら国内外の約30人が活発な議論を交わしました。
サステイナビリティ学は、工学、経済学といった縦割り構造に縛られていては、複雑化する21紀の課題には対応できないとの危機感から生まれた俯瞰的な科学です。武内副学長は講演で、国際社会が直面している緊急の課題を解決し、地球を持続可能なものへと導くためには、再生可能エネルギーの導入といった技術革新、炭素税の導入やライフスタイルの見直しといった社会システム改革に加えて、学術界における意識改革も重要だと強調しました。
その一環として、東京大学や国連大学などが世界の大学と共同で始めた国際会議International Conference on Sustainability Science(ICSS)の取り組みを紹介。アジアで構築が進む気候•生態系変動適応策大学ネットワーク「UN-CECAR」を、アフリカにも広げていく考えを説明しました。
各国のベストプラクティスを世界で共有し、地球規模問題に一丸となって対応していくためには、より広範なグローバル・ネットワークづくりが欠かせません。その具体策として、武内副学長は「SATOYAMAイニシアティブ」を挙げ、日本の伝統的な里地里山のように、人間活動で育まれた二次的自然地域の保全再生と、自然資源の持続可能な利用を目指す取り組みを世界に広げようと訴えました。この考えは、昨年名古屋で開かれた国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)においても広く支持を集めました。
武内副学長はまた、東日本大震災の復興支援にもサステイナビリティ学の考え方が活用できると主張。エネルギー・資源効率を重視しながら人と自然の共生を目指す「コンパクトシティ」や「エコビレッジ」を被災地に導入することのメリットを説明し、会場からも大きな関心が寄せられていました。