国連大学の新調査:堤防の老朽化による不公正が明らかに

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  • 2023年9月21日     ハミルトン

    数百万人の米国人が、洪水から身を守るために老朽化した堤防の背後に暮らしています。しかし、彼らの健康、安全、そして資産が同じように堤防決壊のリスクに脅かされているわけではありません。国連大学による新たな報告書「堤防の背後に潜む不公平:米国の事例」は、米国の堤防システムの背後に暮らす、社会的に脆弱で十分なサービスを受けていないコミュニティーが置かれた、懸念すべき顕著な不公平を浮き彫りにしています。

    土手や堤防を築くことは、世界中の人々が自分たちの居住地を洪水から守るために活用してきた伝統的な方法です。米国では、農地や家畜を洪水から守るために、農民や初期の入植者によって多くの堤防が築かれました。人口の増加に伴い、より多くの米国人がこのような堤防の裏に暮らすようになりました。そのため、こうした堤防は図らずも米国の洪水管理システムの基幹となったのです。

    推計によれば、現在、米国民の3分の2が洪水から身を守るために堤防に頼っています。しかし、これらの老朽化した堤防の大部分は、厳格な設計・建築基準がないまま、何年も前に建設されたものです。そのため、平均して築57年になる堤防は耐用年数の終わりに近づきつつあり、基準を大幅に下回るものになっています。これによって何百万人もの米国人が、2023年3月にカリフォルニア州で発生したパハロ堤防の決壊のような、堤防の決壊や大洪水のリスクにさらされているのです。

    2005年、ルイジアナ州で50基の堤防と洪水壁が決壊し、米国で最も大きな被害をもたらした洪水の1つが発生しました。その際、13万4,000世帯が被災し、約1,400人が亡くなりました。米国における洪水による被害額は年間320億ドルで、2050年までに400億ドルに達すると予想されています。海面上昇が、洪水やハリケーンの頻発化や激甚化と相まって米国の不十分な洪水対策を深刻に脅かし、何百万もの人々とその資産を大きな危険にさらしています。

    今回の新たな調査は、米国における堤防の老朽化がもたらす重大な不公正の影響を明らかにしました。堤防の背後に暮らす人々とそうでない人々の社会的、経済的、人口動態的特徴を比較した研究者たちは、米国で歴史的に十分なサービスを受けていない社会的に脆弱なコミュニティーの多くが堤防沿いに集中しているという、憂慮すべき見解を示しました。

    堤防のない地域と比較すると、堤防のある地域ではより多くの人種的・民族的マイノリティグループ、貧困世帯、障がい者、高校を卒業していない人々が暮らしていることを本報告書は明らかにしています。「こうした人々は、洪水や気候変動による被害をより多く受けることになるでしょう。彼らが直面している障壁や制約により、将来の危険や災害に対処する能力が制限されるからです」と、国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)の「強靭で公平なインフラ」研究主任であり、今回の調査を主導したタフツ大学教授のファルシード・ヴァヘディファルドは述べています。

    本報告書では、不利な立場に置かれたコミュニティーや人口集団が、43の州で堤防の背後に偏在していることを明らかにしました。米国全体で見ると、これらのグループの偏在度は41%高くなっています。ヒスパニック系が最も偏在度の高いエスニックグループであり、堤防の背後に暮らす割合が40%高いことが判明しました。次いでネイティブアメリカン(先住民族、19%)、アジア系(18%)、黒人(16%)のコミュニティーとなっています。

    調査結果によると、教育水準の低い人々、貧困層、障がい者のコミュニティーは、米国全体の堤防のある地域においてそれぞれ28%、20%、5%多く在住し、不当に高い割合となっています。地域レベルで格差が最も大きいのは北東部(57%)で、西部(51%)、南東部(38%)、中西部(29%)、南西部(25%)と続いています。米国中西部(61%)や南東部(40%)では黒人の偏在度が高くなっています。米国西部で最も格差が見られるのは、教育水準の低い人々(41%)とヒスパニック系やラテン系のコミュニティー(39%)です。

