国連の水問題専門家:2030年までの水関連SDGs達成、危うい

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  • 2023年3月23日     ニューヨーク

    現在、4人に3人が水の供給が不安定な国に暮らしています。新たに発表された国連大学の『2023年 世界における水の安全保障アセスメント』は、「安全な飲料水、下水設備、衛生(WASH)サービスがないために亡くなる人の数は、水と関連のある災害による死者の数より多い」ことを明らかにしました。

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    国連の水問題専門家が主導して行われた、世界における水の安全保障アセスメントにより、世界人口の過半数が現在水の供給が不安定な国に暮らしていることが分かりました。水の安全保障は開発の基礎となるため、この事実は大きな懸念を呼び起こします。

    2023年国連水会議の2日目に発表されたこの世界規模の評価報告書は、186カ国に住む78億の人々に影響を与える、「水の国際行動の10年」(2018~2028年)の半ばにさしかかった水の安全保障の現状と、持続可能な開発のための2030アジェンダを多次元で比較しています。本報告書はいくつかの極めて憂慮すべき統計データを示し、世界は持続可能な開発目標(SDGs)の目標6「安全な水とトイレをすべての人に」の達成から程遠いと述べています。

    「各国が、水の安全保障なく淡水生態系や人々の暮らしと福祉を支えることは到底できません」と報告書の主執筆者で国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)で水問題に関する上級研究員を務めるシャーロット・マカリスター博士は説明した。「この世界規模の評価は、SDGs目標6の達成までに残された7年間で政策議論が注力すべき、開発における大きな難題を強調しています。」

    国連の水のシンクタンクとも呼ばれるUNU-INWEHが発表したアセスメントによれば、政策立案者たちは主に世界における水不足の緩和に注意を向けています。アセスメントの著者たちの主張では、こうした単純化しすぎた水の安全保障に関する解釈によって、2030年までのSDGs目標6達成が遠のいています。

    世界の水の安全保障の現状に関するより現実に即した理解を提供するために、UNU-INWEHのこの報告書は、水の安全保障を、飲料水、衛生、健康、水質、水の利用可能性、水の価値、水に関するガバナンス、人間の安全、経済の安全、水資源の安定性という10の要素(側面)に関して評価しました。その結果は、世界人口の78%(61億人)が現在、水の供給が不安定な国に暮らしているという憂慮すべきものでした。

    UNU-INWEH所長であるカーヴェ・マダーニ教授は、水の安全保障に関する世界規模の見通しを初めて示したこの報告書の価値は、3月22日から24日にかけてニューヨークで開催された2023年国連水会議への「重要な貢献」だと指摘した。「簡単な作業ではありませんでしたが、この研究により、進捗を加速し、2030アジェンダを実現し、最も脆弱で不安定な立場に置かれた人々が取り残されないようにするための政策と資金供給、行動の方向性が明確になりました。」

