2024年5月28日
災害は自然の摂理であり、回避不能で必然的なものだと思われがちですが、地震、台風、火山噴火といった自然現象(自然ハザード)の発生のみでは災害には発展せず、そこに人間の活動が介在して初めて災害が起こります。
以下では、国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)が「『自然な災害』が存在しない5つの理由」を解説します。
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一般的な理解とは異なり、自然ハザードの発生のみでは、災害には発展しません。自然ハザードが私たち人間の活動と脆弱な資源と重なったとき、大惨事へと発展するのです。国連防災機関(UNDRR)によれば、森林伐採や都市化、インフラの不備といった人間の行動が、洪水や地震や嵐などの自然事象の影響を悪化させています。例えば、洪水が発生しやすい地域に建物を建てると、洪水に対する脆弱性が増し、河川の近くに定住しているコミュニティにとっては、対応可能なハザードが壊滅的な被害をもたらす災害となる可能性が出てきます。
災害はすべてのコミュニティに同等に影響を与えるわけではなく、貧困や不平等、周縁化で形成される社会的脆弱性が、自然ハザードに対するコミュニティの強靭性を左右します。社会から疎外された人々は、資源や情報へのアクセスが限られているため、災害の被害を最も強く受けることが多いです。空いている土地や手の届く価格の土地がほかにないなどの理由で、最も恵まれない地域に定住せざるを得ないこともよくあります。例えば、報告書『相互に関連する災害リスク 2021/2022年』によれば、2021年のハイチ地震の後、不十分な住宅事情や広範な貧困によって、人命の損失や壊滅的な被害が悪化しました。同報告書では、災害の影響を形成する社会的脆弱性の役割を重く見てしています。
気候変動による深刻な影響は、自然ハザードと人為災害の境界線をさらに曖昧にしています。気候の変動性、気温の上昇、降水パターンの変化、そして海面上昇は、異常気象発生の頻度を上げ、激甚化させています。たとえば、2021年にニューヨークで記録的な大雨と750億ドル以上の損害をもたらしたハリケーン「アイダ」では、海水温の上昇が激甚化の要因となりました。人為的にもたらされた気候変動の役割を認識することで、政策立案者は気候変動適応策や緩和策の優先順位づけを改善し、災害リスク軽減を推進できるでしょう。
災害への備え、対応、そして復興において、人々の仕事や収入、保険などの社会的保護給付へのアクセスが役立ちます。これらがなければ、都市部のインフォーマルな居住地で暮らす人々のように、脆弱な立場に置かれ、リスクにさらされ続けます。 最近設立された「損失と損害基金」を利用できるようにするなど、災害が発生した際にこうした人々が被る損失や損害を認めることは、彼らがさらされるリスクの度合いを下げることへと繋がります。
結局のところ、人間による影響なしに災害が発生することはありません。個人や社会による意思決定や行動が、こうした災害の規模や影響を極めて大きく左右するのです。これは絶望よりも、希望をもたらしてくれる事実です。私たちの行動や振る舞いを変えることで、ハザードが災害に発展することを防いだり、災害による被害を最小限に抑えたりするといった、プラスの影響を起こすことができます。 そもそもなぜ災害が起きるのかを理解することは、こうした災害の根本原因に対処する戦略を立て、長期的な解決策を見出すことに役立ちます。
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