英国大使館科学技術部書記官、国連大学で講演

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  • 2011年12月22日     東京

    写真: Stephan Schmidt/UNU

    12月14日(水)、ケビン・ナペット駐日英国大使館科学技術部一等書記官が、ゲスト講師として東京の国連大学本部を訪問しました。「英国における研究事業の構造」と題したナペット氏の講演は、実用化に向け、科学研究の成果の産業セクターへの移転を推進する戦略に焦点をあてて行われました。

    同氏は講演の中で、科学者と企業家が発明や新規性を政治家や一般国民に伝えるうえで直面する問題について考えるよう出席者に呼びかけました。

    在東京英国大使館科学技術部は、英国と日本の研究者やイノベータ間の連携を強化することを目指しているため、ナペット氏は両国の結びつきをとくに強調しました。また、一国単独では開発能力をまかないきれないような方法で新規性に富んだアイデアや技術を生み出すなど、専門技術や知識を多国間で共有することの価値について論じました。

    気候変動や伝染病など、地球規模の課題に単独で取り組めるだけの科学者や資源を有している国は世界中どこにも存在しないため、研究や事業から最大の成果を引き出すには、二国間または多国間での協力体制が必要です。

    英国の国際科学イノベーション・ネットワークは、世界各国に駐在員がおり、駐在国が関連する科学セクターとの連携に誰もが献身的に取り組んでいます。連携とは具体的に、教育施設や設備の共有、新技術の共同開発、国際研究論文の共同発表、新規アイデア開発に関する共同での取り組みなどです。

    ナペット氏は、連携により、各国が互いの国家の優先項目について協力したり、両国がとくに得意とする分野で共同作業をしたり、一方の国では専門知識や技術が不足しているが、他方の国では進んでいる分野を共有したりすることが可能になると指摘しました。連携の成果のひとつが、小型人工衛星と宇宙科学の分野における英国と日本による研究開発です。

    同氏は、さらに視野を広げて、英国は歴史的に基礎的な科学研究にすぐれており、この技能は維持することが重要ではあるものの、基礎研究の成果から技術やビジネスを開発することに関しては、成功事例が少ないと言及しました。このため、技術開発や商業化にすぐれていると定評のある日本のような国と連携することは、両国にとって有益なのです。

    こうした連携が、広範な社会やグローバルなレベルの問題にどのように役立つのかという疑問に答え、社会の問題や進歩に関する新しい解決方法は、一見、市民社会に無関係と思われたイノベーションからもたらされていると、同氏は強調しました。小型人工衛星の気象観測や災害防止への利用は、この一例です。同氏はまた、科学研究、事業開発、技術生産の大半は利他的な目的で行われるものではないが、科学やイノベーションには思いがけない「発見」の瞬間が数多くあり、これが社会にとって予期せぬ利益をもたらすと主張しました。

    講演は、国連大学が国際的な知識ネットワークの中で独自の研究成果を生み出し、連携関係を築いていくという点で、その果たすべき役割について検討する素晴らしい機会となりました。