2022年8月17日 ハミルトン
国連大学は国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)の次期所長にイランのカーヴェ・マダーニ教授を任命しました。
マダーニ教授は世界的に著名な環境科学者、教育者そして活動家であり、科学、政策、そして社会の三方面をつなぐ立ち位置で活動してきました。UNU-INWEH所長には2023年2月1日に着任予定です。
UNU-INWEHはカナダのオンタリオ州ハミルトンに拠点を置く研究所であり、カナダ政府とマクマスター大学の後援を受けています。世界12カ国に所在する国連大学の全13研究所の一つであり、人類の生存、開発、福祉など、国連とその人民、そして加盟国が関心を寄せる緊急性の高い地球規模課題の解決に取り組んでいます。UNU-INWEHは既存の科学的知見、最新鋭の研究の追求、新たな政策課題の特定、そして現場に即した拡大縮小可能なソリューション(解決策)の開発を統合することで、緊急性の高い地球規模の水関連問題の解決に貢献しています。
UNU-INWEHは、衛生問題を含む淡水関連の諸問題について国連機関間の調整役を担うUN-Waterにおいて、国連大学を代表しています。また同研究所は、国連の国際10年「持続可能な開発のための水」(2018-2028年)を支援するUN-Waterの活動を率いています。
マダーニ教授は2021年にイェール大学から国連大学に移り、ドイツのドレスデンに拠点を置く国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所(UNU-FLORES)でネクサス研究プログラム長を務めています。また、ニューヨーク市立大学のRemote Sensing Earth System Institute(リモートセンシング地球システム研究所)にて研究教授も務めています。マダーニ教授は、以前はインペリアル・カレッジ・ロンドンの環境政策センターにてテニュア職(終身雇用)に就いていました。
デイビッド・マローン国連大学学長は次のように述べました。「マダーニ教授が、UNU-FLORESで水・廃棄物・土の間のネクサス研究に従事した経験を経て、UNU-INWEHを率いることになり、うれしく思います。水資源研究とグローバル・サウスの意思決定者の実際のニーズとの間のギャップをUNU-INWEHが埋めていくに当たり、学術界と行政の双方におけるマダーニ教授の素晴らしい実績は大きな助けとなるでしょう。」
UNU-INWEH諮問委員会委員長のマイケル・スモール博士も次のように述べました。「マダーニ教授は水問題に関して、国内や国際レベルの双方で、また、学術界と政策界の双方において豊富な経験を有しています。UNU-INWEHを率いるに当たり、そうした経験が活かされることを期待しています。」
マダーニ教授の水管理や環境管理への貢献の域は学術界にとどまりません。過去には、イラン環境庁の副長官や同庁の国際関係・条約センター長として、母国で副大統領補佐級の職に就いていました。教授は公務員としてのキャリアにおいて戦略的に重要なさまざまな役割を担い、気候変動に関するCOP23での交渉を始め、複数の重要な国際会議においてイラン政府の代表団を率いた経験があります。
2017年から2018年の間、マダーニ教授は国連環境総会の副議長を務めました。その後、国連環境管理グループのコンサルタントを務め、グリーンで包摂的かつ権利に基づいた新型コロナ危機からの復興に向けて国連システムが一貫したアプローチを追求する際、その支援において重要な役割を担いました。
マダーニ教授は土木・水工学の理学士号(イラン・タブリーズ大学)、水資源分野の修士号(スウェーデン・ルンド大学)、土木・環境工学の博士号(米国・カリフォルニア大学デービス校)を取得しています。
マダーニ教授は、水、エネルギー、食料、気候、環境に関わる複雑な問題に関して政策やガバナンスに有用な情報を得るための数学的・経済的・システム分析モデルの開発と応用における第一人者です。従来型の水資源管理モデルにゲーム理論やさまざまな決定分析メソッドを統合することへの重要な貢献で知られています。
マダーニ教授は200件以上もの著書や共著があり、アメリカ地球物理学連合やアメリカ土木学会環境水資源研究所にフェローとして所属しています。研究による貢献や教育におけるイノベーション、そしてアウトリーチや人道支援活動でたびたび評価され、数々の受賞経験があります。
カーヴェ・マダーニ教授は、2016年6月からUNU-INWEH所長を務めてきたヴラディミール・スマッティン博士の後任となります。
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