国連大学が暗号資産による環境負荷を示す最新報告書を発表

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  • 2023年10月25日     ハミルトン

    ブロックチェーンやその他の技術革新によって、暗号資産は今や世界の現代金融システムの最先端分野となっています。こうした通貨は、世界で最も有力な通貨を打ち負かす可能性さえあると言われています。

    暗号市場の急騰はゴールドラッシュに匹敵すると考えられていますが、この白熱した市場には負の側面が隠されています。国連大学の科学者らの新たな調査によると、暗号通貨の採掘は気候、水、陸地といった環境に大きな影響を及ぼす可能性があることが判明しました。

    国連大学の科学者たちは、暗号資産のうち最も有名で人気のあるビットコインに焦点を当て、2020年から2021年の間にビットコインをマイニング(採掘)した76カ国の活動を調べ、世界的なビットコイン・マイニングが環境に与える影響を評価しました。結果は衝撃的なものでした。世界中でのビットコイン・マイニングは、甚大な二酸化炭素排出量に加え、水と土地へのフットプリントも大きいことがわかりました。

    「技術革新はしばしば予期せぬ結果を伴いますが、ビットコインも例外ではありません」と、この研究を率いた国連大学水・環境・健康研究所(UNU-INWEH)所長のカーヴェ・マダーニ教授は述べています。

    「今回の調査結果によって暗号資産の利用が抑制されるべきではありません。むしろ、環境を害することなくグローバルな金融システムの効率性を向上させるために、規制や技術的進歩に投資をするよう促すことを望みます」。

    国連大学Earth’s Future誌が発表した研究結果によると、2020年から2021年の間に、世界のビットコイン・マイニングによって173.42テラワット時の電力が消費されました。この結果は、約380億キロの石炭を燃やした場合、あるいは190基の天然ガス火力発電所を稼働させた場合に相当します。

    国連大学の科学者らによれば、ビットコイン・マイニングは化石燃料源に大きく依存しており、石炭がビットコインのエネルギー供給源の45%を占め、天然ガス(21%)がそれに次ぐと報告しています。

    「国によって発電に利用するエネルギー源は異なるため、発電による気候、水および土地への影響も異なります」と、この研究の筆頭著者であり、UNU-INWEHの環境・社会・ガバナンス(EGS)研究フェローであるサナズ・チャマナラ博士は話しています。

    「ビットコイン事業が環境に与える影響に関する各国のランキングは、どの環境フットプリント※を考慮するかによって変わってくるのです」。

    (※品や企業活動が環境に与えている負荷を評価するための指標。)

     

    報告書からの主要データ:

    • 2021年から2022年にかけてビットコインの価格が400%上昇したことが引き金となり、世界中のビットコイン・マイニングによるエネルギー消費量が140%増加した。
    • 2020年から2021年にかけてのビットコイン採掘量の世界トップは中国であり、米国、カザフスタン、ロシア、マレーシア、カナダ、ドイツ、イラン、アイルランド、シンガポールがこれに続く。
    • ビットコイン・マイニングは、2020年から2021年の間に89Mt(メガトン)以上の二酸化炭素を排出した。
    • ビットコイン・マイニングによる温室効果ガスの排出量だけで、人為的な気候温暖化を2度未満に抑えるというパリ協定の目標を超えてしまう可能性がある。
    • 2021年から2022年にかけてビットコインの採掘によって排出された二酸化炭素量を相殺するには、39億本の木を植える必要があり、その面積はオランダ、スイス、デンマークの国土面積の合計、またはアマゾンの熱帯雨林の7%に相当。
    • 水と環境に大きな影響を与えるエネルギー資源である水力発電は、ビットコインの主な再生可能エネルギー源であり、世界のビットコイン・マイニングの総電力需要の16%以上を満たしている。
    • ビットコイン・マイニングに使用される総電力のうち、太陽エネルギー源と風力エネルギー源によって賄われた電力は、それぞれ2%と5%に過ぎない。
    • 2020年から2021年にかけてのビットコイン・マイニングの世界的なウォーターフットプリント(人間活動により消費、汚染および基準値以下に希釈するために使われた淡水の量を評価したもの)は65 km3で、サハラ以南のアフリカ農村部の3億人以上の生活用水使用量を上回る。

     

    報告書のダウンロードはこちらから。

    プレスリリース原文(英語)はこちらから。

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