国連デー2018に寄せる学長メッセージ: 気候変動と紛争への世界の対応

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  • 2018年10月24日

    UN Photo/Eskinder Debebe

    10月24日の国連デーに寄せてデイビッド・マローン国連大学学長・国連事務次長のメッセージです。(英語から翻訳・一部編集)

    2018年の国連は、各国がかつてないほどに互いにつながりあった世界に存在しています。他の国々の挫折・課題の影響を回避することはもはや出来なくなり、逆にすべての国が、お互いのイノベーションや成功から、何らかの利益を得ています。しかし、激しい社会的分裂や不平等の拡大が進む中で、進歩の共有という道のりは、ますます険しくなっているように見えます。こうした難しさや、持続可能な開発を阻む壁を乗り越えられるかは、気候変動と紛争という現代の最も大きな課題の2つに、私たちがどう対応するかにかかっています。

    今月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が国連に提出した報告書は、地球の気温上昇による破滅的な影響を回避するため、かつてなく厳しい文言で、国際社会に迅速で大胆な取り組みを求めています。バングラデシュからカリブ海に至るまで、気候変動は大きな損害と、さらなる悪影響をもたらしています。過去5年間の地球の平均気温が過去最高を記録したほか、北大西洋では2017年のハリケーン・シーズンに過去最大の被害が生じ、同年の災害による全世界の経済的損害額は3,000億ドルを超えました。

    また、栄養状態の改善を図る国連の取り組みは長年にわたって成功を収めていましたが、2015年から2016年にかけ、栄養不良に陥っている人々の数は3,800万人も増えました。この増加は主として、紛争や干ばつ、気候変動関連の災害の結果として生じたものです。

    持続可能な開発のための2030アジェンダの実施と、その17の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて、国連はこうした流れを逆転させようと真っ先に取り組んでいます。いくつかの分野では、SDGsの達成に向けた前進が、必要なペースに達していません。しかし、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、国連が行う活動の焦点を定め直し、再活性化を図る取り組みを進めており、その一環として、2030アジェンダのより効果的な実現に向けて、国連の開発システムの再配置を図る改革イニシアティブを発足させました。

    国連の主たる研究機関である国連大学の学長として、私は、変わりゆく国連のニーズに対応し、SDGsの達成に欠かせない充実したエビデンスを提供する研究に取り組んでいく所存です。

    国連大学の活動は、東京にある本部の寛大なホスト国であり、極めて重要な活動資金を提供してくださっている日本政府の支援なしに成立しません。

    国連創設73周年に当たる今年、日本も広島と長崎への原爆投下という、その歴史上最も暗い2つの出来事から73年目を迎えました。私は8月、グレーレス事務総長に同行し、第73回長崎平和祈念式典に出席しました。国連事務総長として初の長崎訪問と祈念式典出席は、被爆者の方々とお会いし、亡くなられた方々を追悼し、長崎と広島のレジリエンスを讃える貴重な機会となりました。

    残念ながら、各国が兵器の近代化を進める中で、核戦争の影は大きくなり続けています。世界の軍事費は現在、全世界の人道援助に必要な予算の80倍に達しています。そして皮肉なことに、こうした人道援助の必要性は、しばしば紛争が原因で生じているのです。

    平和維持と戦争により引き裂かれた国の安定化支援で知られる組織として、国連は新たな決意をもって、軍縮と核不拡散の問題に対応しています。5月の新たな軍縮アジェンダの発足、8月の事務総長の長崎訪問は、核軍縮と不拡散に関する日本の経験とリーダーシップにスポットを当て、それらを学ぶ機会となりました。

    持続可能な開発は平和なしに実現しません。私は日本による平和維持の取り組みと人道対応、グローバル・ガバナンスにおける役割を心から称賛しています。日本のリーダーシップと国連への多大な貢献は、急速に進化する変革への需要とそれに対応する他の加盟国にとって、末長くモデルとなるでしょう。

    英文のメッセージは、10月24日発行のジャパンタイムズに掲載されています。