    国連大学による本報告書は、不公平を最小限に抑えるために、洪水管理と気候変動への適応に関する意思決定において既存の社会経済的・人口動態的格差を早急に考慮しなければならないと警告しています。「本報告書は、世界が本格的な気候行動に取り組む準備を進める中で、既存の洪水管理パラダイムの抜本的な改革を求めています。洪水管理をめぐる意思決定では、自然災害による経済的損害を最小限に抑えることが伝統的に重視されてきました。このような方法での意思決定は、災害の人的要素を残酷なまでに無視するため、不平等と不公正の拡大につながります」とUNU-INWEH所長のカーヴェ・マダーニ教授は語ります。

    今回の調査結果は憂慮すべきものであるが、執筆者らは、インフラ強靱化投資を緊急に必要としている集団や地域を世界中の政府が特定し、そうした集団・地域の優先順位を上げるために、執筆者らが開発したツールセットが役立つことを期待しています。本報告書は、将来の洪水緩和戦略や気候変動適応戦略では、最もリスクにさらされている人々を優先するといった的を絞った対策を講じることを求めています。ヴァヘディファルド氏は次のように述べています。「私たちは、気候変動下での洪水管理やインフラ強靱化に関する今後の意思決定に、環境正義の原則を取り入れなければなりません。私たちは集団によって脆弱性のレベルが異なることを認識し、より多くの助けを必要としている人々に対し、より多くの支援を提供しなければなりません」

    国連大学による今回の新たな報告書は米国に焦点を当てたものではあるが、明かされた課題はグローバルな性質を有すると報告書は強調しています。環境正義に関する研究の多くはグローバル・ノースに焦点を当てていますが、研究者たちの意図は、水管理や気候変動への適応における正義と公平性の不足は、グローバル・ノースや先進諸国においてでさえ大きいことを示すことでした。マダーニ氏は、「本調査は氷山の一角を明らかにしたにすぎませんが、すべての人にとって公正で包摂的な未来を築くための建設的な一歩なのです」と語りました。

    主な調査結果

    • 米国内の全国、地域、州レベルにおいて、歴史的に十分なサービスを受けてこなかった社会的に脆弱なコミュニティーは、堤防で保護された地域に大きく偏在している。
    • 不利な立場にあるコミュニティーは43州で堤防の背後に偏在しており、全国的な格差は41%である。
    • 地域別に見ると、格差が最も大きいのは北東部(57%)で、西部(51%)、南東部(38%)、中西部(29%)、南西部(25%)と続く。
    • 人種・民族構成別に見ると、ヒスパニック系コミュニティーが堤防のある地域に最も偏在しており(40%)、次いでネイティブアメリカン(19%)、アジア系(18%)、黒人(16%)のコミュニティーとなっている。
    • 堤防で保護されたコミュニティーの住民は、堤防で保護されていないコミュニティーの住民に比べて学歴の低さ(28%)、貧困(20%)、障がい(5%)が特に目立つ。
    • 全国的には、高リスクから超高リスクの堤防の背後における黒人とアジア系住民の偏在度が不当に高く、その格差はそれぞれ74%と69%であった。
    • ネイティブアメリカンは、非分類堤防(83%)や非認定堤防(77%)で保護された地域に大きく偏在していることが判明した。
    • 黒人の格差は中西部の州で最も大きい(60%)。
    • 南東部の州でのヒスパニック系コミュニティーの格差は60%である。
    • 西部の州で堤防の背後に暮らす低所得世帯数は、堤防のない地域より41%多い。
    • 北東部で堤防の背後に暮らす障がい者の格差は30%に達する。

    ケンタッキー州(284%)とテネシー州(156%)では、黒人の人口に大きな格差が見られた。ユタ州、コネティカット州、ロードアイランド州、ジョージア州で不利な立場にある人口は、堤防のある区域において2倍多い。バーモント州の場合、この差は6倍になる。

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    プレスリリースの英語版はこちらからご覧ください。

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