    この世界規模の評価報告書の主要な知見には以下が含まれます。

    • すべての地域に水の安全保障レベルが低い国が存在する一方、とりわけ後発開発途上国(LDCs)および小島嶼開発途上国(SIDS)は、さまざまな複合因子により水の安全保障に関して危機的なレベルにある。以下に挙げる合計23カ国(LDCs:16、SIDS:7)における水の供給は危機的な状況である:ソロモン諸島、エリトリア、スーダン、エチオピア、バヌアツ、アフガニスタン、ジブチ、ハイチ、パプアニューギニア、ソマリア、リベリア、セントクリストファー・ネービス、リビア、マダガスカル、パキスタン、南スーダン、ミクロネシア、ニジェール、シエラレオネ、イエメン、チャド、コモロ、スリランカ。
    • 3つの地域にある合計33カ国では水の供給が安定している。スウェーデンはデンマーク、ルクセンブルク、オーストリア、ノルウェー、スイス、フィンランド、アイスランド、アイルランド、フランス、リトアニア、ギリシャ、ドイツ、イギリス、エストニア、イタリア、ラトビア、スペイン、スロバキア、スロベニア、クロアチア、チェコ、ハンガリー、ポルトガルといった他のヨーロッパ諸国とともに、水の安全保障に関して最高水準の国である。アジア太平洋地域で水の供給が安定しているのはニュージーランド、キプロス、オーストラリア、日本、イスラエル、クウェート、マレーシアである。南北アメリカ大陸で水の供給が安定したグループに分類されたのは、カナダとアメリカのみであった。
    • 豊富な天然水資源が利用可能であることは、必ずしも水の安全保障につながらない。豊富な淡水資源を持つアフリカ、アジア太平洋地域、南北アメリカ大陸の多くの国が、水と衛生(WASH)へのアクセスが限られていること、水質が低いこと、そして、洪水や干ばつで大きな経済的損失が生じ得るにもかかわらず水の経済的価値が低いことによって、WASHに起因する死亡率が高い。
    • 安全に管理された飲料水と衛生設備へのアクセスは、世界人口の半数以上にとっていまだに夢物語である。70%以上(55億人近く)は安全な水を享受できず、中でも安全な水へのアフリカのアクセス水準は最も低く、地域人口の15%にとどまる。
    • アフリカは安全なWASHサービスの水準が世界で最も低く、この地域の水の安全保障水準を引き下げている。アフリカの54カ国(LDCs:33、SIDS:6を含む)に住む人の31%近く(4億1,100万人以上)は、基本的な飲料水サービスも利用することができずにいる。安全に管理された飲料水にアクセスできる人は、2億100万人(15%)にすぎない。衛生サービスに関しては、11億人(82%)が安全に管理された衛生サービスにいまだにアクセスすることなく生活している。
    • その結果、世界では安全なWASHサービスを享受できないことによる死者の数が、水に関連する災害による死者の数を上回っている。また、驚くべきことに、この状況は改善していない。2016年の世界保健機関(WHO)による推計と比較して、2019年には164カ国でWASHに起因する死亡率の増加が見られた。
    • SDGs目標6という特化したターゲットがあるにもかかわらず、国家レベルでの包括的かつ正確な水質評価は課題のまま残っている。WHOが家庭における衛生統計を利用して評価した家庭排水処理の水準は、すべての地域で例外はあるものの、アフリカおよびアジア太平洋地域の大部分で「非常に悪い」(30%未満)、南米諸国の大半で「悪い」(50%未満)となっている。
    • 水の利用効率は必ずしも水の安全保障をもたらすわけではない。石油および鉱業活動が支配的な多くの国の経済では水使用単位当たりの経済価値が高い(100米ドル/m3以上)が、それは水のガバナンスやWASH、人間の安全といった、その他の構成要素での水の安全保障の向上には必ずしもつながっていない。
    • 洪水や干ばつのリスクにさらされた国は、その経済の安全を脅かす一層の難題に直面している。地域ごとに見ると、アフリカは洪水と干ばつのリスクが高い国を最も多く抱えているだけでなく、加速する人口増加、都市化、工業化も起きている。インフラと水関連災害の影響をコントロールする能力が貧弱なことが相まって、これらが水の供給をさらに不安定にしている。
    • 淡水資源の経年変動性が高い世界の国では、水の利用可能性の安定性と信頼性が低下しているにもかかわらず、気候変動の影響は水に関するSDGsでは考慮されていない。同時に、さまざまな貯水手段によってこの変動性を緩和するための選択肢は、グローバルな政策議題にほとんどあがらない。
    • 水に関するSDGs達成に向けた進捗を監視することは、政策と資金供給、行動を方向付ける上で欠かせない。評価報告書は、世界における水資源開発の多くの指標に関して手に入るデータが少ない状況を強調した。すべての国の政府が行動してデータ収集を根本的に改善しなければならず、国際機関と国連のデータ管理者はそれを実現する義務と責任を負う。

    抜本的な対策を講じない限り、世界人口の3分の2が2030年以後もずっと水の安定供給を得られない中で生活し続けることを評価報告書は示しています。

    報告書のダウンロードはこちらから

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    詳細情報やインタビューのご要望は、以下までお問い合わせください。

    日本語: 国連大学広報部 中張有紀子 03-5467-1275/080-7078-4193 y.nakahari@unu.edu
    英語: 国連大学水・環境・保健研究所 Dr Zeineb Bouhlel  zeineb.bouhlel@unu.edu