サー・アダム・ロバーツ教授、 1914年と2014年の軍事的・政治的課題を論じる

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  • 2014年11月17日     東京

    このビデオでは、デイビッド・マローン国連大学学長が、オックスフォード大学国際関係論主任研究員でベリオール・カレッジ(オックスフォード大学)名誉フェローのサー・アダム・ロバーツ教授を迎え、1914年に起こった事件が現代の政治的課題に及ぼす影響ついて論じています。

    サー・アダム・ロバーツ教授はまず、第一次世界大戦のきっかけとなったフェルディナンド大公暗殺(サラエボ事件)が、偶然の出来事であったことに言及しました。この事件と、当時一般大衆に広まっていた社会ダーウィン主義(国家は他国を征服することで自国の優位性を証明しなければならないという思想)など、当時の他の要因すべてが相まって、大戦勃発に至ったと語っています。同教授は、これらの例を用いて「大惨事にはつねに複数の原因がある」ことを説明しています。

    また、第一次世界大戦は極めて皮肉なことに「反テロ戦争」として始まり、英国がその「テロリスト」側にいたことを指摘したうえで、1914年と2014年の出来事を関連付けています。当時の事件と、現在起こっている国際的なテロとの闘いには、一見はっきりとした共通点が見られるものの、100年間で世界が変化したのも事実です。第一次世界大戦終結後には、新たな国際体制が構築され、その政治的影響は極東にまで及びました。とくに中国は、ベルサイユ条約は日本に支配力を与え過ぎたと感じていました。

    この国際体制自体は進化していますが、現在においても重要な類似点と相違点が見られます。そして、過去の失敗を繰り返さないためには、その双方に取り組む必要があります。とくに大きな類似点は、競争的な国家主義(ナショナリズム)の台頭です。その例として、中国と日本との南シナ海領海問題や、依然としてテロが戦争勃発の原因となっている点があげられます。同教授は一方で、1914年と2014年の政治体制における2つの大きな相違点についても強調しています。それは、国際的な戦争の激減と、北大西洋条約機構(NATO)など国際機関が主導する安全保障への集団的な取り組みです。

    サー・ロバーツ教授は最後に、1914年以降、紛争原因の本質が変化していると述べています。国際問題においては、依然として各国の決定が重要な役割を果たしますが、1914年以降の国際紛争はすべて、ポストコロニアリズムという特徴を持っていると言います。維持可能な国境や憲法の枠組みの確立の失敗、アフリカの植民地、北アイルランド紛争、最近ではイスラム国(ISIS)によるクルド人の町コバニ(シリア)への進軍がこれに該当します。